042
その日の晩、首輪の野良犬達は宛がわれた部屋で話し合いをしていた。
「ねぇ、本当にここで別れるの?」
トルクは心配そうな顔でアブソーバーに尋ねた。
「だから、初めからそうやって言っているだろ。俺はここまでだって。明日の朝にはここを出る」
アブソーバーはそっぽを向きながら、少し怒り気味でそう言った。
「そっか、寂しくなるね。
他の皆はどうするの?」
「私はアブソーバーに付いていくわ。このアホを一人きりにすると何をしでかすのか分からないもの」
エキラドネは抑揚のない言葉でそう言った。するとアブソーバーは舌打ちをした。それを見てトルクは少し笑った。
「他は?」
「私はしばらくトルクに付いていくわ。そして、世界を見て回るの。その中で自分のやりたいことが見つかったらそこでお別れ」
ニヒルがそう言うと皆も同じ考えの様で頷いた。
「そっか。じゃあ、ここでお別れするのはアブソーバーとエキラドネだけね。
私たちは離れていても兄妹よ。きっとまたいつか会える日が来るはず。その時は笑顔でお祝いしましょうね」
「はっ、その面を見るのは二度とごめんだね」
アブソーバーはそう言うと立ち上がり、ベッドまで行くと横になった。そして、すぐ寝息を立てた。
トルクは少しため息をつくと、皆に「寝ようか」と言って部屋の電気を消した。