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ギルドの恋愛相談所 〜レベル400の勇者様がご来店しました〜

作者: ゆうドック

 ここはギルドにある勇者達のための恋愛相談所。


 私は恋愛相談所の相談人、シェリカと申します。本当に毎日大変なんですが、皆さんにとても満足してもらえるので頑張ってます!

 世界を冒険する勇者達にも、色恋は大切ですからね。

 そして今日もまた、恋愛相談所には一人のかわいそうな勇者様が訪問してきました。


***


 「大丈夫ですか勇者様?そんなに暗い顔されて……」


 とてもしょんぼりとした勇者様が膝を抱えて椅子に座っています。いったい何があったのでしょう?

 「フラれたんです。リリアには、他に男がいたみたいで……」

 「お相手はリリア様と言うんですか。それは残念でしたね。ですが安心して下さい!この恋愛相談所が貴方にピッタリなお相手を紹介します!」


 勇者様はまだフラれた事を引きずっているのでしょう。か細い返事をしただけでまた俯いてしまいました。何かとても気まずいです。


 「えーと、勇者様。ではこちらの石板に手を当てて下さい。そうすると貴方の情報がこの石板に登録されますので」

 はぁー、と勇者様は右手でその石板に触れる。すると石板がほのかに発光して、数秒経つと光は徐々に薄くなり消滅した。


 「フリード様ですね!かしこまりました。?!勇者様レベル400って凄いですね!私、高レベルの勇者様初めて見ました」

 「あー、そこら辺にいるドラゴンを10年間倒してきましたからね。それなりには」

 

 勇者フリード様のステータスは本当に凄いです。ドラゴンスレイヤーの称号まで付いてるんですよ!相当な財産があるに違いありません。

 

 「ちなみにどのくらいの貯蓄がございますか?」

 「えーと、どのくらいだろう?まぁ、今晩の夕食を食べるくらいならありますかね」


 「えっ?…………それは財布の中身ですよね!全財産はどのくらいですか」

 「いえ、全財産ですが」

 「…………」


 私は何か大きな勘違いをしていたようです。全財産が今晩の夕食代だけって、どんだけお金の使い方が荒い方なのでしょう。それはリリア様と言う方が違う男の人に乗り換えてしまうのは仕方がありません。


 「失礼かもしれないんですけど、今までどのようなお金の使い方をしてこられたのですか?」

 「うーん、最近だと街の修繕費ですかね」

 「修繕費ですか?」

 「はい、この前ラズエルの街がドラゴンに襲われてて、討伐したんですが街の半分が駄目になってしまったんです。なので私がその修繕費を払いました」


 「えっ?討伐したのに、勇者様がその街の修繕費を払われたのですか!本当にひどい街ですね」

 「いえ、ドラゴンが壊したのは噴水だけで、ほとんど私が壊したんです。剣を一回振っただけなんですけど、街が半分吹き飛んじゃって、そのせいで街の王様にこっぴどく怒られました」


 なんと言う人なんでしょう、この勇者様は。剣を一回振っただけで街を半分吹き飛ばすなんて、さすがレベル400。


 「まぁ……災難でしたね」

 「えー、本当ですよ。そのせいでまた借金が増えてしまいました」

 「借金ですか……」

 もうこの勇者様には呆れるしかありません。ですがこの世の中には、そんな駄目男が好きと言う女性が沢山いらっしゃるので、一応ご紹介しましょう。


 「えーと、とりあえずフリード様の事情は把握致しましたので、貴方にお似合いの女性を2名ご紹介します」


 ちなみに石板が登録者の情報から勝手におすすめのお相手をピックアップしてくれます。本当に便利な世の中になりました。


 「お一人目はクレア様です。まだまだお若く、今年で20歳になられました。この街1番の仕事ができる女性で、自分より身長が低い男性が好みだそうです!ちなみにクレア様は身長175センチですよ」

 勇者は顔をムッと膨らませる。

 「次お願いします」


 「はい、お二人目はロイナ様です。今年で30歳の魔法使いです。勇者様には届きませんがレベルは250のベテランです!いろんな意味で体力のある男性が好みだそうですよ」

 「ロイナさんにします」

 「……そんなに急がれなくても大丈夫ですよ。決められるのはお二人にお会いしてからでも」

 「ロイナさんだけで良いです」

 「……そうですか。わかりました」


 フリード様がクレア様を断った理由は身長なんでしょうか?男性の人って結構身長を気にされる方多いんですよね。そんなに気にされますかね?少なくとも中身が1番大事だと私は思いますが。

 確かにフリード様の身長は165センチとあるので、一般の男性に比べたら低い方なんでしょう。まぁ、そこはあまり突っ込まないでおきます。

 

 「では明日、ギルドの上級席をご予約致しますので、そこでロイナ様とお見合いをしてもらいます。よろしいでしょうか?」

 「はい」

 「それでは明日、ギルドの恋愛相談所にお昼頃お越し下さい」


 相談が終わると勇者はゆっくりと席を立ち上がり、ギルドの酒場へと夕食を食べに向かうのだった。


***


 「では後はお二人でごゆっくりお過ごし下さい」

 相談人のシェリカはそう言うと、そそくさと去って行ってしまった。フリードは目の前の女性に向き直る。


 それにしても、綺麗な人だなー。でも、どことなく誰かに似ているような気がする。まぁ取り敢えず自己紹介をしないと。


 「あっ僕の名前はフリード・ライゼル、よろしく」

 「私はロイナ・フランツェ。ねぇー、貴方ドラゴンスレイヤーでしょ」

 「えっ、知ってるの!」

 「もちろんよ。だって私、リリアの姉だもの」

 ?!衝撃のあまりフリードは大きな声を出してしまった。

 「もっ、もしかしてリリアの姉ってあの……」


 フリードは完全にフリーズした。

 いやー、まて。と言うことは今僕の目の前にいるのはーー。

 「氷結の魔女……」


 リリアに姉がいることは知っていた。とても優秀で魔法学校を首席で卒業している化け物と聞いたことがある。後に数々の魔王幹部を得意の氷結魔法で倒し続け、いつしかそのまま氷結の魔女と呼ばれるようになったと。でもその当時でレベルが確か250だったはずだ。となると今のレベルは……。


 彼女はにっこりと笑う。


 「そうよフリード。貴方の話はリリアから良く聞いてたから、特にお金の使い方は最悪よ!って」

 「あはは、そうなんですか。ちなみに一つ聞いても良いですか?」

 「何?」

 「今レベルおいくつですか?」

 「640よ」

 「…………」


 全然レベル250なんかじゃないじゃないか。あの石板は嘘つきだ。一体いつの情報なんだよ。640は聞いてないよ。これでも一応レベルコンプレックスなのに。


 「ロイナさんっていつからこの恋愛相談所に通ってたんですか?」

 「うーん、確か最後に来たのは6年前かな、全然良い人見つかんなくってさ。見つけてもみんなヘタレばっかで全然満足できないんだよねー」 


 満足できてないのかー。リリアも体力あったけど姉様となるともっとあるか。やっぱりリリアに似てとても綺麗だし、逃すわけにはいかない。3つ年上だけど今の俺には癒しの人が必要なんだ!もうこの人で決めた。髪も長くて白髪、胸が大きいし僕の好みだ。

 

 「ロイナさん!もし自分で良ければこのままお付き合いしたいんですけど!」


 「うふふ、さすがドラゴンスレイヤーさんね。いいわよ。私もそのつもりだったから、貴方とお見合いするってなってからね」


***


 「お早いですね……、もうお見合いはよろしいのでしょうか?まだ10分も経ってませんが……」


 「お付き合い成立手続きをしたいんですけど」


 えー?!すごい早い決断。こんなに早くお付き合い成立した人たち初めて見ました。普通は何回かお見合いしてからお付き合いされる方が多いんですが、さすがレベル400の勇者様です。


 「ではお二人ともこちらの石板に手をかざして下さい」

 石板はほのかに発光して、数秒経つと光は徐々に薄くなり消滅した。


 「では後日、お付き合い成立金がギルド金庫から引き落とされます。お二人ともお付き合い成立おめでとうございます!今後のお二人のお付き合いに実りがありますようお祈りしております!どうも恋愛相談所のご利用ありがとうございました」


 シェリカは深々と頭を下げる。こうして二人の勇者達は恋愛相談所を後にした。 

  

 それにしても、ロイナ様って今まで見たことなかった気がする。

 シェリカは石板に手を触れると再びロイナの情報を見る。先ほど手を触れているので新しい情報になっているはずだ。


 えーと更新前は……6年前!

 ?!!レベル……640!!

 フリード様よりもさらに上。こんな人が恋愛相談所を利用していたなんて、私が恋愛相談所で働き始めてもう4年が経つけど、こんなレベルの人は初めて見ました。

 称号は、氷結の魔女……。


 この人は一体何者なのだろうか。

最後まで読んでくださりありがとございます!こちらの作品は連載もする予定です。勇者フリードと魔女ロイナの物語は連載の方で続きます。もし気になるという方はぜひブックマークの方をよろしくお願いします。

 評価してもらえるととても嬉しいです。

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