夢
…幼い頃から夢を見る。
周りには甲冑を纏った人々が集まり、彼らは“私”を見ている。
『勇者ーーーーよ。
決戦の時です。我らに指示を!』
『奴らはそこまで迫ってきています!』
焦りを含む彼らの言葉を聞きながら、“私”は微かに震える自身の手をぎゅっと握りしめ
彼らを安心させるために笑顔を浮かべる。
『…大丈夫。』
誰の声かわからない。“私”とは違う声が答えた。
そして続ける。
『確かに私達人間は今まで魔族に脅かされてきた。それは事実だ。
しかしそれも今日で終わりになるだろう。
なぜなら私達は今までの私達ではないからだ!
私達には聖剣がある!唯一魔族を完全に消し去ることができる聖剣が!』
力強く、そう言い右手にある聖剣を高々と掲げる。
すると人々は歓声を上げた。
『ゆくぞっ!!!!』
跨っていた馬を操り、“私”は荒地を駆けた。
走って走って走り抜いて…
たどり着いた丘。
そこから見えたのはこちらの兵を優に超えるほどの夥しい数の黒。
恐怖で生唾を飲む。しかしここで引くわけにはいかない。
ここで引いてしまえば、味方の士気にも影響が出る。
『…まさか、そんな…っ』
味方の誰かが小さく呟く。その声には絶望が含まれていた。
『案ずるな!』
怯むな。ここが執念場だ。笑え。余裕そうに。皆を安心させるように。笑うんだ。
ニィッと効果音が付きそうなほど口角を上げ“私”はもう一度言った。
『案ずるな!
確かに数は向こうが有利だろう。
しかしそれがどうした!私達には大望がある!
国に残して来た家族のためにも!ここで死ぬわけにはいかない!そうだろう!?』
『恐怖を感じることは悪いことでは無い!
しかしそれで怖気づき、何もできないまま後悔するのは悪いことだ!
恐怖を力に変えろ!
今まで受けて来た理不尽な仕打ちを思い出せ!その怒りをここでぶつけるんだ!』
戦士達を鼓舞し、私は前を向く。
そして先ほど鞘に収めた聖剣を抜き、眼前の敵に向ける。
『続けー!!!!!!!』
『『『ウォオオオオ"!!!!!!』』』