夢(2)
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最初は互角だった戦力も少しずつ、だが確実に差が開いていった。
人は休まなければ満足には動けない。
しかし魔族は休まなくても動ける。疲労を知らないのだ。
…これ以上長引けば、人間は確実に負ける。
そうなる前に、魔王を討たねばならない。
…勇者である“私”が。
その日の夜、私は拠点を抜け出し魔族達の陣地へと単身忍び込んだ。
魔族に会わず、なんとかたどり着いた魔王の寝床。
そっと中に入りこむと…
『ーーー…待っていたぞ。勇者よ。』
『!?』
魔王は玉座に座り、“私”を見下ろしていた。
他の魔族と違い、魔王は人に近い姿をしていた。
しかしその瞳は金色に輝き、こめかみ付近からは羊のような角が生えていた。
『…勇者よ。我を倒しに来たのだろう?
このままでは人間は確実に敗北する。その前に我を倒し、平和をもたらそうとしているのだろう?』
『…そうだ。私は負けるわけにはいかない!
魔王、貴様には死んでもらう!』
聖剣を構え、体勢を整える。
しかし魔王は応じる様子もなくただジッと“私”を見ていた。そして…
『ーーー…うむ。悪くない。
よし、いいだろう。長い間生きるのもそろそろ終わりにしたいと思っていた。
どうせ死ぬのなら、勇者。貴様のような美しい者の手にかかりたいと思っていたところだ。』
なにも恥ずかしげにする様子もなく、堂々とそう言ってのけた。
『な、何を…』
『長く生きることに疲れたというべきか。
それに我が死ぬ事でこの争いも終止符がうたれそうだしな。
人間を殺してしまった事を赦してくれとは言わない。
そんなことをしても彼らの命は戻ってこないからな。
だからせめて、この首を持ち帰り人間の怒りを鎮めてやってくれ。
…我ら魔族にも争いを好まない奴らは大勢いるんだ。
だからこれ以上我らの同胞も殺さないようにしてくれると助かる。』
その時、“私”は初めて後悔の念に襲われた。
目の前にいるこの男は、自分のことではなく民のことを考えることのできる男だと理解したからだ。
そして、自分の仕えている人間のことを思い浮かべた。
彼は自身の利益のことしか考えず民を蔑ろにするような男であった。
…無理だ。
手に持っていた剣が床に落ちた。
カラン、と静かな部屋にその音が響く。
『無理だ…私には、貴様を殺せない…っ』
こんなにも他者を思いやる者を殺せはしない。
『はぁ…
貴様は甘ちゃんのようだな。
よいか。よく聞け。
ここで悪の根源を殺さなければこの戦争は終わらぬ。貴様もわかっているだろう?
我をここで討ち取り、魔物と人間に示せ。
そうすれば魔物への抑止力にもなろう。』
勇者は苦渋の決断を迫られ、そして。
『…すまない…っ』
魔王を討ち取った。
その後、魔王を討ち取った勇者は崇められた。
だが、勇者は…“私”は後悔の念が付きまとい
それを拭い去ることができず、若くして命を絶った。