022
「モニカちゃんね。名前もお顔も可愛いのね」
ルナはそう言ってモニカの顔をジッと見つめている。モニカは恥ずかしそうに下を向いて手をモジモジとさせている。
「あ、あの、私、お家に帰らないといけないの」
ランディに頼んできた時とは違い、バツが悪そうな、消え入りそうな声でそう言った。
「うん、それはランディから聞いたわ。だけどね、モニカちゃん。その触れない体について教えてもらわないとランディも怖くて、モニカちゃんを連れて帰れないわ」
モニカは自分の触れられない体について知られたことと、ランディが裏切って自分をこの人に売ろうとしているんだと思い、ここから逃げ出そうと立ち上がった。
すると、その瞬間、ルナのスマホが鳴った。モニカは金縛りにあったかのように動けなくなった。
「はい、こちらルナ・フェルミレールです。
えっ、今からですか? まぁ、可能ですが、あまり乗り気ではありませんよね。明日も休みの予定でしたから。
大丈夫です。行きますよ。はい、それでは後ほど」
ルナはそう言うと通話を終了させ、ため息をついた。
「ごめんなさい。急に仕事が入ったわ。
それじゃ、またね、モニカちゃん」
ルナはそう言うと壁にかかっている白衣を手に取り家から出た。
「…モニカちゃん、ごめんね。気を悪くさせたみたいで。
俺らも帰ろうか」
ランディがそう言うとモニカは小さく頷いた。
ルナの家を出て、休憩を挟みつつ車を走らせること三時間。二人はとうとう目的であったハイネルに到着した。
「モニカちゃん、お家はハイネルのどの辺なんだ?」
「まだずっと先だよ。ハイネルを過ぎていったら森になるからそこで降ろして」
「森? まぁ、分かったよ」
再び車を走らせ、とうとう念願の目的地へと到着した。
二人は車から降りて体を伸ばした。すると、モニカが口を開いた。
「ランディさん、ちょっと待っていてね。すぐ戻るから!」
モニカはそう言うとランディが何かを言う前に森の中に消えた。
それから十五分ほどしてモニカは綺麗な女性と執事服姿の男を引き連れて戻って来た。
ランディの元に辿り着くと綺麗な女性が口を開いた。
「これはこれは、うちの娘が大変お世話になりました。少ないですが、これはお礼です。是非、受け取ってください」
女性がそう言うと執事服姿の音がジュラルミンケースを差し出した。
「えっ? これは?」
ランディが困惑していると女性はニコリと笑った。
「ほんの気持ちです。
…あと、それと、ここで見たこと、娘とのことは一切合切忘れてください。これは命令です」
「は?」
ランディはそう言うといきなり激しい頭痛に襲われた。
「ごめんなさい。こうするしかないんです」
その言葉を最後にランディは気を失った。
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「はっ! ここは?」
ランディはハイネルの街中で意識を取り戻した。
「いって、頭が痛い。
あれ? 俺はなんでハイネルなんかにいるんだ?」
ランディはそう言って車の中を見渡す。そして、助手席に置いてあったジュラルミンケースに目がいった。
「あぁ、そうだった。金を貰いにきたんだっけ。
よし、約束の物も貰ったから帰るかぁ」
ランディはそう言うと車を走らせた。