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アブソリュート・イモータル  作者: ぞのすけ
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006

 「チッ、わざわざ休みの日に駆り出されて来たって言うのに、実際来てみれば、こっちは全滅で敵にも逃げられているだと。

 全く、何したのか分からねぇな」

 そうぼやくのは首元にシンプルなデザインの首輪を付けた十五、六歳のボサボサ髪の少年。ボサボサの髪を掻きながら呟いた。

 「そんな小言を言っていないであなたも少しは手伝ったら?」

 その男の隣に立っていたのは不愛想な女。ボサボサ髪の男と同い年ぐらいでジト目が印象的だ。そのジト目で男を見ながらそう言った。女にも男同様の首輪が付いている。

 二人がいる場所は先程オルカ達から襲撃を受けた基地の前。どうやら応援で呼ばれたようだ。

 「なんで、戦闘要員で呼ばれた俺がゴミ処理の手伝いをしなきゃなんねーんだよ。一緒にきた奴らはせっせと中に入っていくし。

 おい、エキラドネ。俺、帰っていいか?」

 エキラドネと呼ばれたジト目の女はジッと、ボサボサ髪の男を見た。

 「冗談だよ。そんな目で俺を見ないでくれよ。

 つか、報告では敵は二人なんだろ? 監視カメラには一切姿は映っていない。それに監視カメラを破壊された様子も無いし、映像を抜かれた形跡もない。殺し方もナイフで首元を切り裂かれて殺されたか、毒物みたいなもので殺したのか分からないが、傷の無い死体のどちらかだ。

 透明人間の仕業か? エキラドネはどう思う?」

 「さぁ? さっぱり分からないわ。専門じゃないもの。

 ただ、私たちが呼ばれたという訳だから相当な事態だったと思うわ。

 それと、全滅じゃなくて、生存者一名よ。何故相手はわざわざ殺さずに一人だけ生かしたのでしょうね。

 それについてはどう思うの、アブソーバーさん」

 アブソーバーと呼ばれたボサボサ髪の男は少し考えてエキラドネの質問に答えた。

 「まぁ、大体の予想、俺らに対する挑戦状みたいな感じか? あの、生存者、何があったかは知らないが酷いショック状態で一言も喋らないんだろ? その生存者を知っている奴は「あいつはお喋りで常に何か喋っていた。何も喋らないのはおかしい」とか言っていたから、どうにかしてそいつの口を割らせれば真相にたどり着ける的な、ミステリーでよくありがちなやつだろ」

 「…なんていう幼稚な考え。

 まぁ、正解かどうかは置いて、最近、私たちの研究所や基地が襲撃されているのと同一犯だと見て

間違い無さそうね。わざわざ私たち『ブラスフェミー』に喧嘩を売るなんて馬鹿としか思えないわ」

 エキラドネはそう言って首を横に振った。

 「確かに、馬鹿としか思えねぇな。

 まぁ、ブラスフェミーの表向きは科学研究所で裏の顔は、人殺しの兵器を生産している、『如何にも』なところだしなぁ。恨まれるのも無理はないよな。まぁ、俺らも恨む側の人間だったりする訳だけど」

 アブソーバーがそう言うとエキラドネは呆れた顔でアブソーバーを見た。

 「今の発言、上に報告するわよ?」

 「ちょ、冗談だって! 冗談!

 本当、エキラドネは冗談が通用しねぇな。もっとユーモアに生きようぜ」

 アブソーバーがそう言うとエキラドネは小さなため息をついて、基地の中に入っていった。アブソーバーは慌てて後に続いた。

 基地の中は地獄絵図だった。無残に殺された死体があちらこちらに転がっている。それを手際よく処理する隊員達。それを二人は横目で見ながら奥に進んでいった。

 「…なぁ、エキラドネ。あいつらは死んだ奴らのことをどう思っているんだろうな」

 アブソーバーは何気なく呟いた。すると、エキラドネは足を止め、作業をしている隊員を見た。そして再び歩き出し、アブソーバーの質問に答えた。

 「そうね。見た感じ、ゴミだとしか思っていないんじゃないかしら。いや、ゴミは言い過ぎたわ。実験の材料でしょうね。

 回収された死体は研究所に運ばれて、あの頭のおかしい科学者共に骨の髄までしゃぶりつくされるのよ。

 かつていた私たちの友人たちもそうだったじゃない。それはあなたが一番よく分かっていると思っているけど」

 「あぁ、確かにそうだったな。聞いた俺が間違っていた。

 …ていうか、話は変わるけど、やっぱり俺、必要ないと思うんだが」

 「はぁ、何度言えば、その小さな脳みそに私が言ったことが伝わるの?

 もう一度、言うわね。もし、万が一敵が残っていたら困るでしょ? その時は誰が私を守ってくれるの?」

 前を歩いていたエキラドネは振り返り、アブソーバーに顔を近付けた。

 「お、おう」

 急に顔を近付けられたアブソーバーは少し照れくさそうな顔をして頬を掻いた。エキラドネは何故、アブソーバーが照れくさそうにしているのか分からなかったが「それじゃ、よろしくね」と頼むと先に進んだ。

 「いちいち、やりずれぇんだよなぁ」

 アブソーバーは小声で呟き、頬を掻いた。

 それから二人は基地内を隈なく探索したが、他の生存者も無し、犯人につながる手掛かりも無しと言った結果に終わり、基地の入り口まで戻った。

 他の隊員も各々の仕事が終わったようで続々と集まって来た。ほぼ全員が集まったのを隊長が確認すると号令をかけた。

 「全員注目!

 ブラスフェミー第十五支部襲撃事件に置いて、我々に与えられた任務は完了した。

 今からA班とC班は回収したカメラの映像と作成した書類を持って第六支部に向かってくれ。B班とD班は引き続き、現地に残り基地内と周囲の索敵を行ってくれ。

 私はこのままA班に合流する。残りの指揮はC班のデミルが執ってくれ。

 それと、特別参加をしてもらっている君達はもう帰っても大丈夫だ。

 以上、解散」

 隊長が指示を出すと隊員達は大きな声で返事をして機敏に行動を開始した。一分もかからない内に隊員達は消えた。

 そして、そこにはエキラドネとアブソーバーだけが残された。

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