推理の天才の私が怪異になった日。
第四回なろうラジオ大賞参加作品第十三弾!
私の名前は華沢怜子。
推理小説が大好きな女の子。
ちなみに小学生。
そしてそんな私と同じ趣味を持つ小学生はこの辺では珍しいらしく、私はいつも学校で一人だった。
まぁ私が通う学校は生徒数が少ない所だから、私と同じ趣味を持つ子がいないのも当然かもしれないけど。
とにかくそんなワケで、私は一人だった。
正直寂しいけど、だからって異なる趣味を持つ同級生を相手にするのは嫌だ。
なんかこう、自分を偽って相手に合わせるのは気が滅入るのよ。
さすがに社会に出たらそういうのをしなきゃいけないだろうけど、子供の頃からそういう事はしたくない。
でもって周囲は周囲で、私を異物みたいに見ているから、できる限り関わらないように……私は学校生活の半分近くをトイレなどで過ごした。
イジメに遭ったら親が心配するのよね。
心配されて面倒臭い事になるくらいなら、トイレとかに籠ってやり過ごすのが吉だわ。
「華沢って、気味が悪いよな」
「だよな。いつも本持って変な笑い声出すし」
ほぉら、思っているそばからそんな失礼な事を言うヤツらがいる。
生徒数が少なくてよく響くから、男子トイレの声も聞こえちゃう。
「ふんだ。私の灰色の脳細胞を満たせない頭脳のクセに」
そう小声で言うなり私は、買った本を個室で開く。
最近流行っている推理小説の、シリーズ第二弾だ。
第一弾は昨日読んだので、今日はこの小説を読む。
「ムフッ。まさか依頼人と思ってた相手が実は主人公の探偵の死んだ筈の祖父で、そして主人公を自分の後継者として鍛えるために事件を紹介していたとはッ」
犯人は途中で当てれたけど、そこまでは分からなかったわ。
でもよく思い返せばそういう伏線も張られていたような気もする。
そして私はウキウキ気分で、第二弾の小説を読もうとした……その時だった。
突如、校舎が揺れて……地震だわ!
「は、早く逃げないと!」
私は慌てて、トイレを出ようとし……でも揺れのせいでドアが傾いてて……ってちょっと!? で、出られな――。
※
そして私は、校舎の倒壊に巻き込まれ……トイレの花子さんとなった。
いや、別に花子だなんて名乗ってないわ。
私の後輩達が私を目撃するなり勝手に花子って呼んでるだけ。
「ねぇ帰ろうよぉ」
「へっ。花子さんだなんているワケないわよ」
そして今夜も、肝試しで私に会いに来る者が。
『はぁ。今夜も推理小説持ってないガキの相手か』
そして私は、今夜も脅かす。
まさか今回来たガキが私の相棒になるとは知らずに。
怜子「サカキには早く私とミコちゃんの話を書いてほしいものだわ」