012
ブラスフェミー第十五支部襲撃から一週間と六日が過ぎた。エルドルト邸ではオルカとモニカが明日の第六支部襲撃に向けて準備をしていた。
「…よし、準備オッケーかな。
モニカは終わった?」
「うん! モニカも準備終わったよ!
もう出発するの?」
モニカはニコニコしながらそう言った。
「そうだね。そろそろ出発しようかな。十九時頃には向こうに到着しておきたいから」
「ふーん、じゃあ、お母さん達に行ってきますって言ってくるね!」
そう言ってモニカは走り出した。
「早くしろよー!」
「分かってるー!」
オルカは行く先を心配してため息をついた。すると、いつの間にか後ろにいたリンクロッドが話しかけてきた。
「オルカ様。如何なさいました?」
オルカは何も言わずにリンクロッドの顔を見た。リンクロッドは何かを察したようにニコリと笑った。
「モニカ様のことでお悩みですか?」
「流石だね。
そうなんだよねー、いつあのイタズラ好きにスイッチが入るかと思うと、すでに先が思いやられるよ。
そう言えばリンクロッドはモニカの扱い上手だけど、何かコツでもあるの?」
「ん~、そうですね。私はいつもモニカ様とご一緒させていただく時には、モニカ様のことを自然災害だと思っています」
「はぁ? どういうこと?」
「いつ来るのか分からない。でもいつ来てもおかしくない。モニカ様のイタズラは自然災害と似ています。
だから、いつ来ても最善の策が取れるように心掛けていますし、それなりの準備も少々。とは言っても防ぎきれない事の方が多いのですけどね」
リンクロッドは苦笑を浮かべながら言った。オルカは少し納得した様子で「なるほどね」と小さく呟いた。
二人がそんな会話をしていると、モニカが戻ってきた。
「お待たせー!
あれ? リンクロッド? 何してるの?」
「オルカ様と少々お話をしていたのですよ。
もう出発されるのですか?」
「うん! 行ってくるね! バイバーイ!」
モニカはそう言って先に屋敷を出た。オルカはため息をついてモニカの後を追った。




