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21 宿屋で宴会

「おっそーーい! どんだけ待たせるのよ! お腹ペコペコだよぉ!!」



 俺達が宿屋に戻ると、宿屋の前にリーチュンが仁王立ちをし、俺達の帰りを待っていた。 


「ごめんごめん! ちょっと例の魔石の鑑定に時間がかかっちまったみたいでさ。すまない、先に飯は済ませちまった。でもちゃんと二人の分は買ってきたから安心してくれ。」 



 俺は謝罪しつつ、大量の料理をリーチュンに渡すと、更に喚き始めてしまう。 



「ずっるーい! ずるいずるいずるい! 二人だけお店で美味しいもの食べて! だから私も行きたかったのに!」 



 喚き続けるリーチュンをよそに、イーゼもそっと俺に近づく。 



「お帰りなさいませ旦那様、ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも……あ・た・し?」 



 イーゼは、どうやら完全に元の変態エルフに戻ったようだ。 

 絶対料理を作る気がないくせに、どこで手に入れたのかエプロンを装備している。 ちなみに裸ではない。 



「すまない、飯は先に済ませてしまった。二人は買ってきた料理を食べてくれ、中々おいしいぞ。」



 俺はイーゼの言葉を自然にスルーする。 が、イーゼの攻撃は止まらない。 



「わかりました、ですがご飯はいりません。それよりも、お風呂にしましょう! そうしましょう! 背中と前を流させていただきます。」 


「いや、前はいいからってそうじゃねぇ! そもそも、この安宿に風呂なんかねぇだろ。ってすいませんっした!!」 



 宿屋の女将が俺を睨んでいる。 ほんとすみません。 



「はいはい、とりあえずみなさん中に入りますよ。まずはご飯を食べてください。」 



 シロマだけは冷静だった。 

 でもどこか勝ち誇った顔にも見えるのは気のせいだろうか。 



「ずるい! シロマだけ! じゃあサクセス! アタイの飯に付き合ってよ!」 


「わかったわかった。一応そんな事になるかと思って酒も貰って来たんだ。やっと町に戻れたんだ、今日くらいは無礼講で楽しもうか。」 



 俺のお腹はそれなりに膨れていたが、少しくらいならまだ入る。

 先に二人で食べてしまったのは俺だし、付き合う事に決める。 

 というか、元よりそのつもりだ。 


 だがその前に、気持ちよさそうにねているゲロゲロだけは先に俺の部屋に寝かせてやろう。 


 そしてその夜、俺達は女部屋で小さな宴会をした。 

 女三人に男一人……まさにハーレム状態。 



「いやぁ! ほんと怖かったねガーディアン! アタイ死ぬかと思ったよ!」 



 普段からテンションの高いリーチュンは酒が入っていて更にテンションが高い。 


「私はサクセス様がいるから安心でした。これからも一生私を大切に守って下さい。」 



 スルスルスルッ……。 



 顔を酒で赤くした変態エルフは、いつの間にか浴衣を装備し、しかもわざと若干はだけながら俺に寄り添ってくる。 



 サササッ……。 



 だがそれを避ける俺。 



「ああぁん、もうイケズぅ。」 



 俺によけられた変態エルフはそういって更に近寄ろうとするが、もう勘弁してほしい。 


 正直、エロ過ぎるんだ。

 童貞には辛い。 

 これ以上は俺の理性が持たないぞ。 

 何度も言うが、そういうのはパーティでは御法度。 


 しかし、いつまで俺は耐えられるだろうか。 

 もう我慢しなくていいのではないか? 

 ここが終着点でいいんじゃないか? 

 無理すんなよ俺。 


 酒が入っているからか、俺の考えも欲望に負けそうになり始めていた。



「はなれてくだしゃい、しゃくせすしゃんはみんなのもにょです。」 



 気が付くと、いつの間にかシロマも酔っ払っていた。 

 酒が苦手とは言っていたが、どうやら間違って飲んだらしい。 

 普段真面目なシロマが酔っ払っている姿は……超かわいい。 


 お持ち帰りしたい俺の部屋に……。 


 我慢が限界に来ていた俺は、どさくさに紛れてシロマを抱きしめる。


 でへへ、酔ってるなら許されるもんね~。 


 俺も大分酔っ払ってきたようだ。 



 「あ~ずるい! シロマひいきダメ! アタイもギュッとしてよぉ!!」



 それを見たリーチュンも俺に抱き着いて来る。 

 あぁ……ここが天国か。 

 とうさん、かあさん、僕は生まれてきて本当に良かったです。 

 ここで死ぬかもしれませんが、悔いはありません。 


 酒に酔った俺は、もう何も考えられない。 ただ幸せな気分でふわふわしている。 

 これが冒険後の楽しみならやめられないはずだわ、冒険者。 


 人生で一番楽しい時だった。 

 しかし、残念な事に俺は酒に弱すぎて、そのまま意識を失ってしまう。 

 

 こうして俺は、酒の力を借りても男になれることはなく、その場で安らかなる眠りにつくのだった。


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