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セフレ・アイドル  作者: 055ジャッシー
第三章「秘密」
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セックス依存症

 

「どうして君は……セフレやってるの?」


 僕はkこと相模絵美菜に、敢えて聞きにくい事を聞いてみた。何故ならこのルックスこのスタイル、そして二十歳という年齢……セフレなんて作らなくても、出会いなんていくらでもあるだろうと思ったからだ。

 そもそもアイドルは恋愛禁止だ。陰で色々恋愛とかやっていたにしても、セフレで見ず知らずの相手と関係を結ぶなんて流石にリスクが高すぎる。とても用心深いと思っていた彼女が、何故そんなリスクを冒してまで危ない橋を渡ろうとするのか僕は不思議で仕方がなかったのだ。


「あぁ……それ?」


 相模絵美菜は少し遠い目をしながらボソッと答えた。



「私ね……セックス依存症なの」



 セックス依存症? 確かに相模……いやkは言葉が悪いが「淫乱」と言ってもおかしくない程セックス好きの女性だ。しかし……


「初体験は十三歳、中学一年の時だったわ」


 ――!?


「当時はそんなつもりじゃなかったんだけどね! 相手の男も嫌いだったし……でもその時に頭のネジがブッ飛んじゃったのかしら? そこからセックスだけは好きになっちゃって……中学卒業してから家出して、毎晩のようにナンパしてきた男とやりまくっていたわ!」


 衝撃的な告白だ! 彼女のファンが聞いたら卒倒するぞ!


「私ね、本当はAV女優になりたかったの! 大好きなセックスをしてお金が貰えるなんて最高じゃない? で、ある日街を歩いてたらスカウトされて『あっ、これはAVだ』と勝手に思ってホイホイついていったら……」

「……?」

「それが今の事務所……こうして私はアイドルになりましたとさ、チャンチャン」


 それ、逆のパターンはよく聞く噂話だけど……残念そうに言うなよ。


「アイドルって基本、恋愛禁止って事になってるじゃん!?」


 何だよ、その「表向きは……」みたいな言い方!


「だからね、アイドル始めてから性欲の捌け口が無くて困ってたの! ナンパされて身バレしちゃったらアウトだし……そんな時にセフレという存在を知ったの」

「そ……そうなんだ」


「私の事を()()()()()()()()巡り会えるかなって期待したんだけどねー」

「……何かごめんなさい」


「でもね……」

「?」

「アイドルやってて歌やダンスの練習やステージで汗を流してると、セックスや()()()()を忘れてしまうの! だから私はセックス以上にアイドルが好き!」


 そう語る相模絵美菜の目はキラキラ輝いて見えた。


「あっでも握手会は嫌い! 正直キモい奴も大勢来るじゃん! もぅストレスが溜まって溜まって……だからこういう日は()()()()()しょうがないのよ!」


 僕の中で「絶対に口外してはいけない事」が増えてしまった。


「と、いう訳で……二回戦、しましょ!」


 心の中にある「偶像(アイドル)」が少しだけ崩壊した僕は、k……いや、相模絵美菜を今度は「正面から」抱きしめた。



 ※※※※※※※



「うーん、これ美味しい!」


 二回戦……が終わり、相模絵美菜は僕が買ってきたスフレチーズケーキを美味しそうに食べていた。


「ねっ美味しいでしょ!? まっくん!」

「う、うん」


 彼女が喜ぶのも無理はない。僕が買って来たチーズケーキは相模絵美菜がSNSで頻繁に画像をアップしている店……つまり彼女のお気に入りだ。


「あのさぁ……さっきから気になってたんだけど」

「え、なぁに?」

「僕の名前、『まっきち』じゃなくて『すえきち』だから」


「……えっ!?」


 そう、彼女は僕の名前をずっと「まっきち」と勘違いし「まっくん」と呼んでいたが、正しくは末吉(すえきち)である。

 間違いを正してやるかそのままスルーしておくか迷ったが、もし今後も関係を続けていくなら指摘しておこう。


「えぇっ、ごごっごめんなさい! 握手会の時、スタッフが漢字で書いて来たからてっきり『まっきち』かと……うわぁ、恥ずかしい!」

「い、いや……いいけど」


 つい数時間前、もっと恥ずかしい事をしていた人の発言ではないな。


「でっでもさぁ! やっぱ『すえくん』とかって言い辛いじゃん! だから『まっくん』でいいよね!?」

「えぇーっ!?」


 結局僕は「まっくん」と呼ばれる事になった。セックス以外は距離を置こうと決めていたこの関係だったが、いつの間にか呼び名や言葉遣いが変化していた。


「あのさぁ、じゃあ僕からも提案なんだけど」

「はーぃまっくん! どうぞー!」

「もう君の正体もわかった事だし……僕も今度から『kさん』じゃなくて『びーなす』って呼んでいいかな?」


 するとさっきまで上機嫌だった相模絵美菜が突然、真顔になった。


「ごめん……それは絶対にダメ」

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