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82 最終会議 後編

「流石大野将軍でごじゃる。その通りでごじゃる。僕チンはそもそも、妲己が先か火山が先か等考えていないでごじゃる。その両方を同時に行うのが最善と考えていたでごじゃる。」



 ハンゾウの口から出た言葉は、驚くべき言葉だった。まさか同時進行。イモコはそれに気づいていたみたいだが、多分俺を含めて他のメンバーは全くわかっていない。なぜ同時にやるのかも、そもそもどうやってやるのかもだ。



「やはりそうでござったか。ハンゾウよ、回りくどい事は言わず、最初からわかりやすく説明するでござる。」


「わかったでごじゃる。では簡潔に説明するでごじゃるよ。まず城にいる妲己を倒すのは不可能。よって火山に向かう事を第一優先にすると同時に、卑弥呼様が火山に向かったと妲己に伝えるでごじゃる。そうなれば、間違いなく妲己は自ら火山に行くでごじゃる。そして火山で封印を施すのと同時に妲己を倒すでごじゃる。これでいいでごじゃるか? 大野将軍」


「うむ」



 なんかサラっと説明していたが、まだ詳しいところがわからない。「うむ」とか言っているイモコだけは理解しているみたいだが……あれ? わかってないの、もしかして俺だけ?


 

 そう疑問に思っていると、再度隣にいるセイメイから怒号が飛び交った。



「待ちなさい! あなたは卑弥呼様を囮に使うつもりですか!? そんな事は私が絶対に許しません!」



 どうやらセイメイは全てを理解した上でキレているらしい。俺にも卑弥呼を囮にするという事だけはわかった。当然卑弥呼信者のセイメイはキレるわな。


 そしてハンゾウは黙ってセイメイを見据えると、落ち着いた声で言葉を返す。



「しかし、これしか方法は無いでごじゃる。それともセイメイ殿は他に良い案があるでごじゃるか? 妲己がウロボロス復活の為に卑弥呼様を探しているのは明白。逆にそれ以外で妲己本体が動くことはないでごじゃるよ。」


「少し考えさせてください。何かあるはずです……例えばあなたの影が卑弥呼様に化けるなど……」


「それは可能でごじゃるな。しかし、卑弥呼様はあなたに言ったはずでごじゃる。火山に向かう時は必ず自分を連れていくようにと。違うでごじゃるか?」



 これは図星だった。故にセイメイを何も言い返す事が出来ず悔しそうに口を閉じている。


 実際俺も卑弥呼と話していた時にそれを卑弥呼の口から聞いていた。



 ウロボロスの再封印の為に必ず自分が行く必要があると。



 なぜそれをハンゾウが知っているかはわからないが……。どちらにせよオーブの代わりが見つかっていない今、まだその時ではないはず……。と言う事で聞いてみるか。



「一ついいか? その話の前提として、再封印を施すアイテムが必要だと思うんだが。それがない内に火山に行ってもしかたないだろう? そこまでわかってるなら答えられるはずだ」


「その通りでごじゃる。しかし、アイテムはここにあるでごじゃる。」



 なんとハンゾウは俺の質問に即答すると、真っ白い玉を取り出した。



「それは?」


「封魔石でごじゃる。今妲己が必死になって色んな国に持って行っている玉でごじゃるよ。」



 ん? それってつまり、皮肥の時のような事を引き起こすためにしているやつの事か?

 でもあれとは色が違うな。あれはもっと禍々しくて黒い玉だ。


「おかしくないか? シルクがサイトウから渡された玉は黒かったはずだよな?」


「その通りでがんす。封魔石という名は初めて聞くでがすが、サイトウが渡してきたのは黒い玉でがんす。」



 しかし、その説明についてもハンゾウは口にする。



「この封魔石は邪気を吸収すると黒くなるでごじゃる。サイトウが持っていった封魔石は暴発させる目的で、最初からある程度邪気を溜めていたものでごじゃるよ。そしてその邪気が溜まった封魔石を使って、妲己はウロボロスの復活を早めていたでごじゃる。ようはその実験でごじゃるな。」



 その言葉を聞いてシルクから怒りのオーラを感じた。それはハンゾウに対してのものではないとわかるが、それでも自分の国……そして孫の命が実験に使われたと聞いて平静ではいられなくなったのだろう。だがシルクは大人なのでその怒りを口にする事はなかった。そしてハンゾウは説明を続ける。



「実際その下尾が壊滅したのを聞いて、妲己はその玉を各国に運び始めているでごじゃる。とはいえ、今度は貯めた邪気は解放せずにウロボロスの封印を解くのに使うつもりだったでごじゃる。既にいくつかはサイトウが火山に運び入れていて、その結果封印が弱まっているでごじゃるよ。」



 そういえば卑弥呼も言っていたな。封印が弱まっていると。つまりそれも妲己の仕業か。だけどそれだと別に卑弥呼がいなくても封印を解けるんじゃないか? なぜ卑弥呼を探しているんだ。



「なぁ、話の腰を折って悪いが、その話が本当なら卑弥呼に囮の価値はそれほどないんじゃないか? だって封印を早める事ができるんだろ?」


「そうでごじゃる。しかし妲己はウロボロスを操る為に卑弥呼様を核として生贄にするつもりでごじゃるよ。サイトウの記憶からそれがわかったでごじゃる。」



 それを聞いたセイメイは顔を真っ青にする。妲己が卑弥呼を探していた理由がまさかウロボロスの生贄にするとは思っていなかったようだ。この分だと最後まで話を聞くまでもなくセイメイは反対するだろうな。



「そう言う事だったか……なるほどな。でだ、その封魔石が危険な物というのはわかったが、なんでそんなやばいもんがオーブの代わりになるっていうんだ? 矛盾していないか?」



 セイメイが俯いて黙っているので、俺が代わりに質問をする。



「いい質問でごじゃる。そもそも封魔石は邪気を封印する特殊な玉でごじゃる。玉に印を組めば吸収した邪気を閉じ込めることができるでごじゃる。つまりウロボロスが放つ邪気を吸収し、封印を延命できるでごじゃる。オーブの代わりになる核として使う印を組んだ封魔石と、邪気を吸収する封魔石を設置する事で半永久的にウロボロスを封印できるでごじゃる。」


「印を組むとかわからないけど、それなら卑弥呼に来てもらう必要ないんじゃない?」


「そういう訳にはいかないでごじゃる。その印がわかるのは、この世界に卑弥呼様だけでごじゃる。故に卑弥呼様には絶対に来てもらわないといけないでごじゃる。」


「だったら先に卑弥呼に印を組んでもらった封魔石を持って行って、囮はセイメイが言ったように別人にやってもらえばよくないか?」



 我ながら今日は頭が冴えている。まぁ実際には他の面子もそれに気づいているかもしれないけどね。



「無理でごじゃる。印を組むには対象が近くにないとできないでごじゃる。それを卑弥呼様は知っているからこそ、連れて行くようにいっているでごじゃるよ。」



 ガーン……速攻で否定されてしまった。確かにそれなら卑弥呼が連れていけというはずはないか……とはいえ、実際に卑弥呼にこの話を持って行って聞くまではわからないが。



「なるほど。状況は理解した。一応卑弥呼に報告をしてからになるが、卑弥呼がそれを了承するならそれでいいだろう。すまないがセイメイ、納得してくれ。あくまで卑弥呼次第だが、仮にそうなっても俺が卑弥呼を守る。」



 ここまで聞けば、もはやそれしか方法が無い事は明白。後は気持ちの問題だ。


 確かに卑弥呼を危険にさらしたくないというのはわかるが、それは卑弥呼も覚悟の上だと思う。だからこそ、セイメイには飲み込んでもらわないと先に進めない。



「……わかりました。納得はできませんが、サクセス様を信じます。あなたはこの大陸の光。必ずや全てを救ってくれると信じております。」



 俺はその言葉に強烈なプレッシャーを感じる。だが弱気な姿勢を見せるつもりはない。



「ありがとう。もちろん全力で救うつもりだ……が俺は全知全能ではない。全部救えるなんて驕り切った考えは持てない。だからこそ、全員で救うんだ。卑弥呼も、この大陸も。」


「そうだぜ、セイメイ。いくらサクセスが強いっていって全部を求めるのは酷だ。そんなものすべてをこいつに背負わせるのは間違ってる。だから俺達がカバーするんだ。その結果、もし救えないものがあったとしてもそれはサクセスの責任じゃねぇ。俺達全員の責任だ。」



 カリーのその言葉に少しだけ俺の肩が軽くなった。しかしその言葉に甘える訳にもいかないだろう。今回の作戦に失敗は許されない。ハンゾウではないが、100パーセントの成功率にするため、必要な物や情報をそろえて、万全の態勢で臨むつもりだ。


 そしてセイメイもまた、カリーの言葉を受け強く頷く。



「失礼しました。その通りでございます。では皆様。力を合わせてサムスピジャポンを救いましょう。」


「あぁ、もちろんだ。とりあえず明日にでも卑弥呼に報告に行ってくる。セイメイも来るよな?」


「もちろんでございます。よろしくお願いします。」



 こうして俺達はこの大陸を救う最後の作戦に向けて、準備を整えるのであった。


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