039
「素晴らしい。実に素晴らしいよ」
カオスはモニターに映されている首輪の野良犬達を見てそう呟いた。すると、丁度そのタイミングで戻って来たレグノはカオスに「どうされましたか?」と尋ねた。
「彼らだよ。あんなに非道な実験をして完全に心を折ったつもりだったのだが、まだこの子らは希望を捨ててはいないようだ。今この時も逃げ出すことを考えているみたいだよ」
「それはいけませんね。今すぐ阻止してきます」
レグノが野良犬達の元へ向かおうとすると、それをカオスが止めた。
「いや、そのままにしておけ」
「何故でしょうか? やすやすと逃がしてしまえば、せっかくの戦力が下がります」
「大丈夫。彼らは帰って来るさ。これは私の予想だが、今回のこの逃走でニヒルの力が完全なものになるはずだ」
「確かに、ニヒルの能力にはムラがありますが、本当に安定するのでしょうか?」
「間違いないさ。彼女に足りないのは危機感だよ。ここに初めて来たときも、他の子と比べて圧倒的に危機感が足りていなかった。しかし、今回追われる立場になればその危機感も養われるだろうさ。
それと、邪魔な犬を消す絶好のチャンスだよ」
「カオス様がそう仰るのならば、そうしましょう」
レグノはそう言ってカオスの所を後にした。