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タマシイの価値

【タマシイの価値】




あるところにとても勤勉で働き者なじじいがいました。


じじいは年金を受け取っていましたが働けども働けども生活は楽になりません。




そんなある日じじいは珍しく体調不良以外で仕事を休みました。


無趣味なじじいなので丸一日やることもなく、大好物のせんべいを買いに行きました。


束の間の自由を謳歌していたじじいは帰りに轢かれて死にました。


それと同時刻にじじいと同じくらいの歳の金の為なら何でもやる汚い金持ちも死にました。




死んだじじいたちは何故か小さな事務所にいました。







「いらっしゃいませ」


事務所にいた黒ずくめの会社員風の男が二人に優しく微笑みかける。


「ここはどこじゃ?」


じじいは男に尋ねる。


「はい、ここは株式会社タマシイ・ワークスの事務所でございます。」


男はニコニコしながら答える。


「タマシイ…?」


じじいはつぶやく


「なんでこんなところに連れてきた?いまこの瞬間にもワシが金が作れたはずだ!責任者を呼べ!」


お金持ちが地団駄を踏みながら怒る。


「まぁまぁお客様、お金が好きならいい話がありますよ。」


と男。


「まぁ聞いてやらんこともない。」


お金持ちは言った。







「落ち着いて聞いてください、先程お客様方は死にました。」


と身振り手振りで男が説明する。


「なんだと!!」


「その気持ちわかりますが、どうか落ち着いてください。」


男は気圧されながらもプロ精神で続ける。


「そこでビジネスの話なんですがね?あなたのタマシイを買取させていただきたいのです。」


「タマシイを買う?…あっはっは!そんなあるかないかわからない物いくらでも売ってやるわ!」


お金持ちは高笑いする。


「でもタマシイを売るのは少し怖いんじゃ…」


じじいは怯える。


「怖い?とんでもありません。我が社はタマシイの価値だけを吸い取って買い取るのです。簡単に言うと現世で積んだトクをお金に換金できるのです。そしてそのお金は遺族の方に渡したり死後の世界でお使いになれますよ。」


「ほうすばらしいじゃないか!ますます売りたくなってきたぞ!」


金持ちは言った。


そこに割り込み男は言う。


「私ももう取引に入りたいのですが、一つだけ忠告させていただきます。」




【売ると言うまで価値が分からないということ】、




【売ると宣言した時点で契約が成立しているためキャンセルはできないということ】




をじじいたちは説明された。







「ではお客様からどうぞ。」


「どうしますか?」


「もちろん売るに決まっているだろう!早く買い取ってくれ。」


「かしこまりました。」


男は懐から謎の機械を取り出すとお金持ちの体に当て始めた。




「はい、買取完了です。ありがとうございました。」


「もう終わったのか!?はやいな…」


「お褒めに預かり光栄です。弊社の特許技術なので他社と比べてとっても早いんです。」


「で、いくらなんだ。ワシのタマシイの価値は。」


「1億です。」


「ちょっとばかり安すぎるんじゃないのか!?まあ元手がゼロ円だし大儲けなのは変わらないが…」


「すいませんこの値段ばかりは変えられないんです…あ、それとこのお金はどうしますか?」


「これはワシが作った金だ。全額ワシのものだ。」


「承知しました。」







1億という額の現金を始めて見て、すこし心が揺らぎ始めていた。




「次のお客様。」


男が呼ぶ。


「はい」


じじいは答える。




「買取は致しますか?」


「わしは売らないぞ、金の為に生きてきた訳じゃないからのう。」


「生前トクを積んでそうなのにもったいないです…あ、そういえばあなたはご結婚なされてましたっけ?」


「はい」


「確かお金が無くて生活に苦労していましたよね?」


「…」


「あなたのタマシイを売ったお金で楽をさせてあげられると思いますよ」


「じゃあ買い取ってください。」




男がさっきの機械を当ててくる。


その瞬間じじいはなにかを失った感覚になった。







「はい、買取完了です。ありがとうございました。」


男は言う。


「今回の買取金額は50円です。」


聞き間違えかと思った。


「あのわしの聞き間違えかな…」


「いいえ、50円です。」


「あなたは経済も回してませんし、偉大な発見もしてませんし50円です。」


じじいは体中の力が抜けていった。


「このお金はどうしますか?」


「あ…あの人に渡してください…」




じじいは憔悴しきっている。


なんたってじじいの人生は50円だったのだ。


誰だってショックを受けるはずだ。







「本日はどうもありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。」


じじいたちは光のさす扉に向かって歩みを進めた。


死後の世界に旅立っていったのだ。




扉の先の道にて




「あっはっは!にしても災難だったなのう!」


じじいは生気のない顔をしている。


「実はな、ワシは死後の世界で会社を立てようと思ってるんじゃ。」


「…」


「お前ワシの会社で働かんか?」


「…」


じじいはその場で力なく倒れこんだ。







現実世界にて


後日




ポストに封筒が入ってる。


(こんな時に郵便?)


ばばあはそれを拾う。




【じじいより 受け取ってください。】




(趣味の悪いいたずらねぇ…旦那は昨日死んでるし)


ばばあは思った。




しばらくしたら袋から50円が出て来た。




「…気持ち悪いねぇ」




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