007
「マジで置いていきやがったな。
結局、何しに来たのか分からねぇし」
「アブソーバーはこの後どうするの? 暇なら少し付き合ってほしいんだけど」
エキラドネは退屈そうにしているアブソーバーに話しかけた。
「あ? どうするって決まっているだろ。今から第六に行くつもりだけど」
「何しに?」
「第六って言ったら、あいつがいるだろ? 近くまで来たしせっかくだから顔を見に行こうと思って」
「あらそう。じゃあ、私も行くわ」
「えっ、どっか行く予定があるんじゃねぇの?」
そう言われたエキラドネはアブソーバーに顔を近付けた。
「何か私が一緒に行っちゃマズイことでもあるの?」
相変わらずのジト目だ。それに加え、いつも不愛想なのでこお顔をされるとアブソーバーはいつも自分が悪いことをしたのはないかと思ってしまう。
「いや、ねぇけど。
何か用事があるような雰囲気だったから」
アブソーバーは極力、エキラドネの目を見ないように応えた。
「そこまで急ぎでもないし、大したことでもないわ。
それに私も久々に会いに行きたくなっただけ。
それじゃ、行きましょ」
そう言ってエキラドネは先に歩き始めた。突飛な行動に呆気に取られたアブソーバーは呆然と立ち尽くしていた。
すると、先に歩き始めたエキラドネは不意に振り返り、アブソーバーに「早く、早く」と言いながら小さく手招きをした。その行動で我に返ったアブソーバーはエキラドネの元に急いだ。
エキラドネと一緒に一緒に行くことになったのは良いが、ここから第六支部までは約四十キロメートルほどある。車で行けばそこまで時間は掛からないのだが、生憎二人とも置いてけぼりを食らった。それに公共の交通手段があるような場所ではない。つまり何が言いたいのかと言うと、今の二人の移動手段は徒歩のみとなる。まぁ、二人の時間は腐る程あるし、今から二人が会いに行く相手も相当暇をしているはずなので、別に徒歩でも構わないのだが、疲れるのが嫌なアブソーバーはエキラドネにある提案をした。
「なぁ、エキラドネ。歩いて行くのはいいけどよ、疲れるから俺の力を使って第六まで行こうぜ」
エキラドネは歩みを止め、少し考える仕草を見せた。
「…そうね。それじゃ、お願いしようかしら。
でも、あなたの能力、ちょっと荒いから優しく扱ってね。こう見えてもレディだから」
「よし、決まりだな。
それじゃ、失礼するぜ、っと」
アブソーバーはそう言うと、エキラドネをお姫様抱っこをした。不意を突かれたエキラドネの目は点になった。
「何をするかと思ったら、お姫様抱っこなんて、私初めてだから緊張するわ」
エキラドネは口ではそう言うが、見た感じでは緊張しているようには見えない。
「じゃあ、出発するぜ。
ここからなら、大体『二歩』で着くからしっかり掴まっていてくれよ」
アブソーバーはそう言うと地面を思いっきり蹴り、途轍もない跳躍力を見せた。例えるならば砲台から撃ち出された鉄球の勢いだ。
宙に舞っているアブソーバーは徐々に失速し地面に着地した。そして間髪を入れずに地面を蹴り、先程と同じように飛び上がった。
二回目の着地。アブソーバーとエキラドネの目の前にはブラスフェミー第六支部と書かれた門があった。
「よし、到着。降ろすぞ」
アブソーバーはそう言ってエキラドネをゆっくりと降ろした。エキラドネは礼を言うとアブソーバーを置いて支部の中に入っていった。アブソーバーはやれやれといった様子で頭を掻き、エキラドネに続いて支部の中に入っていった。