表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/508

24 新大陸

 俺たちは馬車を引きながら、爆破されて壊れた壁の間を進んでいる。 

 すると、壊れた壁の向こうには、大きな広場が見えていた。 



「おお! これがワープの泉か?」 



 目の前に10メートル四方の泉が見える。 

 なんというか、ちょっとした大浴場みたいに見えるが、深くは無さそうだ。 

 水面からは石造りの床のようなものが見えており、ぜいぜい深さは膝下ぐらいであろう。 



「綺麗な水ですね、飲む事もできそうです。」 



 シロマがそう言って、水を掬って飲もうとした時、突然イーゼが大声をあげた。 



「やめなさい! この水はかなり魔力濃度が高いから、飲んだら危険じゃすまないですわ。」 



パシャパシャパシャっ! 


ゲロゲロロォォン! 



 だが、そんな事は理解できないゲロゲロは、泉の中に入って遊び始める。 

 注意したいところだが、可愛いし、遊ばせてあげよう。 



「あの……。サクセス様。ここは遊ぶところではなく、一応神聖な場所ですので、できれば速やかに移動しませんか? 壁が戻れば空気も無くなるので窒息しますわ。」 


「え? それを先に言ってくれよ! みんなすぐ移動するぞ。遊びは終わりだ。」  



 俺は、イーゼの言葉に焦りだし、すぐに移動する事をみんなに伝えると、リーチュンだけは不服そうに声をあげる。



「ええーー! アタイまだ遊んでないよ!」 



 余裕があるならばきっとここで素敵な水浴びをしてくれたかもしれない。 


 残念だ……。 


 だが、そんなリーチュンを無視して、イーゼは魔法の玉を取り出してワープの準備を開始する。 



「それでは皆さん泉の中に入って下さい。ワープしますわよ。」 


 イーゼがそう言った瞬間、泉の水が凄い勢いで渦巻き状に流れ始めた。 

 俺は膝下しか水に浸かってないはずなのに、なんだか目がグルグル回ってくる。 


 うぇ! 気持ち悪い……。 

 どんどん視界がグニャグニャになる。 

 

 そして完全に視界がぐちゃぐちゃになると、俺の意識はそこで途切れた。 



「はっ! ここは?」



 しばらくして、俺は意識を取り戻す。 

 どうやら、立ったまま意識を失っていたようだ。

 見た感じは、さっきの場所と変わらないが、明らかに違うところがあった。 



「あれは、門?」 



 そう、目の前の広間の先には、さっきまで無かった頑丈そうな金属製の門があった。 

 どうやらワープは成功したようだ。 

 

 そういえば、みんなは無事かな? 


 俺は周りを見渡すと、全員立ちながら目を瞑っている。 

 どうやら、俺が一番最初に意識が戻ったようだ。 



「叩いた方がいいかな? は!?」 



 その時、俺はある重大な事に気づく! 

 今ならエッチなイタズラがし放題なのでは!?  


 意識の戻ってきていない美女三人。 

 何もしないのは男がすたるでしょ? 


 イーゼ……は、まぁ気になるが別に今見なくてもいい。 


 リーチュン……凄く気になるが、一度その素晴らしい女神姿を見せてもらったから、第二優先でいいだろう。 


 そしてシロマ……。


 ごくり……。


 あのロリな容姿にイタズラとか犯罪すぎる。 


 俺の心は決まった。 


 シロマ! 君に決めた! 


 俺は敢えて一番リスクがある選択をする。 

 バレたら一番ダメージが高いが、だからこそ冒険する価値がある! 


 冒険をしない冒険者なんて間違っている! 


 俺はゆっくりとシロマに近づいていく。 

 忍び寄る魔の手が、今まさにシロマに……。 


 ぐへへ、いっただっきまぁぁす! 



 パチリッ……。



 俺が今まさに悪戯をしようとした瞬間、突然シロマの目が開いた。 

 超至近距離で見つめ合う俺とシロマ。 

 その姿はまるで恋人達が今まさに唇を合わせるが如く……。 


 ってそんなロマンチックなものではないだろ!? 

 やっベーー! 



「あの……サクセスさん、何を……。」 



 何か……何かいい言い訳はないか!? 



「違うっぺ! 意識が戻らないっちゃから助けようとしただけだっぺ! やましい気持ちはないっちゃ!」 



 俺は必死だった。 

 情けないくらいのみっともない言い訳。 

 間も無く、シロマ(裁判官)からの判決が言い渡されるであろう。 

 どうか軽い罪状でお願いします。 


 だがしかし、シロマは怒りもしなければ笑いもしなかった。

 今意識が戻ったばかりのシロマは、周囲の状況から現在の状況を脳内で解析していたからである。


 そして遂にその口が開く……。 



「あの、サクセスさん? どうしてそんなに焦ってるのですか? 私を起こそうとしたんですよね? さぁ、みんなも起こしましょう。」



 シロマは何事も無かったかのように言った。 

 目の前にはこんなに焦っている変態がいるのにだ!  


 ホッ……。 

 セーフ!! 


 俺はそれにものすごく安堵する。 



「そ、そうだね。早くみんなも起こそう。」 



 俺はそう言って、他のメンバーに近づこうとすると、後ろから聞こえてしまった。 



「次はちゃんと、私の意識があるときにして下さいね。」 



 その声は小さかった。 

 しかし、俺の耳には確かにシロマの声でそう聞こえたのだった。 


 え? なんですと? 

 もう一度! もう一度プリーズ! 


 だが俺は、そのまま聞こえないフリをして全員を起こし始める。 

 これは気づいちゃいけないやつだ。 



「よし、じゃあ行くか。で、あの門はどうすればいいんだ?」 



 俺はイーゼに尋ねる。 



「あれは簡単な解錠の呪文で開きます。開け! ゴマカム!」 



 ガチャっ! 



 イーゼが呪文を唱えると鍵が開いた音が聞こえた。

 イーゼは本当に凄い。

 一家に一台イーゼ。


 ただし、取扱い注意。 


 俺はそんな失礼な事を考えつつ、門を押してみると簡単に開く。 



「よし、これで出られるぞ!」 



 俺がそう言うと、後ろから影が二つ、俺を横を走り抜いていく。



「アタイがいっちばーーん!」 


「ゲロロロォォン!」 



 リーチュンとゲロゲロだった。二人は競争する様に走って出口に向かう。 



「私たちも行きましょう。」 



 シロマはそう言うと俺の手を握った。 

 だがその顔は真っ赤である。


 え? 


 シロマからまさかの急接近。


 なんだこのラブコメは……。 

 俺を何回ときめかせるつもりだ! 


 そして、当然それを見逃さない者がいる。 イーゼだ。 


 今度は、シロマと逆側の俺の腕がイーゼに抱きつかれる。 



「サクセスさまぁ、早くイキましょう。」 



 行くの言葉が違う風に聞こえるのは、きっと気のせいだろう。


 まぁいい、とりあえずやっと新大陸だ! 


 こんな素晴らしい冒険は他にはないだろう。 

 ざまぁみろ、俺以外の冒険者! 

 俺が一番幸せな冒険者だぜ! 


 こうして俺たちは、アバロンの国を目指して新大陸を歩み出すのであった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ