恋人はいらない
「はぁ……はぁ……」
僕は今……
正体がバレたら日本中が大騒ぎになる相手と……
「はぁ……あぅっ!」
――セックスをしている。
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「セフレ・アイドル」
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僕の名前は「鶴見 末吉」二十五歳。市内の公立高校で非常勤講師をしている。現役合格した大学は留年することなく卒業、教員免許も難なく取得した。
ここまでは全てが順風満帆、人生イージーモードだと思っていた矢先……肝心の教員採用試験に落ちてしまった。
大学卒業後即無職、就職浪人という最悪の社会人生活のスタートを切った。だが幸いにも「非常勤講師」の募集を目にし、藁にも縋る思いで応募し採用された。
晴れて念願の教師となったがそこは非常勤、フルタイムで働ける訳ではないので当然給料は安い。空いた時間、僕は塾の講師や居酒屋などでアルバイトをしながら何とか生活している。
こんな僕にも恋人がいた。彼女とは学生時代に出会い意気投合、そのままごく自然な流れで付き合っていた。
彼女は僕よりひとつ年上で、卒業と同時に正規教員となった。全てが上手く進んでいる彼女に対し僕は負い目を感じるようになったが、それでもこんな僕を気遣い何かと優しく接してくれた……理想の彼女だ。
生活は不安定であったが、お互い結婚を意識するようになった。しまいには彼女の実家へ挨拶に伺い、彼女の両親も前向きに対応してくれた……だが、
――今から二年ほど前、僕たちは別れることになった。
修復不可能な喧嘩をしたという訳ではない。ただ、一緒に居られなくなるような関係になってしまったことは間違いない。
僕は今でも彼女のことが好きだ、もちろん後悔はある……いや後悔だらけだ。なので僕は今でも新しい恋人を作っていない。合コンの誘いも頑なに拒んでいる。
とは言ってもそれは精神的な話、困ったことに性欲だけはプラトニックを認めてくれない。人間も後世に遺伝子を残すという宿命を背負った生き物である証拠だ。
もちろん禁欲生活で済ませることが出来ればそれに越したことはない。世の中にはアダルトビデオや十八禁ゲームなど、自慰行為で性的欲求を満たせる物もある。
だがそれだけで満足出来ないのが欲求というものだ。グルメやギャンブル、買い物などが良い例だろう。
おまけに僕が働いている学校には女子高生という難敵がいる。大抵の生徒は真面目に授業を受けているので問題ないが、中には性に目覚めた十代……を見た目で表現したような生徒も存在する。
こういう生徒は何かにつけて思わせぶりな態度を取ったり、時にはあからさまに誘ってくる。だがそんな誘惑、いわゆるハニートラップに引っ掛かったらそこで人生終了だ。
僕には教員採用試験に合格して正規雇用の教師になるという夢がある……間違いなど絶対あってはならない。
このような僕にとって、手っ取り早く欲求を満たすのは風俗だろう。だが日々の生活もままならない今の僕にとって、風俗への出費は正直痛手である。
しかもそのような懐事情で風俗に赴き、中途半端な結果で終わるような酷い店に当たってしまったら悔やんでも悔やみきれない。
ならばいっそのことソープランド? いやいや、日本で売春は犯罪だ! 非正規教員という立場上、もし何かあったら契約を切られるのは目に見えている。
そんなある日、大学時代の友人から「妙なモノ」を教えてもらった。