ゆとり世代ですよ、それが何か? 取捨選択の権利とか無かったんで、仕方ないでしょう?
高校を卒業した時にはゆとりはダメっ、使えないっ!
そんな論調がネット内外に溢れ捲っていた。
ふむ、一体どうしろと?
こちとら他の教育なんぞ一つも知らないで成長して来たのだが……
んまあ、新人類、宇宙人? しらけ世代に氷河期世代、プレッシャー世代とか何とか……
どの時代も何となく名付けられただけの気もするし、常に変わらないのは言葉の乱れ、か? ふーん、でって言う!
先に大人になった人たちの若者への引け目、所謂劣等感とか言う奴がこんな風に十把一絡げにするんだろうね?
自分たちもそんな風にされてしまった復讐なんだろうか? それとも引き継がれるべき伝統儀式なのかな?
はて? 何の意味があるかは分からないけど、続けられてるって事は何か意味が有るのだろう……
そんな風に思っていた令和三年の秋の空、蒼天を埋め尽くす白銀に輝き捲ったUFOが世界中の空を埋め尽くしたのである。
太陽系外のどこだか知れない惑星から飛来したウチュウジン達は、我らが地球の掛け替えの無い資源、全球保有率が原初から微動しかしていない貴重な成分を奪いに来たのである。
燐が窒素が水素が酸素が炭素が珪素が、アルゴンもリチウムもベリウムもカリウムも、あのマグネシウムやイリジウムまで、有ろう事かオスミウムから彼のルテニウム、モリブデンまで奴らは奪い尽くそうと画策していたのであった。
オタオタするばかりで何ら効果的な手段に踏み切れない『聞く耳を持っている』筈の政府、所謂団塊の世代に業を煮やした僕らは立ち上がるしかない、決起を余儀なくされてしまうのであった。
僕は集った『悟り』の仲間達、同年代の数千人に向けて緊張しながら言った。
「このままでは地球はやられ放題で、もう、その、エライ事になっちまう! 僕達が戦うしか無いんだっ! 良いか皆! やってやろうっ! 僕達の手で地球を守ろう!」
誰かが答えた、勇気に溢れた声だ!
「は、はい! 付いて行きますっ! 何が有っても諦めずに只々あなたの背を追い続けます!」
な、何て馬鹿な事を宣言するんだっ? 皆が聞いていると言うのにぃっ!
僕は間を置かずに打ち消しに入った。
「ば、馬鹿を言っちゃぁいけないよっ? 誰が先とか上とかはダメだよ! 皆で一緒に敵を倒すんだよ! さあ、手を繋いで横一列でっ! 全員で一緒に、同時に倒すんだよ? いいね? 皆一位、皆一番、皆一緒で丁度良い! だろう? さあ、行こう!」
僕の言葉に皆正気に戻った様で慌てて手を繋ぎ、横一列で地上に停泊した宇宙人のUFOに向かって歩き出すのであった。
まともな武器も無く、只々数を減らし続けた僕達であったが、何とか行進を続けた事で、思った以上に脆弱だった宇宙人を撃退する事に成功したのだった。
つないだ両手に力を込めて独断を許さない様に互いに相互監視をして頑張ったのである。
それでも尚、大声で敵に向かって単独で走り出した個体、オオタニやアユム、ナオミやコウヘイやアドやルイやタクミやタケフサやユウタやユズルやショウマやユウヤやダイヤやタケルやナオヤやマオやユウトやワカバやユイやアキヨやミホウやウタやヒフミやショウリやe.t.c.…… e.t.c.……
調和を乱す突出したがる輩たちの自分勝手な行動にもめげずに手を繋いで歩き切った、サトリの戦士たちによって地球は守られたのである。
「やったやった! 僕たちがやり遂げたんだよ皆! みんな一緒でそれでいい!」
世界は救われた……
途中でドロップアウトした突出した存在を失った事は悲劇その物であったが…… 兎に角世界、地球は全体意識によって救われたのだ、良かった……
世界中が日本の偉業を褒め称える中、ゆとり教育を絶賛し、その結果として齎される悟りを得た若者たちを我先に求め続けたのである。
世界の意思は一つの答えに達したのである。
結果として世界は画一的で悟りに溢れた美しいゆとりある物となった。
百年後、無子高齢化によって美しく資源に溢れた地球から、人類はドロップアウトしたのである。




