7 ボコボコのシスコン戦士
「弟君の名前はカリーだったね? 俺の故郷にカリーライスってご飯があってね、それが俺は好きなんだ。だからかな、俺は君の事をなぜか気に入ってるんだ。」
「はぁ? 俺はお前が嫌いだ。大体、人の名前で飯の話するなんてむかつくぜ。つうか、お前本当に強いのかよ?」
「強いよ。君よりかはね。だが、まだ俺は弱い。」
「意味わかんねぇし。それになんで弱いお前が、俺より強いってわかるんだよ。」
「だって、君……。いや、カリー。今魔物3匹に狙われているのにすら気付いていないだろ? それにすら気付かないようじゃ、俺よりは弱いかな。」
フェイルに言われてカリーは周囲に目を配るも、付近に魔物の姿は見当たらない。
「くだらねぇ嘘ついてんじゃ……うぉ!?」
突然地中から大王ミミズが這い出て来てカリーを襲った……が、既に剣を抜いていたフェイルが一瞬でその魔物達を斬り捨てる。
「ほらな。油断しすぎ。」
「ば、馬鹿! あんなの俺だって直ぐ倒せるし! つうか、余計な事すんなよ!」
「もし、それで君の仲間が死んでも、同じことを言うのかい?」
「死んでねぇし、そんなありもしない事を考えてもしょうがないだろ。まぁ、アンタがそれなりに強いのはわかった。でも、自分で自分を弱いなんていう奴の助言なんて聞く気はねぇからな。」
「あはは。いやぁ、本当にツンツンしてんなぁ。まじで、バンバーラちゃんとは大分違うね。」
突然、礼儀正しかったフェイルの様子が変わる。
その話し方にカリーは目が点になった。
「お、おまえ……猫被ってたのか?」
「いやいや、あれはあれで俺。外面ってやつだよ。でも、お前見てたらなんか馬鹿らしく思えてな。少なくとも今くらいは素でいさせてもらうよ。」
「難しい事はわかんねぇけど、なんかむかつく。」
「まぁ仲良くしようぜ。なんなら、今稽古つけてやろうか? お前は少し血を抜いたほうが良さそうだしな。」
「んだと? 稽古じゃなくて、俺がお前をボコボコにしてやるよ。」
「おぉ~おぉ~。いいねぇ。じゃあかかってこいや、クソガキ。」
【30分後】
「はぁ……はぁ……。ま、まだだ。まだ終わってねぇ!!」
ふらふらになりながらも立ち上がるカリー。
それを更に素手でぶん殴るフェイル。
既にカリーの顔面はボコボコで体もあざだらけ。
最初は剣で勝負していたが、途中からフェイルは剣すら使うのをやめた。
二人の間にはそのくらいの実力差があったのだ。
「見上げた根性じゃん。でも、まだまだ全然だな。お前は無駄が多すぎる。気配も読めていない。そんなんじゃ戦場で直ぐ死ぬぞ。いいのか? 大切な者を守れなくても? いいのか、自分の祖国が滅んでも?」
「い……いいわけ……ねぇだろぉぉぉぉ!!」
なんとか再び立ち上がったカリーは、剣を握り締めて袈裟斬りをする
ーーがしかし
簡単によけられてしまい、そのまま転倒すると気を失った。
その姿をジッと見つめるフェイル。
その顔はどこか嬉しそうに見えた。
「いや、本当にスゲェ根性だなコイツ。センスもいいし鍛えればかなり使えそうだ。今はまだ我流で粗削りだけど、磨けば光るな。」
フェイルは倒れたカリーに回復魔法を使う。
勇者であるフェイルは回復魔法も攻撃魔法も使えた。
するとカリーの体にできた痣はみるみる回復するのだが、精神力を使い切っていたらしく目は開かない。
フェイルは木の下にカリーを横たわらせると、しばらく休憩をすることにしたのであった。




