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セフレ・アイドル  作者: 055ジャッシー
第三章「秘密」
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そんな理由で……

「で……まっくんに聞きたいことが山ほどあるんだけど!」


 セフレのkこと、アイドルの相模絵美菜は少し怒った感じで僕に詰め寄った。


「えっ、何?」

「あのさぁキミ、確かマッチングアプリのプロフィールで好きな芸能人の欄に『特になし』と書いてなかったっけ?」


 そういえば……書いていたな。


「今日の握手会、()()()()()()()()のイベントだったよね……どういう事か説明してもらえる?」


 そう僕は……実はカントリバースのファンクラブに入会している。だがマッチングアプリで初めての女性と知り合うのに、いい歳して「カンリバの大ファン」何て書いたら絶対に相手が見つからないと考えた。

 他に女優さんの名前とか思いつかなかったし、それならば……とプロフィール欄には「特になし」と嘘を書き込んでおいたのだ。


「私、芸能界に興味ない人なら好都合と思ってキミのプロフィールに『いいね』したのに……まさか会員だったとはね! もしかして……それが狙い?」

「いっ、いえ違います!」


 アイドル本人がアプローチして来るなんて全くの想定外だ。世界一の占い師でも当てるのは不可能だろう。


 ――でもまさか「そんな理由」で知り合ってしまうとは……。


「じゃあ次の質問! どうして握手会に来たの? あの格好……私とkが同一人物だと既に気付いてたって事だよね!? いつ? どうしてわかったの?」


 やはり気が付いていたか! 握手会で相模絵美菜が僕の事に気付いてもらえるよう、敢えてkと初対面の時に着ていた格好にしたのだ。


「そ、それは……首筋のホクロが……駅前のポスターに……」


 僕の言葉を聞いた瞬間、相模絵美菜は「しまった!」という顔をしながら慌てて首筋を手で押さえた。


「えっそれって、もしかしてドームツアーの?」

「うん」

「あっちゃー! うっかりしてたわ……あれ、撮影が急だったからいつもと違うメイクさんだったのよねー!」

「?」


 彼女の話ではあのポスター、荒川夢乃が脱退した事で急遽撮り直した物。通常は撮影の際に専属メイクさんがいて、首筋のホクロは何も言わなくてもその方が消してくれるのだそう。

 だがこの時は慌ててスケジュールを組んだので専属メイクが間に合わず、彼女のホクロの事を知らない別のメイクさんが対応したらしい。


「あー、後で事務所に言って(ポスターの)ホクロ消してもらおうっと」

「嫌なの?」

「うん、ハッキリ言って……ていうか芸能人ってプライベートの時に変装するって思ってるよね? でもね! 私の場合は(こっち)が本物、アイドルの相模絵美菜が変装した姿なんだよワトソン君!」


 芸能人ってプライバシーを確保するのに大変なんだな。そういえば、彼女がアイドルだとわかった時点でいくつか腑に落ちた部分がある。

 先ずはラブホテルに時間差でチェックインした事、これは不倫ではなく週刊誌対策で間違いない。帰りの「時間差で退出」もまた然り……もし一緒に入って行く所を写真にでも撮られたら、今頃大変な事になっていただろう。

 毎回違うホテルを指定したのも同じ理由に違いない。同じホテルに通っていたらすぐにタレコミが入り週刊誌のカメラマンに張り込みされるだろう。免許証といい性病チェックといい……この女性(ひと)はかなり用心深い。


「まだまだ私から聞きたい事あるけどさ……まぁ私たちセフレだし、そこまで深入りしない方が良いと思うんだよね」


 そうだよな……正体がわかった所で僕たちは「セフレ」だ。アイドルだってまだまだ謎の多い商売。これ以上知ろうとするのは野暮だろう。だが……


「でもさ! せっかくだから、まっくんも私に聞いてみたいこととかある? 答えられる範囲で答えるよ!」


 こんな用心深い相模絵美菜だからこそ、敢えて聞いてみたいことがある。


「あ、あのさ!」

「ん? 何?」


 防御力ゼロの顔をした相模絵美菜に一瞬戸惑ったが、勇気を持って聞いてみた。


「どうして君は……セフレやってるの?」


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