037
ブラスフェミー本部。そこに車椅子に座った老人とレグノが円柱の水槽の中にはいった少女を眺めていた。
「カオス様、首輪の野良犬が帰還しました」
「…そうか、それで彼らは何の問題もないのか?」
車椅子に乗った老人はレグノにそう尋ねる。
「えぇ、トルクレイトがリーダー役となり、不安定な時期の彼らを引っ張ってくれています」
「どれ程のデータが集まっている?」
「カオス様が若返るにはもう少し必要かと」
「やはり、エルドルト家を逃がしたのは痛かったな。
奴らの足取りは掴めたのか?」
「それが、全くと言っていい程。まぁ、きっと執念深い奴らですから、いずれ仕返しに来るはずです」
「それは絶対か?」
「…えぇ、必ず来ますよ。何せ奴らは私と同じで死にませんからね。それでいて、執念深い」
「まぁ、気長に待つとしよう。どうせ私もお前らと同じように死ぬことがなくなるのだから。次に彼らを捉えることが出来たなら、アリスの復活も目の前になるだろう」
カオスはそう言うと水槽にそっと手を触れた。
「それでは私は彼らの訓練があるので失礼します」
レグノは深々と頭を下げて、その場を去ろうとするとカオスがそれを呼び止めた。
「待て、今回の野良犬の活躍は大変いいものであった。いくら変わりがいるとは言え、褒美ぐらいくれてやってもいいだろう」
「褒美ですか? 何をやりましょう」
「休暇だ?」
「は? 休暇ですか?」
カオスの言葉に思わず間の抜けた声が出た。
「あぁ、そうだ。兵器だとしても彼らは元々人間だ。流石に休みの一つや二つをくれてやらんとな。
…そうだな。一週間、一週間だ。彼らに休みをあげてくれ」
「はぁ、分かりました。
それでは失礼します」
レグノは再びそう言うと部屋を後にした。