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「さて、着きましたね。
それでは、行きましょう」
第六支部に着いたニアはそう言って敷地内に入ろうとした。しかし、それをリーファは止める。
「ちょ、ちょっとお待ちください!
白昼堂々、正面から入るんですか?」
「当たり前じゃありませんか。
この私が何故、裏口から入らないといけませんの? こういう敵は正面から堂々と潰すから面白いんですよ」
ニアはそう言うとニコリと笑い敷地内に足を踏み入れた。リーファはため息をついてニアの後に続いた。
「こんにちは。私の息子はいるかしら?」
「は? あなたは一体誰ですか? 何しにここへ?」
「もう一度、聞きますが、息子はいるかしら?」
「息子? お名前をいいですか?」
「はぁ、埒が明きませんね。もういいです。
入らせていただきますね」
「ちょ、ちょっと、勝手に入られては困ります!」
受付に居た人はニアを止めようとしたが、途中でそれを止めてしまった。それは、ニアの威圧感に押されたからとかではなく、何事もなかったかのように手を止めたのだ。
「ニア様。あれじゃ、伝わらないですよ。
きっと、他の人にはオルカ様が来ていたのかどうかすら分かっていないと思いますが」
「あら、そうですかね?
それなら、虱潰しに聞いて回ればいいと思いませんか?」
「そんなことをしていれば途方もない時間がかかりますよ」
「それもまた一興ですよ。どうせ時間なんて腐る程ありますから」
ニアはそう言って足を進めた。リーファはこれ以上言うのは無駄だと分かっているので、黙ってそれについていく。
ニアは出会う人々にオルカのことについて尋ねた。尋ねられた人々はニアがいることを不思議に思うことなく質問に答えた。
しばらく足を進めると、オルカがヴィクトリアと出会った部屋の前で足を止めた。
「あら、ここは他の部屋と比べるとだいぶ雰囲気が違いますね。異質を放っているというか。浮いているというか。
研究所員の仮眠室か何かなのでしょうか?」
ニアは興味が引かれたそのままその部屋の扉を開いた。
中にいたヴィクトリアは驚いた声をあげた。
「あ、あなた誰? 今日は誰とも会う予定はないはずですが」
「あら、可愛らしい子ね。
まるで、檻に閉じ込められている小鳥のような、そんな感じ。
ところで、あなた、ここにオルカは来なかったかしら?」
「オルカと言うのはオルカ・エルドルトのことでしょうか?」
「やっと、事情を知っている人に出会えたわ。
…さて、洗いざらい話していただきましょうか」
ニアはそう言うとニコリと笑った。