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111 最大出力

「さてと、ここら辺でいいだろ。まずは俺が一発ぶちかます。それでだめならまた考えるか。」


「あぁ、できるなら一発で決めてくれよ。サクセス。」



 俺達を乗せたゲロゲロは、ウロボロスから1キロ程離れた場所に降りた。


 今回はこれまでとは比べ物にならない程巨大な敵。


 これまで


  リヴァイアサン、災禍の渦潮、巨大魔獣、マグマ将軍


等の超大型の敵と戦ってきたが、これはケタが違う。いや、違い過ぎる。


 敵は邪魔大国で一番大きな山より巨大なんだ、人がどうにかできるレベルではない。


 しかしながら、でかいだけなら俺の範囲攻撃は超有効。


 ということで、一発お見舞いしちゃうぜ!



 今俺の剣先にはかつてないほどの魔力が集約している。


 それはここに到着するまで溜め溜めた俺の魔力だ。


 正直、今までここまで本気で魔力を溜めた事がないので、これを解放させた時どうなるかわからない。

 今までの力を考えれば、最低でも周囲の地形は変わってしまうだろう。

 だが、大陸が滅ぼされるかもしれない相手なんだから遠慮はいらない……よね?



「いくぜ!! 最大出力……【スターフォール】」



 俺は上空に剣を掲げると、ため込んだ魔力の全てを放出した。


 すると、空が急に暗くなる。まるで太陽が何かに隠されるように……。


 そう。実際太陽は隠れてしまっていたのだ。


 無数に舞い落ちる巨大な流星によって……。



 俺が使ったスターフォールは、やはり災禍の渦潮の時よりも数段威力が増していた。

 実際威力と表現していいのかはわからないが、流星一つ一つの大きさが以前より10倍位大きい。

 その上、流星の数も同じく10倍程だ。


 以前よりステータスが高いというのもあるだろうが、やはり込める魔力を溜めたのがでかいのだろう。

 冗談抜きで、鼻血が出るほど溜めたからな。

 そしてそれを放った瞬間の脱力感が半端ない。

 どうやら俺の精神力の殆どをつぎ込んでしまったようだ。



 あ~頭がグワングワンする。くそ痛ぇぇ。

 なんだよこれ……まともに立ってられないぞ……。

 そうか、これが精神力が枯渇するって事か。



「大丈夫かサクセス! これを飲め!」



 今にも倒れそうな俺を見て、カリーが何かを渡してきた。

 渡されたものを確認する余裕すらない俺は、それをやっとのことで口元に持っていくと喉の奥に流し込む。


 すると、それは一気に体全体にシミわたっていき、体の奥がドンドン熱くなっていった。


 さっきまでの頭痛が嘘みたいに引いていくのを感じる。

 

 効果もそうだが、これはなんという旨さなんだろうか。

 乾ききった喉で水を飲んだ時の様に、全身が喜びの悲鳴をあげている。


 うまい……うますぎる!


 それにこの飲んだ後のスッキリした後味よ。

 柑橘系の香が鼻をくすぐり……



ーーすっきりさわやかぁぁぁぁ!



「うおぉぉぉ! 回復したぁぁ! ってまさかこれ……お嬢様聖水!?」



 そこで初めてカリーに渡された物が何かに気付いた。

 これは……あの……魅惑の聖水だ。



「おぉ、スゲェ効果だな。さっきまでの死人顔がもう戻ってら。でもまだ完全回復ではないだろ? もう一本いっとくか?」


「え? いいの? ってそれより、そろそろアレが着弾する。もしこれで倒せなかったら、飲ませてもらうわ。……今度は味わいながら……。」


「それにしても、ありゃやばいな。世界亡ぶぞ。」



 カリーは上空から落ちてくる流星を眺めながら呟く。

 確かにあれを使えば、殆どの国を一撃で落とせるだろうな。

 絶対そんなことしないけど。



 そんな会話をしていると、遂に空から降り注いだ流星群がウロボロスに着弾した。


 火山が噴火した時よりも激しい衝突音が辺りに鳴り響く。

 

 その光景は言葉にできない程凄まじいものだった。


 まさか自分の魔法がここまでの威力だとは俺自身も驚きである。


 流星群は、あのとてつもなくデカいウロボロスを火山ごと吹き飛ばしてしまったのだ。

 

 あまりの威力にその衝撃波がここまで飛んでくる。



「全員伏せろ! シロマは俺に掴まれ!」


「はい!」



 そう言っておきながら、シロマに覆いかぶさるように抱き着いたのは俺の方だった。


 でも言い訳させてほしい。


 マジで偶然なんだ。


 シロマは返事した瞬間に吹き飛ばされて、俺の胸に飛び込んできた。


 そして俺はシロマを抱き寄せながら地に伏せる。


 だから事故なんだよ。


 息子が大きくなってしまったのも、硬質化したのも、きっとさっきの聖水のせい。

 それを太ももに押し付けてグリグリしてしまったのも事故なんだ……。



「こんな時に何を考えているんですか!?」


「い、いや、これは事故だっぺよ。」


「じゃあなんでずっと押し付けているんですか?」


「シ、シロマが飛ばされないように力を入れているだけだっぺ……。」



 そんなやり取りをやっていると、目の前で誰かがスッと立ち上がる。


 どうやらもう衝撃はこないようだ。



「サクセス。遊んでないで見てみろ。……お前の勝ちだ。」



 カリーにそう言われた事で俺達も立ち上がる。

 そして俺の息子も反りあがる。



「えぇぇぇ……すっご! あそこだよな? 火山があったの?」


「あぁ、間違いねぇ。サクセス、お前やっぱおかしいぜ。あれだけのものが完全に消滅して、クレーターになってるぞ……。まじでサクセスなら世界滅ぼせるかもな。」


「師匠……本当にやったでござるか? 某は……某は……。」



 呆気にとられるカリーの隣では突然イモコが涙を流し始めた。


 戦えなかったのが残念だったのかな?

 まぁなんにせよ、一瞬で終わったわウロボロス戦。



「よし。とりあえず一度みんなのところ戻ろう。オーブの事も相談したいしな。」



 こうして俺達は仲間のところに無事帰還する事となった。


 だがこの時はまだ、俺達はウロボロスの本当の恐怖に気付いていなかった……。





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