断罪イベント365 ― 第3回「王子が4股してた」
※「断罪イベント365」企画、第3回です。
今日は王子の口から飛び出した断罪宣言が、思わぬ方向に転がります……。
豪奢な大広間。断罪イベント恒例の壇上に立った王子は、
胸を張って宣言した。
「本日この場をもって、彼女を断罪する!」
出た、定型句。
会場がざわつく――その時。
「ちょっと待って殿下!」
観衆が振り返ると、別の令嬢がドレス姿で駆け込んできた。
顔を真っ赤にして叫ぶ。
「その台詞、昨日はわたくしに言ったはずです!」
「な、何だと……!?」
王子が慌てる間もなく、さらに二人目の声。
「殿下! 一昨日は私と婚約の誓いを交わしましたよね!?」
三人目も負けじとドレスをひるがえし、封筒を高々と掲げる。
「この手紙は“わたくしだけへの詩”と
殿下がお書きになったものです!」
会場騒然。観衆は口々に囁きあう。
「詩人かよ」
「いや、ただの量産型だな」
「4股!? 殿下、株主か何か!?」
ツッコミが止まらない。
追い詰められた王子は必死に弁解する。
「ま、待て! これはその……交流の一環で!」
「外交努力だ!」
「練習試合だ!」
だが四人目の令嬢が、静かに立ち上がった瞬間、
空気が凍りついた。
彼女こそ、本来“悪役”とされていた婚約者である。
扇をゆるやかに閉じ、氷のような笑みを浮かべる。
「殿下。4股なさってまで、わたくしを断罪なさるつもり?」
観衆が一斉にざわめき、王子は額の汗をぬぐう。
「ち、違う! これは……誤解だ!」
令嬢は冷ややかに言い放った。
「誤解ではなく、誤数でしょう」
場内、大爆笑。
次々と突きつけられる証拠――指輪、手紙、ペンダント。
観衆は口々に合いの手を入れる。
「“唯一の証”が4つ!?」
「世界にひとつ、が量産されてるな」
「殿下の愛は大量出荷!」
最後に婚約者がゆっくりと歩み寄り、
王子を真っ直ぐに見据えた。
「殿下。浮気の罪状は、まずご自身にございますのでは?」
拍手と笑いの嵐。
王子のプライドは、雨漏りの屋根よりも早く崩れ落ちた。
ざまぁ!
断罪イベント365 勝手に企画しました。
断罪イベントだけで365編の短編が書けるか実験中。