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愉しいネットのうわさ話

作者: 詩悠しろう

 私はネット上でくだらないウワサ話を探すのが大好きだ。

 そんな私の家に入道雲が湧く季節になると数年前から招かざる客が来るようになった。

 私はくだらないウワサ話が大好きだ。

特にネットの中にはくだらないウワサ話や陰謀論が溢れるほどあり飽きる事はない。一日中ネットを焦り、気が付くと日が沈んでいた事も多い。そしてまた気づくと空が白々とあけている。

 その繰り返し。

 

 たまにコメントをしたり、わざと自分である事ない事、くだらないことをさも大変な事であるかのように書き込み、同じネット民の反応をみる。たまにはすごくもり上がる事もあって、それが、愉しすぎてやめられない。止まらないからもう何年もネット民を続けている。

 口うるさく言う親もいないしな。


 年がら年中そんな事をしていれば、家が荒れ放題になるのは仕方がない。家の周りの植木もほったらかしだから、木々の枝はのび放題、鬱蒼と敷地全体に暗い影を落としてくれている。

 たまに近所の人が私の家の周りをうろうろとしているが、さすがに家の中にまでは入って来ないし、声をかける人も居なくなって久しい。

 煩わし事は何もなく、なりよりだ。今日も…昨日からか? とにかく、楽しい話を求めて時間を忘れ、気のすむまでネットを彷徨う。


 ふと気がつくと、鬱蒼とした木々の隙間から照らす木漏れ日のように細く月明かりが窓から差し込んでいる。

 そのか細い月明かりを遮るようにガサゴソと何かが暗闇で蠢いている。

 またこの季節がきたのか、フッと私は侮蔑の混じった息を吐き、視線を蠢いている何かたちに向ける。

 案の定それらは入道雲が存在を主張する季節になると決まって湧いてでるいきったバカどもだ。

 一人がスマホを待ち、私の家の庭先で何やら喋っている若者たちを映している。大方、動画でも撮っているのだろう。

 この荒れ果てた家を面白半分動画で撮影し、後からネット上にupしようというのだ。

 

 優しい私は撮れ高に貢献してやる事にする。

 さて、今回は何をしてやろうか?


ーピローンー


  その時、お気に入り投稿者の新着お知らせが鳴った。バカどもを相手にしている場合ではない。

 私は慌ててpcの前に座り贔屓にしている投稿者の新ネタを愉しむ。ニタニタしながらコメントを打つ。なにせ今日はライブ配信なんだ。ライブ配信後すぐにチャットももり上がっているし、ニタニタするのは止めようがないだろう?


 ガタン!


 私は大きな音に思わず庭を振り返って見る。バカどもがいた事を完全に忘れていた。

 若い男が2人腰が抜けたのか、地面に尻もちをつき目を見開いている。隣にいる女は口をワナワナと震わせているが声が出ていない。今にも泣きそうだ。

 撮影係なのか背の高い男はしっかりとスマホを握りしめたまま固まっている。

 アレは動画はまだ回っているのか?


 撮影係の男は女の手を引き慌てて敷地内から出て行った。残されたバカどもはあわあわとわけの分からない事をそれぞれ口走りながら、先に逃げた2人を追う。

 これでやっと静かになった。やれやれだ。

 さぁ、推しのライブを楽しもう。



 数日後、ネット上に私の家の動画が上がっていた。

 何年か前からの恒例行事になりつつあるようにも感じるが、我が家の事だから一応チェックする。


 この前来た、若者たちが無事に動画をupしたのだろう。中にはせっかく忍び込んできたのに動画を上げないヤツも多い。そんなヤツらには人の愉しみの時間を邪魔してまで忍び込んでおきながら何をしてるんだ!と蹴り飛ばしたい気持ちにさせられる。撮れ高にも貢献してやったというのに。

 人の愉しみの時間を邪魔したのなら、後からネット上でその愉しみをせめて返せよ!と言いたい。

 まぁ、その点では先日の4人組は動画を上げるだけマシだったという事か。サムネはくそダサいが。


 upされた動画の中では深夜、電気の消えた私の家で私の部屋の中にあるpcが私の推しのライブ配信を眩いばかりに映し出している。時おり、チャットにコメントを打つぱちぱちという音も混じる。

 そこに私の姿が映ることはないが私の打ったコメントは随時追加されていく。

 そのいかにも安いホラーぽい動画が楽しくて、我が家を盗撮した動画にコメントを残していく。

 今日も朝まで愉しめそうだ。


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