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33  糞風呂のち進化

 ふん、フン、糞っ!

 私は物体Xもといミミズの糞の小山に歩み寄った。


 見た目は小さく丸めた土の塊のようなものが幾つも重なり合って、図鑑で見たことのある蟻塚のような感じだ。

 匂いは——

 私は糞に顔を近づける。

 うん、無臭。

 そのまま、足で糞を突くもウンチって感触じゃない。


 もし、もしもだよ。

 私がこの糞に埋まれば、養分はこれで補える?




《解:可能です》




 私は植物である。名前はまだない。

 良い土、良い堆肥、良い肥料で立派な植物になれる。

 多分おそらくきっと、私がこの世界に来て最上級な土は目の前にあるミミズの糞塚だろう。


 私が強くなれる、進化する為に必要な養分。

 魔物と戦わずに、命の危険に合わずに済む。

 ただクソに塗れ、クソに埋まって、クソと眠ればだけど。


 それは、ちょっと……いやかなりハードルが高くない?

 だって私は元人間で、花の元女子高生で、土にも触れたことのない元現代っ子だよ?

 人間らしい生活をしていたかと聞かれると、”うーん”って答えるけど。

 花の女子高生していたかと聞かれても、うーんだし。

 第三者からしたら、現代っ子と土いじりは関係ないでしょとか思うかもだけど。


 ……はい、観念します。


 これは贅沢なわがままだ。

 汚いけど、ウンチに埋まるだけで安全に養分を得られるなら、命懸けの養分狩りをするよりは幾分マシだろう。

 危険を避けれるなら、それ以外の選択肢はない。


 そうだよ。

 そもそも、糞って思うのがよくないんだよ。

 これは最高級の土と思えば良いんだよ。

 砂風呂ならぬ、土風呂だよ。


 私は覚悟を決め、屈伸をする。

 そして、勢いよく土風呂に頭から飛び込んだ。


 土風呂は柔らかく、少し冷んやりしている。

 力まなくても沈んでいく体。

 鼻腔をくすぐる土の香り。

 ふわふわに全身を包まれる。


 これは、なんて言うか、気持ちいいいいぃぃぃ。

 ふわあああああぁぁぁぁぁ——…って感じ。

 全身の疲れや凝りが溶けていく気がする。

 あ〜、これは植物の私にとって最高の”土”だわ〜。




《告:進化の条件を満たしました》

《進化先を指定してください》




 あへ〜?

 うーん、じゃあマンドランでお願い〜。




《了:プチマンドランがマンドランへの進化を開始しました》




 は〜い。

 む、なんかまた眠気が……。

 すっかり、忘……れ…………て………………………………。




        ※




《進化の成功をお知らせします》

《マスターは種族名マンドランへと進化しました》

《各種能力値が上昇しました》

《進化によりスキル【発声Lv.1】を獲得しました》

《進化によりスキル【毒根Lv.1】を獲得しました》

《進化によりスキル【身体操作Lv.5】を獲得しました》

《既存のスキル【身体操作Lv.5】と統合しました》

《熟練度が一定に達した為、スキル【身体操作Lv.5】が【身体操作Lv.7】へとレベルアップしました》

《熟練度が一定に達した為、スキル【視覚Lv.5】が【視覚Lv.6】へとレベルアップしました》

《熟練度が一定に達した為、スキル【暗視Lv.4】が【暗視Lv.5】へとレベルアップしました》

《熟練度が一定に達した為、スキル【再生Lv.1】が【再生Lv.3】へとレベルアップしました》

《熟練度が一定に達した為、スキル【生命吸収Lv.4】が【生命吸収Lv.5】へとレベルアップしました》

《熟練度が一定に達した為、スキル【気配察知Lv.2】が【気配察知Lv.3】へとレベルアップしました》

《熟練度が一定に達した為、スキル【空振探知Lv.1】が【空振探知Lv.2】へとレベルアップしました》

《熟練度が一定に達した為、ユニークスキル【森羅万象Lv.2】が【森羅万象Lv.3】へとレベルアップしました》

《スキルポイントを入手しました》




 …………ん、ん゛ーっ。

 やっぱり進化する時の急激な眠気には慣れないな。

 あと、前も思ったけどまだ起きていないのにダラダラと言われても、分からないって!

 最後の『——入手しました』しか聞き取れなかったわ。


 というか、どのくらい寝てたんだろう。

 私の最後の記憶はふかふかで気持ちの良い土の中だったんだけど、今埋まっている土にはそんな面影は一切ない。

 パサパサで、ガサガサで。

 これはなんて言うか、居心地は悪い。


 私はそんな土を掻くようにして、外へと這い出た。

 腕は再生しているみたいだ。

 ただ、見慣れたワサビって感じではない?

 森さん、前みたいに私の姿を見せてくれない?




《応:了》




 あー、えー。

 私はワサビから大根へと進化したみたいです。

 どゆこと?

 全くの別種すぎない?

 ワサビの面影ゼロだよ?




《解:称号【日陰者(ヒカゲモノ)】の影響だと推測されます》




 お、森さんが推測できるようになってる!

 って称号の影響?

 これは久々にあれを言ってみようかな。

「ア゛、ア゛ー」

 ……え?

 ……ちょ、ちょっと待って。

 えっ?

 私、喋れる様になってるんですけど。

「ゴ、ゴニ、ヂワ……」

 ぎこちないけど、喋れる。

 ”こんにちわ”って言いたかったんだけど、でもこれって新スキル?


 とりあえず、ステータスっ!




《種族:マンドラン(変異種)》

《名前:なし》

《称号:【外界者(ヨソモノ)】【無慈悲者(ムジヒナモノ)】【日陰者(ヒカゲモノ)】【生存弱者(ヨワキモノ)】【悪食(プレデター)】》

《攻撃力:23》

《防御力:26》

《魔法力:17》

《俊敏 :36》

《知力 :102》

《器用 :83》

《幸運 :9》




 な、何事っ!?

目安として、この世界での成人直後の男性のステータスです↓

《攻撃力:100》

《防御力:100》

《魔法力:100》

《俊敏 :100》

《知力 :80》

《器用 :80》

《幸運 :90》


まだまだ主人公『私』は弱いです……。

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