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19 不穏な影

 外に出るとラギルが言う通り大分火が回っていた。

 子供達にはこの熱波も辛いだろう。



「みんな、熱いかもしれないけど頑張って! どうしても無理だったらおんぶしてあげるから!」


「大丈夫! 僕たちは自分の足で歩けるもん!」



 ローズの声に子供達が声を大にして叫んだ。

 しかし子供達は気丈に我慢をする。

 本当は辛いはずなのに、強い子供達だ。


 そしてそのまま魔物と遭遇する事なく商業区画までたどり着くと、そこには多くの兵士達が集まっていた。

 もうここまで来れば安心である。



「ありがとう、姫ちゃま!」

「ローズ姫……あなたが来なければ私達は死んでいたかもしれません。本当にありがとうございます。」



 子供達やマザーは頭を下げてローズにお礼を言った。

 その様子を見て、ローズも少しは救われた気持ちになる



……がその時



「ねぇ、そう言えばボッチはどこ?」

「あれ? 一緒に出たと思うけど?」

「ボッチーー! おーーい! ボッチーー!」



 突然子供達は慌てたようにひとりの子供の名前を叫んだ。

 それを聞いた瞬間、ローズの頬に嫌な汗が流れる。



「ま、まさか! 取り残されたの!?」


「そんな……出る時人数の確認はしたはずなのに……。」



 ローズの言葉に、マザーは崩れ落ちながら弱弱しく呟いた。

 しかし、直ぐに頭を冷静にしたローズは安心させるように強く言葉を放つ。



「大丈夫! あそこならまだ間に合うはずですわ! ラギリ! 行くわよ!」


「ダメです! 姫。兵に任せた方がいい。あなたが行く必要はどこにもない。」



 ラギリが行っている事は正論だ。

 しかし兵士を信頼してないわけではないが、他の子供達を安心させるためにも自分が行くしかない。



「ボッチの顔を知ってるのも、養護施設の場所を知ってるのも私達だけですわ! それに……今は他の人に任す事などできません!」



 ローズは叫んだ。

 ボッチがいない事に気づいて泣き喚いている子供達を見て……。



「……わかりました。では、急ぎましょう。無理だったら無理矢理にでもあなたを連れ戻します。」



 ラギリはため息を一つつくと、ローズの剣幕に押されて渋々納得する。



「みんな、安心して! 必ずお姉ちゃんがボッチを連れて来るからね!!」


「うん! お姉ちゃん、ボッチを助けて!」


「わかったわ! 任せなさい!」



 ローズは胸をドンと叩くと、優しい笑みを子供達には向けた。



 再び養護施設に向かうローズ達。

 やはり火の勢いが増しており、何回か道を迂回しつつも漸く(ようやく)養護施設が見えてきた。



「まずいわ! 建物に火がまわってる! 急がないと!」


「私が先に入ります、姫は後ろについてきて下さい。」



 運がいい事にまだ扉は燃えていない。

 故にラギリが先に中へ入ると、ローズはそれに続く。



 そしてラギリは、ローズが養護施設に入ったのを確認すると



ーーー不敵な笑みを浮かべるのであった。


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