046
あれから数日が経ち、野良犬達はようやく目を覚ました。体は椅子に縛り付けられ、首から下の身動きは一切取れない状態だ。部屋の中は薄暗く、嫌な雰囲気が漂っている。
「よう、やっと目が覚めたか。いくらお前らとは言えども、あそこまでボコボコにすれば回復するのに三日もかかるんだな」
嫌な雰囲気の元凶であるレグノは野良犬達の対面に座りながらそう言った。そして、話を続ける。
「さて、今回の件について処分を下すのだが、今回の作戦は誰が企てたんだ?」
レグノがそう尋ねるが誰も名乗り出ようとはしない。
「まぁ、当然の反応だな。誰よりもきつい罰を受けるのは目に見えてるからな。
よし、それなら取引をしよう。作戦を企てた奴が名乗り出れば、今後は任務の時以外は自由に行動してもいい。どこに住もうが何をしようがお前らの勝手だ」
「そんな戯言誰が信じるんだ?」
アブソーバーは今にも噛みつきそうな勢いでそう言った。
「お前らの気持ちも分かるよ、今までされてきたことを考えればな。だが、これはカオス様の提案だ」
「な、なぜ、カオス様は急にそんなメリットのない取引を私たちに?」
ヴィクトリアは怯えた口調で尋ねる。
「さぁな、カオス様がそれでいいと仰っているなら、それでいいんだろうよ。
さて、本題に戻ろうか。誰がこの作戦を企てたんだ?」
少しの沈黙があった後、トルクが口を開いた。
「…わ、私が今回の件の首謀者です」
トルクの声は震えていた。その横でニヒルは唇を噛みしめている。何故なら、今回の件はトルクでは無くニヒルが企てたことだからだ。トルクの性格上、自分が名乗り出ることを分かっていたのだ。自分は罰を受けたくない、自由になりたい、そういった自己中心的な理由で優しいトルクを差し出すことになった自分を恥じた。
「それは本当か?」
「はい、本当です」
トルクがそう言うと一瞬だけレグノの口角が上がった。そして、すぐさま表情を戻し、続ける。
「そうか、ならば罰を与えるのはお前だけでいい。トルクが罰を受けて、帰ってくれば後は皆、晴れて自由の身だ。
しばらくそこで待機しておくように」
レグノはそう言うとトルクを引き連れて部屋を後にした。