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14  生命力の回復に挑戦

 株分けしてある完成した罠の方から獲物が落ちる音が鳴った。


 ご飯……ネズミかな?

 ちょうどいい機会だし、【生命吸収】でも試してみるか。

 森さんの助言が正しかったら、赤の生命力が回復できるかもしれないし。


 私は甲羅(ホーム)から出て、おずおずと罠の確認に向かった。


 穴を覆う株分けした元右手が崩れているあたりを見ると、獲物が落ちたのは確定事項だけど。

 やっぱりネズミかな?

 それとも新しい味のご飯かな?


 私はできればネズミ以外のご飯を希望します!

 あれは美味しくないから。

 食べるものがそれしかないから食べているだけで、他のがあるなら迷わずそっちに飛びつく。

 ではでは森さん、これは何ですか?




《解:蜥蜴です》




 おっ、新しい味キタ!?


 罠に落ちたトカゲは、どことなく前世のヤモリに似ている。

 違う点を言うなら、尻尾が二股で目が左右に二つずつの計四つあることくらい。

 あとは、うん。

 大きさがちょーっと大きいくらいかな。

 ネズミと同じくらいというか、トカゲというよりゴツゴツしていないだけのワニみたいだわ。

 まぁ、そんなことはほとんど関係ないんだけどね!


 私はもがくトカゲを生き埋めにした。


 人道違反しているって?

 違う。私、今、人間違う。


 そもそも外道で結構!

 フハハハ、今更すぎるんだよね。

 私は生まれたその瞬間に亀に寄生して殺しているんだよ?

 命の重さ、尊さとか儚さに関して言えば人間だった頃の私以上に考えるようになっているし。

 これ、言い訳、違う、説明。


 ま、実際の所これ以上近づいたら攻撃されそうだし、見す見すご飯を逃すつもりもないってだけなのと、あとは罪悪感からの言い訳だね。




《……》




 な、なんか森さんが言いたげな気がする。

 何?

 私の言葉のトリックに気がついちゃった?

 結局言い訳してたのバレ——…




《応:マスターの言動、思考の理解ができません》

《矛盾点が複数存在しております》

《まず第一に言い訳——…》




 ごめんなさい、言い訳です。


 だってそうじゃん、仕方ないじゃん!

 生き物殺す経験とかないし、それこそ気持ちの良いものじゃないんだよ?

 私は魔物? になっちゃったかもだけど、心はまだ人間のつもりなんだから。


 生きていく上で仕方なく殺傷をしているけど、そんなこと本当はしたくないし。

 生き埋めにしたり、寄生したりはその手段しか私には取れないだけ。

 でも自分でも外道だな、鬼畜だなって思ってるから!


 はぁ。


 で、えーっと、ここから本題に入ります。

 私は美味しい物がいいとは言った。

 でも、それは事後に食べる為であって、本来の目的はあくまでもスキルの練習だ。

 いい加減、生命力の回復をしたいのだよ。

 私の生命線であるHPの回復方法の模索、これが狙い。


 だからトカゲには死んでもらっては困るんだよね。

 生命吸収ってくらいだから、生きている相手に直接触れるなりしないとダメだと思うから。


 生き埋めで瀕死にさせて、弱ったところを元・右腕ちゃん……。

 長いから、これからミギーって呼ぼう。

 で、そのミギーに捕縛してもらえればいいかな?

 元気な状態なら無理だろうけど、相手が瀕死なら捕まえるくらいなんてことない、かもしれない。


 いや、どうだろう。

 ただの動く綿毛が、発芽したばかりの弱小植物が弱っているとはいえ巨大なトカゲを拘束できるかな?

 ……。


 私はミギーを信じることにした。




 トカゲが弱るのを待っている間、私はスキルの修練に励んでいた。

 ちなみに今やろうとしているのはスキル名【地属性魔法】だ。

 そう、()()魔法である!


 ウィンガーディアムレビオーサ、とか!

 やっぱファンタジー世界に来たなら魔法使ってみたいじゃん?

 ウッキウキだねー。


 とりあえず地面に円を書いて、その内側に五角形の星を書いて、それっぽい簡易魔法陣完成!

 時は来た。

 いよいよ私は魔法を使う。

 地属性ってことだから——…


 ストーン!

 ……。


 クリエイト・アース!

 …………。


 砂漠の宝刀(デザートスパーダ)

 ………………。


 じひびき!

 地震!

 つ、土ボコ!

 ……………………。


 あとは、えーっと、えーっと。


 ……


 …………


 ………………ネタ切れです。


 魔法陣はウンともスンとも言わなかった。

 そういえば、魔法はイメージが重要っていうテンプレがあるじゃん!

 そうだよ、きっとイメージがしっかりしていないとダメだったんだよ。

 逆にイメージさえしっかりしていれば、規格外な超大魔法が炸裂するんじゃ?


 ぐへへ。

 えーっと、まずは魔法陣に砂が生成されて——…




 ——結論を言おう。

 無理であった。無駄な時間だった。


 なんかショックだわー。

 私に魔法の才能は無かったのか。

 スキルあんのに使えないって、虚しいだけじゃんか。

 はぁ、そろそろ時間だし、魔法は一旦保留にするかー。


 気持ちを切り替えて、私は慎重にトカゲが埋まっている穴を掘り返した。

 いつもより早く掘り返したから、案の定生きていたけど……。

 私は生き埋めにしたトカゲと目が合ってしまった。

 ちょっと、心苦しいというかなんていうか。


 これまで、散々ネズミを仕留めて食べてきたけど、やっぱり目が合うと躊躇ってしまう。

 はぁ、結構グロいことしようとしているんだな、私。

 私はミギーに指示を出し、ミギーはゆっくりとした動きで弱っているトカゲの動きを拘束しはじめた。


 始めに口、次に手足、尻尾と。

 トカゲが抵抗する素振りは見せない。

 否、そんな体力も残っていないのだろう。


 次はこれにスキル【生命吸収】を使えば、HPが回復できるはずだけど。

 森さん、どうすればいいの?




《解:不明です》




 うん、いつものね。

 ちなみにだけどこのスキルって、宿主の亀を寄生した時に獲得したの?

 それとも進化時?




《解:進化時です》




 進化した時か。

 記憶が曖昧なんだけどな。

 でも私が進化から目を覚ましたら宿主だった亀はいなくなっていた。

 私が養分として吸収したから。

 ってことは、相手と私が繋がってそこから養分の吸収をすればいい感じ?




《解:マスターが蜥蜴に根付いた場合の成功確率は20%です》




 思ったよりも低いな。

 トカゲが弱っているのが原因?

 それとも、スキルのレベルの問題?

 種族的な強さの問題?




《解:不明です》




 まぁ、そうだよね。

 とりあえずやるだけやってみるよ。


 私は繭状にしたトカゲを観察する。


 このトカゲに根付ければいいんだろうけど、どうすればいいんだろう。

 足でも刺してみる?

 呼吸ができる様に鼻だけは覆っていないから、そこに足刺すとか。

 それしかなさそうだわ。


 私はトカゲの頭部の方に座り、鼻に足代わりの根を刺した。




《告:スキル【生命吸収Lv.2】の行使を実行しますか?》

《YES or NO》




 こういう感じで出てくんのか。

 あっ、もちろんYESで。


《告:ゲッコウゲッコーの生命活動の停止を確認しました》


 それから私は森さんに頼み、ステータスの確認を行なった。

 見ると赤ゲージは全回復とはいかなかったけど、2割くらい回復していた。

 これが生命吸収に成功したってことかな?


 まぁ、なんだかんだ言って森さんは私にアドバイスくれたり、サポートしてくれたりしているしね。

 ムフ、ついにデレたか。




《応:否》




 あ、そ。

 まぁいいや。

 生命吸収は無事に成功した訳だし。


 結果を言えば、トカゲの残存生命力が低すぎたせいで、ちょっとしか回復できなかったけど、回復できると言う事実が非常に美味しい収穫となった。

 そして赤ゲージの回復が止まったのを確認してから、私はトカゲを食べ始めた。


 味はというと美味しくはなかった。

 骨が多いし、肉はゴムみたいに硬いし、匂いはゴミみたいだし。

 ただカエルみたいに毒があった感じじゃないと思う。

 ヒリヒリしなかったし。


 あ、でも残さず最後までちゃんと食べたよ。

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