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官邸警護隊

 はい。

 こちらが首相官邸名物の官邸警護隊です。

 おねーさん達が手を振っていますね。

 手を振ってあげると喜びますよ。

 この官邸警護隊の歴史は古く、明治政府と関係が深かった高天原王国が派遣したのは元老の一人である大久保利通公の暗殺未遂を防いだ事から始まったそうです。

 元々は欧米人に姿が似ている彼女達を雇うことで、文明国としての箔付けを考えていたみたいですね。

 この時はあくまで大久保公との個人的契約だったのですが、日露戦争後の伊藤博文公の暗殺阻止から正式に首相および官邸の警護の契約を取り結びました。

 官邸警護隊の規模は一個小隊規模……さすがに皆さんには分かりにくいですか。

 定員は四十人で、十人ずつ三交代で首相および首相官邸を警護しています。

 官邸警護隊の功績も多く、平民宰相として名高い原敬首相暗殺未遂の阻止や、五・一五事件の阻止など多くの襲撃者をその身を挺して防いでいます。

 中でも彼女達官邸警護隊の名を高めたのは二・二六事件における官邸防衛戦で、内務省の特別警護隊と共に進入する反乱軍を相手についに首相官邸を守りきった事でしょう。

 二・二六事件の失敗はこの首相官邸を反乱軍が落とせなかった事が大きいと言われており、その後の軍部の政治介入を押さえ込む一因になったのは皆さん知っていますね。

 現在の帝都の守りは、宮城を守る近衛師団と帝都全域の治安を守る内務省管轄の警察、それに共産ゲリラを相手にする特別高等警察特機隊がありますが、この官邸警護隊はあくまで首相個人の護衛に特化して首相直轄なのがポイントです。

 また、この官邸警護隊の隊長はそれゆえに高天原王国の要人が着任する事が慣例となっており、宮家に嫁いだ高天原王国のお姫様も一時この官邸警護隊の隊長をしていたそうですよ。




 そうですね。

 何から語りましょうか……

 日本帝国というのはプロイセン、つまりドイツ帝国を模して国家システムが作られたのですが、その実態が中央集権とは名ばかりだったのはご存知ですか?

 元々のドイツ帝国がプロイセン王国を土台に多くの領邦や自治都市等の連合体で……話がそれましたな。

 皇室の存在を中核に据えて中央集権国家を作り上げるのは良いのですが、わが国の皇室はその存在上実権力を行使する事はまれで、中央集権の真ん中が空白になっているのが特徴です。

 それもこれも、維新の元老達が元々の身分が低く、錦の御旗に従ったとはいえ隠然とした力を持っていた大名諸侯達を警戒しての事だといわれています。

 皇室を隠れ蓑に維新の元老達が陣頭指揮をとった、日清・日露戦争まではこのシステムはうまく行っていたのですが、元老が一人去り、二人去りと消えてゆくと共に、この国の権力はおおまかに六つの勢力に分散されてゆきました。

 一つは元老と、後に重臣と呼ばれる首相指名会議のメンバー。

 彼らは非公式組織なのにも関わらず、その隠然とした影響力を行使して国政を常に左右し続けたのです。

 次に、実際に国政を司る内閣総理大臣とその下につく官僚たち。

 大正デモクラシーで国会与党の党首が選ばれる慣例ができつつありましたが首相指名会議の承認が必要で、行政府として全権を握らないといけないのに統帥権によって軍部に介入できず、その影響を常に受け続けました。

 次に軍部。

 統帥権を盾にとって政府の介入を跳ね除けるのはともかく、大元帥たる天皇陛下の下で陸軍と海軍が別れて、軍内部の意思統一ができないのが致命的な為、常にクーデターの危険を抱え込んでいました。

 そして国会。

 衆議院は国民および地域の代表である彼らはそれゆえに我田引水に利権を求め、国政の混乱要因になっていました。

 貴族院は、いや、枢密院と行った方がいいでしょうね。

 衆議院と同等の権力を持っている為に、首相が出る衆議院を掣肘する立場にあるので、国会の混乱に更に拍車をかける存在になっていたのです。

 最後は財閥。

 三井・三菱・住友等の大財閥はその豊富な資金力を背景に議員を買収して国政を歪めていました。


 これらの勢力をたくみに操りながらどうして内閣総理大臣の下に権力が一元化したかというと、高天原王国から雇った官邸警護隊の影響が大きかったといわざるを得ません。

 彼女達は、内閣の欠点である統帥権の欠如を警察軍の創設という形で武力を内閣に与える事をアドバイスし、軍部の政治的影響力を削ごうとしたのです。

 高天原王国王都において軍部と財閥が操る日系人移民が起こした高天原騒乱事件の影響もあって、当時の帝国政府は高天原王国のこの動きを歓迎したのです。

 首相直属の官邸警護隊は身辺警護を、内務省に組織された特別警護隊は一個大隊規模の機械化部隊で素早く要所を防衛し、特別高等警察特機隊も一個大隊規模ですが特高からの情報を元に反乱分子を逮捕・拘束の為にやはり機械化されていました。

 二・二六事件で軍が介入する前に鎮圧できたのもこれらの組織のおかげと言われています。

 高天原王国の狡猾な所は、表向きは友好を保ちながら、その実かの国に対する脅威をわが国の中で除去していた事です。

 高天原王国の姫君が宮家に嫁いだ事で枢密院は黙り、日清・日露・第一次大戦と共に戦った元老達は、未だ一線に留まっている仲間であった彼女達を討つのを躊躇いました。

 昭和金融恐慌において高天原王国が鈴木商店を救済した為に財閥も追及の手を緩めました。

 最大かつ最高の移民先であった高天原王国への移民の親族達は必然的に親高天原王国の姿勢を取り、国会はそれを疑問と思わなくなっていました。

 彼女達はいつからこの状況を考えていたんでしょうね?

 老いずに代々交代でこの国の首相を警護している彼女達なしで、この国の首相は勤められませんよ……

元ネタはバチカンのスイス衛兵隊

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