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セフレ・アイドル  作者: 055ジャッシー
第三章「秘密」
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突然の呼び出し

 僕がアイドルの相模絵美菜こと、セフレの鮎川桂と一夜を過ごしてから二週間ほどが経った。だがその間、彼女からの連絡は一切無い。


 それもそうだ……今、彼女が所属するアイドルグループ「カントリバース」は全国ドームツアーの真っ最中。昨日まで彼女たちは福岡と大阪でライブを行っていたのだ。確か来週は名古屋だったはず……当分こっちには帰って来ないだろう。

 こうして彼女たちの情報に触れていると、本当に凄い人たちなんだなって実感する。そんな凄いメンバーのひとりと僕みたいな一般人が知り合えただけでも奇跡的なのに、まさかの肉体関係まで……。


 いかんいかん! 彼女を相模絵美菜だと考えたら、余りの身分差に恐怖心しか出て来ない! 彼女は謎の女性・桂だ……そう考えないとメンタル持たないぞ!


 今は非常勤講師の仕事中……僕は二年生の授業を終え、ほっとした表情で職員室に戻って来た。ところが職員室に残っている先生方は皆忙しそうにしている。

 と言うのも先日、一学期の中間試験が行われた。今、先生方は授業の合間を縫ってテストの採点をしているのだ。だがとてもじゃないが勤務時間中には終わらないらしく、自宅に持ち帰って採点している先生も大勢いる。


 ――うわぁ、大変だなぁ。


 僕はそんな先生方を横目に、申し訳ないなぁと思いつつ今日の仕事を終えて帰り支度をしていた。この日の僕は午前中で授業が終わりなのだ。しかも……

 非常勤講師でも担当科目の試験があれば、当然の事ながら採点をしなければならない。だが僕が担当する科目は試験が行われなかったのだ。


 実は僕が担当している科目は「美術」……そう、僕は美術の非常勤講師なのだ。なのでコマ数が少なく、正直言って講師の給料だけではやっていけない。

 だが平日昼間に自由時間が取れるというメリットもある。まぁ基本的にはバイトを入れているのだが。でもそんな環境だったので桂と知り合うことが出来た……と言っても過言ではないだろう。


 だが、この日は違っていた。


「あっ、鶴見先生!」


 僕が帰り支度を済ませた所に、地理歴史科担当の先生が声を掛けてきた。三十代半ばの男性教師だ。


「鶴見先生! 今日はこの後、予定がありますか?」

「あっ、いえ……特にありませんが」


 今まではファミレスのバイトが入っていたのだが、桂と会う機会が多くなったので先日辞めてしまっていた。しかも桂は今日、大阪か名古屋に居る筈……なのでこの後の予定は無い。まぁせいぜい家に帰って新作のゲームでもする位だな。


「良かったぁ! じゃ、ちょっと頼まれてくれるかな?」


 ――あ、多分残業だろう……ゲームはお預けだな。



 ※※※※※※※



 厄介なことを頼まれてしまった。


 実はあの先生、地理歴史科の担当だが特に世界史が専門の先生だ。そして中間試験の採点を手伝ってほしいとお願いされたのだ。

 実を言うと僕は地理歴史科でも教員免許を持っている。元々美術史に興味を持っていたのがその理由だ。ただ現在は地理歴史の教員に空きが無く、この学校では美術の講師だけの契約となっている。

 ぶっちゃけ担当じゃないんだから帰らせてくれ! と言いたいところだが、僕はこの後バイトも無いしお金も無いし……今回はむしろ「渡りに船」だと思い二つ返事で引き受けた。



 ※※※※※※※



 ――おいおい、ここは「ヘレニズム」だろ! 何書いてんだよ!?


 採点は意外と時間が掛かる。これがマークシートだったらもっと効率的に出来ただろう。まぁいい、今日は予定も無いし……それに常勤教師は給特法(※)の関係で残業代が支払われないが、非常勤講師には残業代が出る。世界史の先生には大変申し訳無いが、ここはゆっくり……いやじっくり丁寧に採点しよう。


 〝ブゥウウン!〟


 そんな時、僕のスマホにニャインのメッセージが来た。誰からだろう? 僕は採点の手を止めてメッセージを確認すると


 ――げっ!?


 何と桂からだった! しかも帰って来たから今夜会いたいと……嘘だろ? 彼女は現在ツアー中、こっちには居ないとばかり思っていたのだが。

 こうしちゃいられない! 僕は桂に返信すると急ピッチで採点を続けた……まだまだあるなぁ。

 実は前回桂と会った時に「この曜日は大丈夫」と伝えていたのだが、まさかそれが裏目に出るとは。


「お疲れさん! お陰で助かったよ」


 だいぶ遅くなったが何とか採点を終わらせた。でも桂が指定した時間には間に合いそうもない。僕は桂に「遅れる」とメッセージを送った。

(※)公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法

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