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50 謎の占い師

 俺たちは今、建物と建物の間をすり抜け、正に裏道といった細い路地を歩いている。



「サクセス様……あの辺りで止まってます。」



 イーゼは、小声で俺に耳打ちをする。



「ちょっ!」



 その際に、わざと俺の耳に息を吹きかけるセクハラは欠かさない。

 俺はうっかり声を出してしまった。


 そして俺の目の前には、小さな机に水晶玉を置き、正に占い師といった感じの褐色肌の女性が座っている。

 黄色いフードを被っている事から、顔はよく見えないが多分女だ。


 俺が声を上げた事で、その占い師は俺に気づいた。


 どうやら逃げる気はないらしい。

 俺は、ゆっくりとそいつに近づこうとした瞬間……。



「あいつね……!」



と言う声と共に、リーチュンが飛び出した。



 バン!



 リーチュンは、机を思いっきり両手で叩くと問い詰める。



「アンタなんのつもりよ! 返しなさいよ、私の財布! 今なら一発殴るだけで許してあげるわ!」



 しかし、その女はリーチュンの凄い剣幕にも全く動じずに、俺の事をじっと見ていた。


 なんで俺を見てるんだろ?



「ちょっと! アンタ聞いてるの? こっち見なさいよ!」



 するとやっと気づいたかのように、リーチュンの方へ顔を向けた。



「……あなた達は? 何者ですか?」


「こっちが聞きたいわよ! 白々しいわね! さっさと出しなさいよ! アタイの財布!」


「……財布?」


「とぼけないで! こっちはちゃんとわかってるんだから!」



 うーん、なんかさっき見た泥棒とフォルムが違うような……。

 しかし、こんなところで占いやって儲かるのかな?


 俺は全然違う事を考えていた。


 すると、その女は何も言い返さずに、水晶玉に手をかざして目を瞑り始める。



「なるほど、そういうことでしたか。あなたが探しているのは私ではありません。むしろもう、捕まえていますね。」



 その女は、右側を指差してそう言った。


 俺は、その女が指した方を見ると驚く。

 いつの間にかイーゼとゲロゲロが犯人と同じ格好をした奴を捕縛していたのだ。

 どうやらリーチュンは早とちりしたらしい……がまだ気づいていない。



「そうね、今、正に、ここで、アタイが捕まえてるわ!」


「リーチュン! その人は違うぞ! 犯人は既にイーゼとゲロゲロが捕まえている!」



 俺は、流石にやばいと思ってリーチュンの肩を掴んで伝えた。

 すると、やっとリーチュンはその占い師が指差す方に顔を向けると、やっと気付く。


 リーチュンの顔からサッと血の気が引いていく。



「ご、ご、ご、ごめんなさい! アタイのこと殴っていいわ!」



 リーチュンは流石にまずい事をしてしまったのに気づき、勢いよく頭を下げて謝罪した。



「それは、別に構いません。それよりも、そこのあなた。もう少し近くに来てもらえませんか?」


「へ? 俺?」


「そうです、あなたです。ちょっと遠くだとボヤけててよく見えないのです。」



 どういう事だ?

 ボヤけてる?

 言ってる事はわからない……。


 ただ一つ言えるのは……

 俺は18禁じゃないぞ!

 モザイク加工なんてされてないぞ!


 と内心突っ込みつつも俺はその女に近づいた。

 するといきなり、俺の頬を両手で挟んで俺の目をじっと見てくる。


 ドキドキ……。

 そんな見つめないで……

 恥ずかしいわ……



「……違いますね。どうやら、私の勘違いのようです。それに私が探しているのは、女性のはず……失礼しました。」



 違うんかい!

 って何がやねん!


 その女は一人で何かを納得している。



「あの、そろそろサクセスさんを離してあげてくれませんか? 後、あなたはサクセスさんの知り合いなのですか?」


「これは失礼しました。私の名前はマネアと申します。妹のミーニャと一緒に、とある方を探して旅をしているのです。そこの……サクセスさん? とは初めて会いました。」


「ん? さっき探しているのは女性って言ってなかったか?」


「はい、しかしあなたを見た瞬間に何かを感じたのです。大きな光をあなたから感じました。それなので、確かめただけです。あなたからは大きな力を感じる、そして今後、あなたは邪悪な存在によって危険に晒されるでしょう。」



 怖っ!

 何いきなり不吉なこと言っちゃってんよ?

 俺そういうのは信じちゃう系よ?


 それに、さっきから感じる感じるって……。

 やめて欲しい、公衆の面前で卑猥な言動をするのは。

 ちょっと俺も感じちゃったよ!



「はっ! 今、あなたから邪悪な何かを感じました!」



 エスパーか!



「き、気のせいだろ。まぁとりあえず仲間が勘違いして申し訳なかった。早く探している人が見つかるといいな。でもこんなところじゃ多分見つからないと思うぞ。」


「いいえ、今日はこれで良かったのです。私の占いに、今日この場所で大切な何かと出会うと出ていましたので。お陰で色々とわかりました。最後に一つだけ助言をさせていただきます。今捕まえた泥棒を助けるか助けないかで、今後の未来が大きく変わるでしょう。それでは、またいつかどこかで。」



 そう言うと、マネアは机を片付けてその場から立ち去った。


 不思議な女だったな。

 タイプは違うけど、結構可愛かった。

 おっと、つい、いつもの癖で。

 とりあえず俺のオカズファイルにだけは、メモしておこう。



「それで、サクセスさん。あの人どうしますか?」



 シロマは、眠らされている泥棒を指して俺に聞いてきた。



「まぁとりあえず金は返してもらうとして、どうすっかなぁ。ここじゃあれだから縛って、宿屋に連れて行くか。」


「サクセス様、ちょっと来てください。」


「ん? どうした?」


「この泥棒……まだ小さな女の子ですわ。」



 イーゼは、泥棒の顔を隠していたフードを取ると、その顔を見せた。



「これは……まだ10歳かそこらじゃないか。なんでこんな子供が……。」



 俺は驚いた。

 あれだけ用意周到に泥棒をしでかした奴が、まさかの幼女!?


 マネアが最後に言った言葉を思い出す。

 つまり、そうか。

 こいつを助けるか、助けないかってことか。

 多分助けるっていうのは、許すって事ではなくもっと深い意味があるのだろう。



「こんな子供に犯罪させるなんて、親をぶっ飛ばしてやるわ!」



 さっきまで、自分の失敗に呆然としていたリーチュンが復活する。


 

「リーチュン、俺は、お前のその、なんつうか純粋なところは好きだ。でもな、前からみんなにも言われてるが、いきなり感情だけで行動しないでくれ。今回だってマネアが許してくれたからよかったものの、一つ間違えれば大変な事になってたぞ。」


「ごめんなさい! 反省するわ。」


 リーチュンは俺の注意を素直に受け止めて、謝罪する。

 こういう素直なところは本当に好感が持てるんだけど、直情的な性格はどうにかして欲しいところである。


 まぁ、いきなり変えるのは難しいだろう……長い目で見てあげないとな。

 何かあれば、いつでも俺は頭を下げるぜ!



「すまない、みんな。とりあえず早急に宿屋を見つけよう。そして色々この子から聞かなきゃならない。」



 俺がそう言うと全員頷き、そして近場の宿屋に入ることに決める。

 その宿は、とりあえずそこまで豪華ではなかったが、お風呂があったのでホッとするのだった。

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