緋威魑暴畏【ピーチボウイ】
あるところに昔々ブイブイ言わせていたおじいさんと、昔々ブイブイ言わせていたおばあさんがおりました。
ある日、おじいさんは作業服を着て山へ柴刈りに、おばあさんは割烹着を羽織り川へ洗濯に行きました。
おばあさんが洗濯をしていると、大きな桃が貪武羅虎、貪武羅虎と流れてきました。
おばあさんは桃を根性で持ち帰り、おじいさんが包丁で叩き切ろうとしたその瞬間、桃がひとりでにぱかんと割れて、中から元気な赤ん坊がメンチを切りました。
二人は桃から生まれた赤ん坊を「緋威魑暴畏」と名付けました。緋威魑暴畏は夫婦の英才教育を受けながら元気に育ちました。
緋威魑暴畏が立派な不良になった頃、三人が住んでいる村の辺りに鬼が現れて、人々に迷惑をかけていました。緋威魑暴畏は天下統一の足掛かりとして鬼たちを退治することにしました。
「喧嘩上等 天上天下 唯我独尊 常勝無敗」と書いたきらびやかなのぼりを背負い、おばあさん手縫いの特服を身に纏い、「顰苦雷賭任紅」と名付けた愛馬に跨がり旅に出ました。
道中、噂を聞きつけ仲間に加わりたいと願う犬・猿・雉・チンピラ・ヤンキーがやってきましたが、宇宙最強ソロ暴走族を目指す緋威魑暴畏は全て断りました。
鬼の住み処である鬼ヶ島にカチコんだ緋威魑暴畏は、大将同士のタイマンを挑みました。結果、あっけなく瞬殺された大将は金棒を振り回して手下と共に緋威魑暴畏を襲いましたが、あっという間に全員返り討ちにあいました。
島を完全制圧した緋威魑暴畏は、「今日からここは鬼ヶ島じゃねえ! わしのシマじゃあ!」と叫びました。緋威魑暴畏の漢気にすっかり感化された鬼一同は傘下に入ることを申し出ましたが、例のごとく断られました。せめてもの罪滅ぼしとして、私を含む鬼たちは緋威魑暴畏(敬称略)の輝かしき武勇伝を生涯語り継ぐことにしたのです。
それから緋威魑暴畏は顰苦雷賭任紅と共に天下統一を目指し新たな旅に爆走り出しましたとさ。夜露死苦、夜露死苦。
『緋威魑暴畏伝説 ~総長爆誕・鬼ヶ島制圧編~』完