1話 死亡
この作品は大体3年前くらいから構想してたもので、何となく書いてみるか!ていう感じで書き始めたものです。ちゃんと完結させる予定です。
毎日投稿したいと思います……一応、しばらくは。
それでは『磁石無双』、本編へどうぞ。
俺の名前は望月葵、見た目はいい意味でも悪い意味でも、普通の高校生だ。
普通の中学校を卒業したのち、第一志望であった、県内トップクラスの高校に入学。
そこは将来有望とされる者達が――言ってしまえば、勝ち組の人間が集まる高校であり、俺の最高の人生はもう約束されたものだ。
そして隣にいるのは、同じクラスの十河誠治。
俺と同じく、どこにでも居そうな高校生……訂正。顔だけは俺の倍くらいいいヤツだ。
くそう……テストの点数も成績も、十河には負けたことがないのに……!
とはいっても仲は良く、休日になるとこうやってよく一緒に遊んでいる。
おっと、そろそろ12時だな。
「おい、そろそろ昼だし、腹減ってきたから昼飯に焼き肉食おうぜ。俺が奢ってやるからさ」
「えー?俺、焼き肉よりも寿司食いてぇんだけど」
「寿司は高ぇだろ。誰が金払うと思ってんだよ」
「焼き肉だって高ぇだろ。そもそも普段から10万持ち歩いてるくせになんで値段気にすんだよ」
「それ外で言うなよ!誰かに聞かれてスリにあったらどうする!とりあえず、焼き肉な!」
と、強引に焼き肉に決めさせ、近くの焼肉屋へと向かう。
そこまではほぼ一本道なので、歩いてれば着く。その間暇だな……とりあえず、スマホ見るか。
SNS来てたら返信しないといけないし、そうだ。あいつ、ストリーム更新してないかな。
それに、あの人も新しく動画アップしてないかな。
ちょっとだけSNSの確認をするだけのはずだったが、一旦スマホを開いたら気になるものを片っ端から確認してしまう。
そうして、気付けば俺の意識は完全にスマホの画面に向けられてしまった。
そうして、しばらく歩き続け……。
「おい、いつになったら着くんだ?」
という十河の言葉にハッと顔をあげる。どこだ、ここ?
えーと、マップを確認……やっべぇ、めちゃめちゃ焼肉屋通りすぎてた。
「ごめん、500メートルくらい通り過ぎてた!」
「おいおい、案内役が間違えんなよ……」
「ごめんって、じゃあ戻るぞ!」
そう言って、進んできたのと反対方向へと走る。
「おい、ちょっと待……」
という十河の声を無視し、焼肉屋へと全力疾走。風の音がごうごうと耳元で響く。
すると、半分ほど進んだところで突然風が止んだ。
それにより、風の音が消え、周囲の音が耳に届く。
「待っ……ない!……」
遠くから、十河の声が聞こえる。なんだ?よく聞こえない。
「……う……上!」
上?何だと思いながら、走りながら上を見る。
うわっまぶしっ。昼のため、真上に近い場所に太陽があり、それを直視してしまった。
くそ、ふざけんなよ。十河のせいで……!
そして、眩しさを和らげるために目を細める。
その細めた目に映る太陽に、小さな黒い影のようなものができた。
何だ、あれ?その影はだんだんと大きくなっているような……?いや、違う!
俺へと落ちてきているんだ!
そう思い至った時にはもう遅く……ソレは、俺の顔面に直撃した。
ガッチャン!
「葵ぃ!」
遠くから、十河の声が聞こえるが、そんなことに構っていられない。
ぐぁぁあ!痛い、痛い!俺は顔を押さえ、地面に踞る。
何があったんだ!?うっすらと目を開くと、側には大量の土や花と、茶色い何かの破片。
これらから考えるに、俺は落ちてきた植木鉢に直撃したのだ。
クソッ、移動中にピンポイントで植木鉢が落ちてくるとか、どんな確率だよ。その確率、こんなことじゃなくて宝くじに使えたらよかったな……。
なんて考えてる間にも、俺の意識はどんどんと薄れていく。
視界は血によって真っ赤に染まり、地面にも赤い水溜まりができている。
手で押さえている頭の感触がおかしいと思ったら、頭蓋骨が砕けていたのか。
これはもう、助かりそうにねぇな……。
「葵!大丈夫か!」
何言ってんだ、お前の目は節穴か?これが、大丈夫に見えんのか?
まずい……手足の感覚がもう無い。
目も、もう何も見えなくなってしまった。
俺に残された時間は、あと30秒も無いだろうな……。
「そご、う……最期に、頼みたいことがある……」
「最期とか言うな!まだ助かるかもしんねぇだろ!」
いや、無理だろう。これで助かるわけが無いだろうが。脳がやられてんだぞ。
なんなら、まだ生きてることが不思議なくらいだ。
まずい……意識がもう……もう、俺は死ぬな……。
せめて、これだけでも……。
「いいから聞け……皆に、『ありがとう』と、伝えてほしい……」
「……分かった」
ありがとう、頼んだぞ――そう思ったところで、俺の意識は途切れた。
...
..
.
そうして、俺はそのまま死ぬ――はずだった。
薄れていく意識が、上にグンッと引っ張られ、もとに戻っていく。
気付いたら、俺は全く知らない場所で寝転がっていたのだった。
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