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13 魔王軍の動向

 カリーがフェイルと旅立ってから三年の月日が経った。


 あの日からカリー達は、数多の国を訪れては魔族の支配から人族を解放して回り、漸く(ようやく)人族と魔族の支配領域の均衡は保たれ始めていく。


 この情勢に焦った魔王は、フェイル率いる勇者パーティの討伐を最重要任務とし、次々と魔族幹部を送り込む



……がフェイル達はそれらを全て退け、魔族の幹部も残すところ後3人まで追いつめていた。


 だがしかし、この頃から魔族の軍が怪しい動きを始める。


 今までならば、勇者の向かう先に魔王軍を送り込むと、直接勇者の命を狙ったのだが、最近では逆に勇者が向かう街にいた魔族達が勇者との戦闘を避けて撤退し始めたのだ。


 

 これは勇者によって魔王軍の戦力減少を避ける目的にも見えるが、実は違った。

 魔王は、勇者本人の力よりも、勇者の光がもたらす恩恵を危惧したのである。


 フェイルが旅の中で手に入れた新たな力



 【勇者の光】



 これは、周囲にいる者達に希望を与え、潜在能力を永続的に引き上げるスキルだった。

 つまり、勇者が現れると今まで雑魚であった兵士達が突然強敵に変わってしまう。


 魔王は考えた。


 これ以上、人族全体の戦闘力を上げる訳にはいかない。

 かと言って、直接的に国を潰し始めれば、勇者が駆けつけてきて、逆に魔王軍の戦力が削られる。



 短期的に見れば今でも圧倒的に魔王軍が優勢であるが、このまま同じことを続けていてはいつか逆転され、勇者の刃が魔王の喉元に届いてしまうだろう。


 それ故に、手段を変えた。


 それは勇者に気づかれぬよう人族同士で潰し合いをさせ、間接的に将来人族を担うような人材や脅威になり得る国の排除する事。

 


 そして、最初に魔王が目につけた国はカリーの祖国である



 「メリッサ」



だった。



 その国は、以前攻め入ろうと考えていたものの、勇者が先に訪れてしまっていた事から諦めていた国。

 当時はまだ大きな国ではなかったが、その国の王子と王女が政治に介入してから爆発的に人口が増え始め、今後最も脅威となる可能性のある国へと成長していた。


 だが、今ならその芽を先に潰す事ができる。


 勇者が現在どこに滞在しているか魔王軍は把握できていなかったが、この3年間の間、勇者がメリッサに向かった情報はない。


 故に、狙うならば今がチャンスだった。

 もしも、今のメリッサに勇者が現れれば、魔王軍は危機的状況に陥る可能性が高い。


 そのため魔王は、慎重に事を運ぶ。

 

 普段なら勇者のいない国に魔族幹部を送ることはないのだが、今回は、魔族幹部の中でも取り分け知能が高い「ダークマドウ」を送り込んだのであった……。


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