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第3章「始まりの歌、時を超えて。」

〜seiya〜


「それでも、僕はきみと」の発売から早12年、僕は今も、歌手活動を続けている。

それは、いつも支えてくれる冬月のおかげだろう。あの事件のあと、全国のロボットは集められ、検査が行われた。異常がないと判断された彼女は、無事にそれまで通りの生活に戻り、歌手を目指す僕を献身的に支えてくれた。

僕は、そんな彼女の為にもと、精一杯、がむしゃらに歌った。そして、メジャーデビューが決まった時には、2人で喜び、ライブも毎回観に来てくれている。デビューから2年後、僕たちは入籍した。大きな決断だったけど、彼女となら、ずっとずっと一緒に生きていけると、そう思い決めた。結婚10年になるが、今でも彼女に対する気持ちは変わらない。


そんな僕のもとに、驚くべき報せが舞い込んだのは、ついこの間のことだ。その日僕は、所属するレコード会社で新曲の打ち合わせをしていた。

「次の曲は、ちょっと今までと違うことしたいんだよなあ」

「そうですねえ」

その時、部屋のドアが乱暴に開かれ、手にケータイを持ったままのマネージャーが息を切らしていた。

「……聖也さん! 」

上がった息を整えながら、呼びかけてくる。

「何ですか? 」

「今人気の、千歳っていうシンガーソングライター、知ってます? 」

「そりゃ、もちろん」

今や彼女は、シングルを出せばミリオンヒット確定の、大人気の歌手だ。この業界で、知らない人はいないだろう。

「その千歳さんのマネージャーから、是非聖也さんと仕事がしたい、打ち合わせがしたいと」




〜千歳〜


正直、折り合ってもらえるかはわからない。だけど、きちんと会って話す機会を、彼は与えてくれた。覚えているだろうか、あの日、共に作った歌のことを。たとえ覚えていなくても、ちゃんと伝えれば分かってもらえる。わたしは自分にそう言い聞かせて、彼のレコード会社の扉を開けた。


緊張しながらも、わたしは受付に向かい、

「あの、seiyaさんとお約束をしている、千歳という者ですが…」

すると受付の女性は、ニッコリと笑って、

「はい。お伺いしております」

と言って、わたしを中へ通してくれた。


中へ入ると、今度は案内係だという女性がわたしを出迎えてくれた。

「どうぞこちらです」

彼女が開けたドアを通ると、中には数人の人が椅子に座っていた。

「ようこそ。千歳さん。わたくしは、seiyaのマネージャーをしている、藤田、と言います。さあ、こちらに座ってください」

彼の言うように腰掛けると、少ししてからseiyaさんが来ると伝えられた。


ほんの数分のことなのに、凄く長く感じられた。

「お待たせ。千歳さん」

seiyaさんは言いつつ、わたしの向かいの椅子に座った。

「早速だけど、今回の用件は? 」

「ええ。実は、今度新曲を出そうと思っているのですが、その許可を、取りたいなと思いまして……」

「……許可? 」

彼は何のことだか分からない風に、首を傾げた。

「あの、10年ほど前に、『大村楽器店』で、作曲の相談をされたこと、ありませんか? 」

「……ちょっと待って」

少しの間考え込んで、

「もしかして、文化祭でどうのって言ってたこと、かなぁ? 」

「はい! わたし、その時の者なんです……」

彼は大きく目を見開き、わたしの顔をまじまじと眺める。

「そうだったのかぁ。気づかなかった……」

小さく笑って、彼は何度も頷いた。




〜seiya〜


千歳さんは、中学校の時に有志発表をし、その後突然転校してしまった、健一くんと、10年ぶりに再会したという。

シンガーソングライターとして、人気を獲得していた彼女は、スランプに陥っていたが、彼のお陰で初心に帰ることが出来たそうだ。

そして、シンガーを目指すきっかけとなった、健一くんが作詞し、僕が作曲したあの曲を、発売したいとの事。もちろん、僕は出して欲しいと、心から思った。

「是非、出してください。千歳さんの力になれて、僕も、嬉しいよ」

伝えると、彼女はこんなことも言った。

「今度のライブで、seiyaさんに出て頂いて、一緒に歌うことは、出来ませんか? 」


その言葉に、僕は目を見開いた。

「だって、これはseiyaさんが作ったんですから。是非やりたいんです。お願いします! 」

彼女は深々と頭を下げた。

「……そんな。顔を上げてください。やりましょう、千歳さん」

ゆっくりと顔を上げ、彼女は微笑みを浮かべ、こちらを見た。

「ありがとうございます! 」




〜seiya・千歳〜


久し振りのステージに、わたしは緊張していた。それでも、ここに帰ってこれて、ホッとした気持ちもある。


千歳さんとの演奏に、僕は緊張していた。彼女の復活ステージを、台無しにしてしまわないかと。


拍手の鳴り響く会場に、わたしはコールする。『わたしの尊敬するミュージシャン、seiyaさんです』と。


彼女のコールと同時に、どっと拍手が大きくなる。受け入れられた気がした。


ステージの中央に立つわたしのもとに、彼が歩み寄って来る。そして、わたしの隣で、ギターを構えた。


宇宙の向こうの、君のために。

いつも支えてくれる、君のために。

心から、歌おう。










『マリオネット』

作詞 西荻健一 作曲 菅原千歳・seiya


糸で引かれたように 皆同じ動きして

そんなモノクロの世界 もう僕は嫌なんだよ

ああ言われたらこう言って

あれやってこれやって

全部マニュアル通り 一体何が楽しいの?


悩んで 迷って 走って、走って走って。

不安、怒りも違和感も

全部ぜんぶ投げつけられたら


Break!歪んだものぶっ飛ばして

Fight!手を取り合って 走り出そう、今

ここじゃない何処かを 僕らは探すんだ

Everyone,Every night 願ってるのさ


「理想の未来なんて、来るわけ無いし」って

言ってる奴らはマリオネット 操られてる


そんな毎日手放して 一緒に道を拓かないか


Dive!大海原に飛び込んで

Bright!太陽みたいに輝こうよ、今

理想の未来へ 踏み出す一歩

Everyone,Everybody 闘ってるのさ


進んでは立ち止まって そしてまた走り出す

遥か彼方の光目指して ただひたすらに。

それはまるで…


Right!自分たちは正しいと

Go!信じる道を突き進め la la la…


Break!歪んだものぶっ壊して

Fight!手を引き合って 走り出そう、今

ここじゃない何処かへ 僕らは行くんだ

Everyday,Every night 願ってるんだ


光へ向かって真っ直ぐに

そう 僕らはマリオネット

こんにちは。卯月ユウトと申します。


この度は『君と奏でる、永遠のメロディー』を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。この作品で、完結させた作品が2つ目となりました。

もともとは、「それでも、僕はきみと」と「この宇宙の向こうで、君の呼ぶ声がする。」は、全く関係性のない作品だったんです。

が、知り合いに「同じ音楽を題材にしてて、何か関係性があるの?」と言われたことをキッカケに、大幅な修正をして、このような形になりました。

自分で書いたものを読み返して、このあとがきを書いている訳ですが、やっぱり自分の文は拙いなぁと思った次第です。

読書が趣味で、最近の流行モノから、芥川龍之介さんの作品など、幅広く読むのですが、どうしたらこんな風に書けるのかと、感嘆するばかり。これから、もっともっと日本語を向上させていきたいなと思います。



最後に。


この作品を読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。大変厚かましいですが、評価の方をお願いします。今後の励みにしたいと思いますので。


今後とも卯月ユウトをよろしくお願いします。




2018年1月25日 卯月ユウト

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