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24 帰郷

【カリー視点】



「後少しだな、カリー。っつか、何お前緊張してんだよ!」


「し、してねぇから! 別に緊張なんかしてねぇから!」


「あれか? 久しぶりに大好きなお姫様に会えると思って、興奮してるのか?」


「ち、ち、違うから! そんな……ことねぇから!」


「照れんな、照れんなって。でもまぁ、なんつうか懐かしいな。俺にとっても、メリッサはお前たちと出会った思い出の場所だからな。」


「…………。」



 現在、フェイルとカリーは船の甲板で、その目線の先にある大地を見ながら話している。

 目の前に映るは、3年前に旅立ったカリーの故郷メリッサ。

 ちなみになぜフェイル達がメリッサに向かっているか、話を少しだけ戻そう。

 あれは、今から3ヵ月前の事だった……。



 3ヵ月前、フェイル達は滞在していた国にいた魔王軍幹部を打倒し、その国を魔族から解放した。

 その為、再びフェイル達は次の国に移動する事を決めたのだがここで予定を大きく変更せざるを得なくなる。


 理由は酒場で耳にした、とある噂だ。


 その噂とは、メリッサでは王子主導の政治に変わり、その王子が貴族制度を撤廃した事で各地で内戦が勃発しているといったもの。


 それを耳にしたカリーは激しく動揺した。


 自分がいない間に、もしかしたら内戦でローズが死ぬかもしれない。


 そう思ったカリーは、いてもたってもいられない程に不安になった。

 だがしかし、フェイルにメリッサに向かってくれとは言うわけにはいかない。


……なぜならば


 現在、自分は世界を救う勇者パーティの一員。

 故に、救いを待っている国に向かう事を放棄する事はできない。

 だからこそ自分のわがままでそんな事を言えるはずもないのである。


 

 しかし、その想いは直ぐにフェイルに見透かされた。



「よし、次に行く国はメリッサだ。準備したらすぐに向かうぞ。」



 フェイルは詳しい事は告げずに有無を言わさずメリッサに向かうと言ったのだ。

 しかし、カリーは反対した……その心とは裏腹に。



「ダメだ。俺達の救いを待っている国がまだ残っているだろ? それに内戦って事は相手は魔物ではないし、王族ならそうそう殺されることはない。俺に気を遣わないでくれ。」


「あぁ? 馬鹿かお前? お前が一番守りたい者、それを守れないようならお前は勇者の仲間として失格だ。大事な人に少しでも危険があるなら助けろ。それができなきゃ勇者パーティの一員とは認めねぇ。魔物は関係ないかもしれない? それがどうした? そんなの大切なもんの前じゃ関係ねぇだろ。」


「そうよ。大体ね、あんた顔に出過ぎ。というか私だってローズちゃん心配だし! あんたの為だけに向かうなんて図々しい事思わないでよね。ねぇフェイル。」


「あぁ、その通りだよバーラ。まぁ俺が一番守りたいのはお前だけどね。」


「もうっ! フェイルったら!」



 カリーの反対を真っ向から無視……というか否定するフェイルとバンバーラ。

 それどころか、心配するカリーの前でいちゃつく二人である。

 この3年の間で、二人はいつの間にか付き合う事になっていた。


 正直、目の前で姉が他の男とラブラブしているのを目にするのは、ひじょ~に複雑な気持ちであるが、その相手が自分の一番尊敬する男だからこそ目を瞑っている。



「……ありがとう。」



 そんな二人のやり取りを見て、カリーは小さくお礼を言った。

 二人が自分に気を遣わせないために、馬鹿なコントをしているのがわかっている。

 カリーもこの3年の間で色んな国を旅をして、人間としても大分大人に成長した。

 当然、個人的な戦闘力もだが……それ以上に心の成長の方が大きい。



「っつうわけでよ。急いでお前のハニーの無事を確認してこようぜ。なんなら、ついでに結婚してもいいぞ? あの時に誓いのキスをした子だろ? 俺達が盛大に祝ってやんぜ!」


「そうね! ローズちゃんと結婚しちゃいなさいよ。あっ! フェイル! だったらついでに私達もそこで式挙げちゃわない?」


「おっ! いいねぇ~。まぁ式なんか挙げなくても、俺は生涯バーラとずっと一緒だけどな。」


「もうっ! 嬉しい事言うんだからぁ! このこのぉ~。」



 再びイチャラブし始めるフェイルとバンバーラ。

 思わず目を背けるカリー。

 流石にやり過ぎだ、見てられない。



 つうか、結婚ってなんだよ!

 自分達がしたいだけじゃん!

 そもそも俺はまだ付き合ってすらいねぇよ!



 カリーはそんな二人をよそに心の中でツッコミを入れる。



「まじでもうやめてくれ! もういいって! これ以上は俺の精神が死ぬ!」


「おう、じゃあ直ぐに発つぞ。あぁ、それとカリー。もう下らねぇ事は考えるなよ? 俺達は仲間であり、家族だ。お前たちの為なら俺は命を捨てても構わないと思ってる。だから……まぁなんつうか、遠慮すんなよ?」


「……お、おう。兄貴……じゃなかった、フェイル。」


「よろしい! んじゃ出発だ!」



 ちなみにだが、カリーがフェイルを兄貴と呼ばないようにしているのには理由がある。


 フェイルがカリーを一人前と認めた時、兄貴と呼ばせないようにしたのだ。

 つまりは、対等の存在として扱うという事。

 それでも、まだカリーはいつもの癖で兄貴と言ってしまうが……。

 


「無事でいてくれよ……。ローズ……。」

 


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