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114 渦巻く闇の力

 周囲に散らばった黒い大気が集まっているその場所。

 その中央には大きく渦巻く漆黒の何かが、周囲の生命力を奪い取りながら肥大しつつある。


 それこそがウロボロス……いや、ウロボロスを構成する何かであった。


 俺達はその場所から概ね1km位離れたところに陣地を張って待機しているのだが、ここからだとその様子が良く見える。


 卑弥呼が説明した通り、俺が魔法を放ったことでその実体を消滅させたウロボロスであったが、今では元々あった山の4分の1位の大きさまで膨れ上がっていた。


 3時間もすれば復活するだろうと言っていたが、どうやら間違いではないらしい。


 そして復活するのには周囲の生命力を必要としているらしく、付近の草木は一気に枯れ果て、虫や小動物等もその命を奪われている。


 当然俺達にもその影響はあるのだが、卑弥呼が掛けた呪いによって大幅に軽減されている上、今はライトプリズンが守ってくれているので不調を訴える者はいない。


 そんな俺達が何をしているかというと……ただ待っているだけだ。


 別にウロボロスの復活を待っている訳ではない。卑弥呼の呪術が終わるのを待っている。


 この場所に着いてから卑弥呼が瞑想をし始め、何らかの呪術を行使し始めた。


 それが何なのか?

 俺達は何をすればいいのか?


 それらは未だ全くわからないが、卑弥呼からはただ待つように言われている。

 その為俺達にできる事はただ待つ事しかできなかった。


 目の前で大きく膨れる邪悪な塊を見れば焦る気持ちも湧き出てくるが、ここは我慢。


 そんな中、この場所に到着して30分が経過した。



ーーすると、卑弥呼の目がゆっくりと開く。



「サクセス殿。準備が整ったですじゃ。」


「おぉ! よくわかんないけど、よくやった。んで、俺達はどうすればいい?」


「サクセス殿達は、今しばらくこの場所で待機ですじゃ。」


「えっ?」



 準備が整ったといいながら、待機する?

 いい加減説明してほしいぞ。



「なぁ、卑弥呼さんよ。そろそろ少しは教えてくれてもいいんじゃないか?」



 俺が言おうとした事をカリーが先に質問する。



「ふむ。それもそうじゃのう……。ではお主にだけは伝えるかのう。」



 そう言いながらカリーに近づく卑弥呼。



「全員には言えないのか? それなら俺じゃなくてサクセスの方がいい。」


「ダメじゃ。サクセス殿には大事な役目がある故、今から話す事はお主だけじゃ。」



 どうやら俺には話せない事らしい。

 実際俺は頭が悪いので詳しい作戦を伝えるなら俺よりカリーの方が適任ではある。

 とはいえ……少しだけ嫌な感じだな。



「俺は大丈夫。カリーが聞いてくれ。みんなには話せない内容みたいだしな。」


「……そうか。わかった。お前がそう言うなら俺は特に異論はない。」



 カリーがそう答えると、卑弥呼と二人で少し離れた場所に行って話し始めた。



「待たせたな。サクセス、大した話じゃなかったぜ。まぁとりあえず簡単に説明すると、これから卑弥呼は一人であの渦の所に向かう。そこで大規模な魔法……いや呪いか? まぁいい。それを使うから、それまで俺達は待機だ。」



 あっさりと聞いた内容を話すカリー。

 そしてそれについて卑弥呼は何も言わない。

 

 だったら最初からみんなに話せばいいのに……。



「そうですじゃ。その後の事はカリー殿に話してあるので、それに従って欲しいのじゃ。それと最後にセイメイ。こっちに来るのじゃ。」


「はい! 卑弥呼様!」



 卑弥呼に呼ばれたセイメイは素早く卑弥呼の傍へ駆け寄った。



「これをそなたに授ける。良いか? 決して誰かに渡したり、失くしたらいかぬぞ。」



 卑弥呼は頭に装備していた金の冠を外すと、それをセイメイに渡す。



「こ、これは!? いけませぬ! これは代々卑弥呼様の……」



 それを見たセイメイは驚きの余り、受け取ろうとした手を引っ込めた。



「だからこそじゃ。ワシはこれから大規模な呪いを展開する。その影響でそれが失われるような事はあってはならぬのじゃ。だからこそ、セイメイ。そなたに持っていてもらいたいのじゃ。」



 セイメイはその言葉聞いて尚少しだけ迷いを見せるが、再び手を差し出してそれを受け取る。

 


「……卑弥呼様。わかりました、それでは卑弥呼様がお戻りになるまでの間。このセイメイが大切に預からせていただきます。」



 俺にはわからないが、セイメイが受け取った物はよっぽど貴重な物らしい。

 装備を受け取るだけで、セイメイはかなり緊張している。

 国宝か何かかな? まぁ俺には関係がない話だ。



「それじゃサクセス、俺達は待機だ。動くときは俺が合図する。」


「あぁ、わかった。卑弥呼、無理はするなよ?」


「ふぉっふぉっふぉ。この歳になってもそんな優しい言葉を掛けられるとはのう。安心せい、ババァにできる事などたかが知れているのじゃ。だから後は任せるぞい。」



 こうして俺達は、ライトプリズンから出ていく卑弥呼を見送りながら待つ事にするのであった。


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