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セフレ・アイドル  作者: 055ジャッシー
第二章「疑惑」
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既視感

 この日……僕は再びkと唇を重ねた。


「あっ……ああん! ダメッ!」


 出会って四回目、kと交わるのは五回目になる。ここまで来ると彼女の好きな部位、いわゆる性感帯が少しずつわかってきた。

 彼女が好きなのは首筋への愛撫だ。ちょうどこの部分に「ホクロ」があり、ここを集中的に攻めると彼女はとても興奮する。


「はぁ……もうっ、そこ攻め過ぎよ!」


 kに怒られた……だが満更でもない顔だ。セックスにも駆け引きがある。きっと彼女はマウントを取られたくなかったのだろう。

 kは両手で僕の顔を挟んだ。僕はkの首筋から強制的に剥がされ、視界には彼女の顔しか見えない状態になった。性感帯を攻められ弱体化したkの顔は、美人というより可愛らしい少女の顔にも見えた。


 でも……あれ?


 ――この顔、どこかで見覚えが。既視感(デジャヴ)? ま、気のせいか。



 ※※※※※※※



「じゃあ、またね」

「あぁ……」


 kは僕に手を振ると、周囲を気にしながらホテルを後にした。僕も軽く手を振ってから、待合室のソファーに腰掛けた。


 理由は未だにわからないが、kとは時間差でホテルを出るようにしている。次に仕事を控えたkが先に出て、彼女が僕のスマホに送った合図でホテルを出るというパターン。会うのが四回目ともなると、手際よく行動に移すことが出来る。


 〝ピロンッ〟


 kからメッセージが来た。僕も周囲を気にしながらホテルを後にする。もしかしたらkは既婚者か彼氏持ちで、僕と不倫または浮気をしているのかもしれない。

 まぁそんな事はどうでもいい。夫? それとも彼氏? 最初kと会ってた頃は男の影がとても気になっていたのだが……

 よく考えてみたら僕とkはセフレ、つまりセックス以外は何も干渉しない間柄なのだ! そう割り切った考えを持った瞬間、今まで悶々としていた何かがスッと消えた気がする。

 人間って興味を持たなくなると、胸の奥に(つか)えていたものが取れる事を知った。いや、正確には痞えていた事を忘れてしまうのだろう。


 僕は駅に向かった。まだ終電まで時間はあるが、寄り道せず今夜は真っ直ぐ帰ろうと心に決めていた。明日は仕事もあるし、何よりkとの楽しい時間を飲んで忘れたくない! 冷蔵庫に何があったかな……足りない物は家の近くのコンビニへ寄って買おう。


 駅の入り口付近に大きなポスターが貼ってある。僕が好きなアイドルグループ・カントリバースの等身大ポスターだ。


 ――よく間に合ったなぁ、ていうか……やるんだ。


 ポスターは彼女たちのドームツアーの告知だ。告知とは言ってもチケットはほぼ売り切れ(sold out)、国民的アイドルと呼ばれるだけの事はある。

 全てが順調だった彼女たちではあったが、元リーダー・荒川夢乃の「枕営業」そして「自殺未遂」という前代未聞のスキャンダルによって一時はツアーの開催が危ぶまれた。

 だが事務所の迅速な対応で謝罪、そして荒川夢乃は解雇された。時同じくして枕営業の当事者であるIT企業の社長がファンによって特定された。

 若きイケメンカリスマ社長で有名だったこともありネットは大炎上。怒りの矛先がその男に向けられたため、残されたメンバーはイメージダウンすることなく人気を保つことが出来た……まぁそれでも、いくつかのCMは差し替えられたが。


 この等身大ポスターも、当初は荒川夢乃が写っていたが今はどこにも見当たらない。どうやら騒動後に彼女を除いたメンバーで撮り直しをしたようだ。

 最初に撮られたポスター同様、写真の彼女たちはセクシーな姿をしている。最年少のロリ系キャラ、利根香澄もとても大人っぽい格好だ。

 あれ? 僕の推し、渡良瀬碧(ぐりん)の立ち位置が変わったな……だが新しいポスターの彼女も素敵だ! セフレのkも素敵だが、推しは別の視点で見ている。

 隣は……相模絵美菜(びーなす)か。清楚系キャラだが、このポスターではとてもセクシーに映っている。彼女は推しではないが、よく見ると美し……あれ?



 ――え!?



 僕はポスターに映った相模絵美菜を見て驚愕した!


 おかしいな、今まで彼女にこんなの……付いてたっけ?


 びーなすこと相模恵美奈の首筋にホクロが見えた。しかもそれが……



 ……kと全く同じ位置だったのだ!



 これは偶然だよな? いや、そうあって欲しい!



 ※※※※※※※



 家に帰った僕は、晩酌もせず独りで悶々としていた。カントリバースの「推しではない」メンバー・相模絵美菜のことが気になって仕方なく、ネットで彼女の画像を探しまくっていた。

 人間って興味が無い相手に対して、胸の奥に(つか)えるものなど何も存在しない筈なのだが……


 今の僕は、胸の奥にとても大きな「何か」が痞えて苦悶している。

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