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11 クリスマスプレゼントをあげたら

バーン学園の冬休みは、十二月のクリスマスイヴから年末年始を挟み二週間ほど続く。ほとんどの寮の生徒たちは実家に帰る。モーガンもシンシアもそうするつもりだ。

久しぶりに故郷に帰れるのはうれしい。家族にも会えるし地元の友達とも遊びたい。

そんなウキウキの冬休みの前にはもちろんアレがあるのだ。

期末テスト。

秋季の勉学の集大成だ。

テストに向けてモーガンとシンシアの二人は、食堂で勉強をしていた。

テスト期間中とその一週間前からは、部活動・委員会・生徒会などの校内活動は一切禁止される。代わりに勉強場所として食堂やカフェ、図書室などが解放されていた。

「あー、古文! まずすぎるわー……」

シンシアはつぶやきながら古語辞典をめくる。

一年生の秋季の期末テストで赤点を取ってしまった経験のあるシンシアは、留年だけは避けねばとテスト勉強はしっかりする。

さらに赤点を取ったら補習だけでなく、校内活動は禁止されるペナルティもあった。

シンシアの苦手科目は古文、歴史など文系科目である。理系科目はそれなりに成績は良い。

モーガンは特に何が苦手ということはなく全般的にできる。それに授業をしっかり受けていればテスト前に慌てるということはなかった。

「あ、シンシア先輩、ここのところはこっちじゃなくてこうですよ」

後輩に教えられてしまうシンシア。

「~あ~~、ありがとう、そうかこっちか……」

ブツブツ言いながら問題を解いていくが、だんだんとやる気が失せてくると、

「うーん、誰かテストのヤマを占いたい人いないかなあ……」

などと占いをしたい衝動に駆られている。

「そんな博打みたいなこと誰もしませんよ」

モーガンは苦笑しながら言う。ちなみにもうテストについてはすでに毎回占いを実施しており、当たらないヤマとしての実績が上がっている。

最初こそ『占い』という神秘的な単語に惹かれて占い部に依頼してくる者もいたそうだが、当てにならない結果が口コミで広がり誰も依頼してこなくなったという。

むしろ、当たってしまったら運が減るからやめておこうとまで言われる始末だ。

「……モーガン君は昔から勉強は得意な方なの?」

「そうですね、教科書とか本に書いていることは結構すぐ覚えられますね」

「……なるほど、天才肌か……うらやましい……。私はテストのたびに詰め込んで詰め込んでるわ……。古文とか使わない知識って終わるとどこかに飛んで行っちゃうのよね……。受験勉強もそんなかんじだったし……」

「まあそんなもんですよね実際……」

 シンシアはじーっとモーガンの顔を見る。

「……? なんですか?」

 そんなに見つめられると照れてしまう。

「黒髪っていいわよね……」

「は?」

「……かっこいいなあって思って」

「……はあ、どうも」

 よくわからないがほめられた。

「……触っちゃダメ?」

「は!? ダメです!」

 急なお願いに思わす断る。

 女性に髪を触らせるなんて、公衆の面前でよくないシチュエーションだ。

「そうかあ……」

 しょんぼりとしてまた勉強を始める。

(……なんなんだ……)

 シンシアはたまにこういうことを言う。からかっているのかと最初は思ったが、断るとあきらめるしダメ元で言っているだけのようだ。

 こちらに好意を持っているなら普通はもう少しましなアプローチをするだろうから、その意図は謎だった。

(単純な思い付きなのかな……)

 そんなに触りたくなる髪だろうか、とモーガンは自分の髪を触る。

 別に何の変哲もない髪だ。櫛は通すが特別なことはしていない固めの黒い髪。面白みもない。

 むしろシンシアの柔らかそうな長い亜麻色の髪の方が触り甲斐もありそうだ。ゆるやかなウェーブがかかっていて、きっと触ったらふんわりいい匂いもしそうだ。

 カナリアの手作り石けんの匂いを思い出す。

(……て何を考えているんだ!?)

 一人で恥ずかしくなって、頭をガシガシ掻いてからまた勉強に向かった。

 ちらりとシンシアを見る。

(夜に走ってること……聞いちゃダメかな……?)

 あれからたまに夜シンシアが走っているところを見ることがある。

 決まって真っ暗な中、一人で走っている。

 毎日ではない。たまにだ。

 でも走るならあんな暗い中に走ることもないと思う。

 ローザには秘密と言われてしまうし。

「……くん、モーガン君!」

「はいっ?」

 考え込んでいて話しかけられてことに気付かなかった。

「もー、どうしたの?」

「な……なんでもないですよ……? なんですか?」

「あのね、ここなんだけどね……」

 シンシアが勉強の質問をしてきて、モーガンは答えてあげた。


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