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アブソリュート・イモータル  作者: ぞのすけ
58/59

055

 シャルルの魔法によってニヒル達から離れた二人は施設内のどこかに移動していた。

 肩を抱かれていたオルカはシャルルの手を振り払った。

「もう大丈夫だから」

 そう言うと辺りを見渡した。あるのは何を現しているのか分からない文字の羅列のモニターばかりだ。すると、何か異質な物が視界に入った。

 オルカはそれに恐る恐る近付いた。その異質な物の正体は人が一人入れそうな程の縦に長い四角い鉄製の箱だった。中に何が入っているのかは外からでは分からない。

 オルカは箱にノックをした。すると、中から何かが動く音がして、声が聞こえた。

「え? 誰?」

 その声には聞き覚えがあった。

「モニカ?」

 オルカは自信なさげに尋ねた。何故、自信が無かったのかというと、モニカの能力を知っていればこんな箱から出ることは容易いはずだ。頑丈な鉄製だという事を除けばそれ以外に特に何の変哲もない箱だ。それなのに何故、モニカは出られないのだろうか。

「そうだけど。もしかして、オルカお兄ちゃん?」

「うん、そうだよ。モニカはどうしてここに?」

「名前分からない男の人に負けちゃって。気が付いたらここにいたの」

「出られないの? 能力は?」

 オルカがそう尋ねるとモニカの返答に少し間があった。

「能力自体は無くなったわけじゃないみたいだけど、何かに封じられているみたいで全然使えそうにない、かも? お兄ちゃんは?」

 そう言われたオルカは首を傾げた。

「こっちは特に何もないけど。まぁ、とりあえず、そこから出る方法を考えよう。シャルルさん手伝ってよ」

 呼ばれたシャルルは鉄製の箱に近付く。縦に長いと言ってもそこまで高くないので長身のシャルルは箱を上から見た。

 箱の上部は鉄格子になっていて、そこからモニカの姿が確認できた。その姿と箱の中は変わった様子はない。

 シャルルは箱の上部に飛び乗った。

「こんばんは。モニカお嬢さん、私の手を掴んでいただけますか?」

 シャルルはそう言って手を差し伸べた。モニカは言われた通りその手を掴む。

「ありがとうございます。それでは目を閉じてください。そして、三つ数を数えます。三の時に引き上げます。それまで目を開けてはダメですよ」

 シャルルはそう言うとモニカの手を握ったまま数を数え始めた。三のタイミングでシャルルが勢いよくモニカの手を掴んでいた腕を引き上げると、モニカが鉄格子をすり抜けて箱から出てきた。シャルルはそのままモニカをお姫様抱っこをするように抱きかかえた。

「もう目を開けてもいいですよ」

 シャルルがそう言うとモニカはゆっくりと目を開け、辺りをキョロキョロと見渡した。

「体は痛くないですか?」

 シャルルは笑顔で問いかけた。モニカは何か恥ずかしそうに視線を逸らして「大丈夫です」と小さな声で答えた。

 シャルルはモニカを抱えたまま箱から飛び降りた。そして、モニカを降ろした。すると、それと同時にフロアの扉が開く音がした。皆はその方を見る。そして皆、同時に首を傾げた。

「お母様、一体何に乗られているのですか?」

 オルカにそう尋ねられたニアは優しく微笑んだ。

「これ? いいでしょう? さっき拾ったのよ。 ところで貴方達はここで何を? リーファは? リンクロッドは?」

「リーファさんならちゃんと私がお借りしていますよ」

 シャルルがそう言うとニアは興味が無さそうに「あら、そう」と答えた。そして、「リンクロッドは?」と再び尋ねた。

 オルカが答えづらそうにしていると、ニアは何かを察したように口を開いた。

「なるほど、分かりました。もう答えなくて大丈夫です。

 どういう事情があったのか分かりませんが、エルドルトに盾突き、剰え手をあげるなど到底許されるものではありませんね。彼の死を持って償っていただきましょう」

 ニアはそう言ってエキラドネから降りた。そして、彼女を立たせる。

「今度は何? 私に死ねとでも命令するの?」

「いえ、貴方は連れて帰ります。リンクロッドという執事を失いましたので、代わりが必要になりましたから」

 突拍子もない発言にその場にいた全員は間の抜けた声をあげた。

「何か問題でもありますか? それとも文句が?」

「い、いえ、何も問題ありません」

 オルカが慌ててそう言う。しかしエキラドネは不満そうだった。

「私は困るわ。それに私を連れて帰るなんて簡単なことじゃないと思うけど」

「貴方の能力ですか? 私にとってはたいしたものではありませんわ。むしろ無いに等しい。

 それとも貴方が危惧しているのは首輪に埋め込まれているGPSのことかしら? それも問題ないわ。どこか遠くに行ってもらうので」

 ニアがそう言うとエキラドネは首を傾げた。そして、何かを言おうとしたが、これ以上は無駄だと悟ったようで「分かったわ」と諦め気味に呟いた。

「決まりですね。それでは帰りましょう」

 ニアはそう言って踵を返し、フロアを後にしようとした。しかし、それをオルカが止めた。

「お母様! ベルゼと任務を忘れています!」

 オルカがそう言うとニアは口元を隠し微笑んだ。

「あらあら、私としたことがすっかり忘れてしまっていましたわ。 ニヒルとヴィクトリアでしたよね。その二人を殺すというのはかなり面倒ですね。というより、今の段階では不可能。ベルゼと連絡を取るのも面倒。それとここの施設の破壊もでしたね。

 ふぅ、少々骨が折れますが、一気に終わらせましょう」

 ニアはそう言うと怪しげな笑みを浮かべた。

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