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アブソリュート・イモータル  作者: ぞのすけ
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005

 オルカは本部の前までやって来た。中に敵は残っていないと思うが、万が一の事があると面倒だなと思い、そっと中を覗いた。

 辺りを見渡すが敵の姿は無く、中央の机に腰掛け煙草を吸っているダレンの姿があった。

 ダレンはオルカの視線に気付き、オルカに手を振った。どうやら中にいた敵は全滅したようだ。面倒事がないと分かったオルカは中に入りダレンの元へ向かった。

 「お疲れ、そっちはどうだった?」

 ダレンは口から煙を吐き、オルカに尋ねた。

 「やっぱり、いなくなったの分かった?」

 「当たり前だろ。どれだけの付き合いだと思ってるんだ?」

 「ざっと五百年ぐらい?

 まぁ、こっちは問題なく終わったよ。あの隊員さんは何も喋ることはないと思う」

 「あっそ。こっちは見ての通りだ。

 一回ドジって死んだけどよ」

 ダレンは笑ってオルカと肩を組んだ。

 「うげぇ… 煙草臭い。離れて。

 ていうか、どんなドジを踏んだわけ?」

 オルカはダレンと少し距離を取って尋ねた。

 「いや~、我ながら恰好付け過ぎて、余裕ぶっこいてたらさ、肩撃たれてよ。

 リセットするために一回死んどこって思って自殺したんだわ。

 本当、そこんとこ不便だよなー。確かに死なないし、歳食わねぇけど、それ以外は普通の人間と同じだからなー

 怪我してもすぐ治るわけじゃないし、風邪もひくし、病気にも罹る。どっかの漫画みたいに一瞬で傷が塞がれば楽なんだけどなぁ」

 「ふーん、要するに死んだのは自業自得ってわけね。

 でも、傷もどんな病気も一回死ねば元通りになるから便利といえば便利じゃない?」

 「そうなんだけどさ、どうせなら無敵の上に圧倒的な強者でいたいじゃん?

 …まぁ、いいや、仕事も九割終わったし、残りカスを殺して早いとこ帰ろうぜ。最後の馬鹿が今更応援呼びやがって、別の基地から、わんさか応援が来るみたいだからさ」

 ダレンは煙草の火を消し、机から降りた。

 そして、二人は残党を狩って、最初に入って来たところまで戻って来た。

 「よーし、仕事終了。あー、疲れた。

 正直、死なないから楽勝過ぎてつまらないよな」

 ダレンは体を伸ばしながら言った。オルカは連戦続きで疲れた表情を見せている。

 二人は談笑しながら最初にオルカが幻覚を見せて自殺まで追い込んだ隊員と出会ったところまで来て、足を止めた。何故なら、その隊員の死体の側に何かがいるのだ。暗くて良く見えない。少しずつ音を立てぬように近づいた。

 うっすらと影が見える。どうやら人のようだ。こんなところで何をしているのだろうか。たまたま通りかかったとは思えない。大方の予想、残党がまだいたと考えるのが妥当だ。

 かなり近付いてみたが、こちらに気付く様子はない。それなら好都合と思ったダレンはナイフを取り出し、隊員の死体を調べている人影目掛けてナイフを投げた。ナイフは人影に向かって一直線に進んでいく。しかし、そのナイフが人影に刺さることは無かった。何故なら、ナイフが刺さる寸前で対象が振り返りナイフを受け止めたのだ。

 ナイフを止めた人物は自分に飛んできた物を観察した後、口を開いた。

 「おやおや、こんな危ないものを投げるなんて。もし、怪我でもしたらどうするんですか?」

 声色からして男だろう。こんな暗い場所で音もなく投げられたナイフを受け止められる人物だ。かなりの手練れとみた。

 ダレンはオルカの方を見た。オルカは相手から視線を逸らさず手袋を外していた。基地の時のオルカからすれば全くの別人に見える。

 「…お前、何者だ?」

 ダレンが尋ねる。

 「まず、人に名前を尋ねる時は自分から名乗りなさいと親に躾されませんでしたか?」

 男はそう言いながら近付いてきた。

 「チッ、面倒臭い野郎だ!」

 ダレンはそう言いながら隠し持っていたナイフを取り出し男に投げた。男は難なく受け止める。

 その時、雲が流れ、隠れていた月が顔を出した。お互いの姿が月明かりに照らし出される。

 男は身長が高く、スラリとしている。髪は男としては長い方で、結んで短いポニーテールの様にしている。目には片眼鏡が掛けられていた。

 その男はニコリと笑ってダレン達に話しかける。

 「お互い、顔も見えたことですし、自己紹介といきましょう。そちらさんは名乗ってくれないみたいですし。

 まぁ、名乗っていただかなくとも貴方達『一族』のことはよく知っていますよ」

 ダレンの表情がピクリと動いた。

 「俺達のこと知っているのか? そんなに有名になった覚えはないけどなぁ。

 何なら後でサインしてやろうか?」

 「まぁまぁ、そんなに怒らずに。

 申し遅れました。私、シャルル。シャルル=クロムウェルと申します」

 シャルルと名乗った男は深々と頭を下げた。

 「これは、ご丁寧にどうも。それでシャルルさんは俺らにどんな用事で?」

 ダレンの問いかけにシャルルは何か考え事をするような仕草を見せた。

 「うーん。これと言った用事は無いんですよね。貴方達に会えたのも偶然で。強いて言うならば、挨拶でしょうか?」

 「挨拶?」

 「えぇ、そうです。

 実のところを言うと、貴方達が不老不死になってしまった原因は私の先祖が関係していまして」

 シャルルの口から発せられた言葉にダレン達は驚いた。

 「一体、どういうことだ?」

 「うーん、何から話せばいいのやら。

 まぁ、端的にお話しますと、私たちクロムウェル家は代々、魔法や錬金術を生業としていまして、貴方達が不老不死になったのも、その魔法が原因といいますかね」

 「あれ? もしかして、いや、もしかしなくても疑っていますか?」

 「うん、とても疑っているよ。

 だって、いきなり出会った人の話を信じろと言うのが無理があるんじゃない?

 それに魔法使いだなんて。何か証拠とかあるわけ?」

 「ははは、流石に疑われますよねぇ。

 では、一つ簡単な魔法をお見せ致しましょう」

 シャルルはそう言うと左拳をギュッと握った。そしてその手を開くとその手の平の上には小さな炎が出ていた。

 「どうですか? これで信じていただけましたか?」

 「…それって手品じゃないの?

 普通、魔法ってさ、魔法陣みたいなの書いて、呪文を唱えたりするものじゃないの?」

 オルカが反論するとシャルルは笑みを浮かべながら答えた。

 「これしきの魔法なら魔法陣や呪文詠唱の必要はないのです。どの魔法使いもそうですよ。ただ中級レベル以上になってくると、並みの魔法使いなら魔法陣や詠唱は必要になってきますけど、私の場合は体中の至る場所に魔法陣が刻まれていますので、中級レベルなら必要ありません。

 …何なら見て見ますか?

 シャルルがそう言うとダレン達は揃って首を横に振った。

 「ははは、そうですよね。

 …おや、もうこんな時間ですか。すみませんが私はそろそろ次の場所に行かねばなりません。

 では、次の機会に」

 シャルルは腕時計を見てそう言うと、ダレン達にお辞儀をして指をパチンと鳴らした。すると、目の前にいたシャルルは忽然と姿を消した。

 突然のことで驚いたダレン達だったが、特に気にも留める様子も無く帰路に着いた。

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