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第2章 謎の王女スナイパー 【Ⅰ】

【第2章の見どころ】

* 第1章で命を落としたはずのクロエが生き返る!?

* 国王不在のとある国。

  王女を狙う謎のスナイパーは、王女に瓜二つ!?

シックスは、ギルモアの任務で

仲間のクロエを失った。


あれから、

一年が経とうとしていた。


シックスは、

プレミアムズの訓練室で

いつものように腕を磨いた。


アレックスは、未だに時間が空くと、

必ず安置室へ行った。


手慣れた様子で、迷わずある冷蔵庫を開け、

クロエの遺体を出しては眺めていた。


シックスのメンバーも

このアレックスの習慣を知っていた。


アレックスの姿が見えないと、

まずは決まって安置室を探す。


そこに、小さな任務が舞い込んできた。

アリスが安置室のアレックスを呼びに来る。


「やっぱり、無理だったな。

 『神の像』も生き返らす事はできないか……」


元気なく言うアレックスは哀れだった。


アリスは心から同情し、切なげに彼を見ていた。


地球では小さな事件など日常茶飯事。


警察が他の事件に付きっ切りで、

手が回らないどころか、

相手にもしないような事件がはびこっている。


警察が投げ出した大きな事件も小さな事件も、

救世主の任務として回ってくる。


手が足りないときは、

五人になったシックスも駆り出されるようになった。


シックスにとっては、小さな任務も実習訓練のうちと、

ちょくちょくこなすようになっていた。


この日の任務は、あっという間に解決した。


そんなこんなで、この数週間、

そんな小さな任務が多く忙しい毎日を送っていた。


アレックスは、2週間ぶりに安置室へ行った。


クロエが眠る冷蔵庫を開けて驚いた。


クロエの姿がないのだ。


アレックスは他の冷蔵庫も開け、クロエを探す。


ある冷蔵庫を開けると、女性の頭頂部が見えた。


引き出して確認するが、別の女性遺体だった。


クロエがどこにもいない。


アレックスは、急いでグリフ博士のオフィスへ行った。


「クロエはどこです?」


アレックスはオフィスに入るなり、

興奮気味な様子でグリフ博士に尋ねた。


「アレックス、

 救世主の遺体をいつまでも安置室に

 置いておくわけにはいかないよ」


グリフ博士は静かにそう言った。


「クロエをどこにやった?」


グリフ博士は、

哀れむようにアレックスを見ていた。


「本当に知りたいか?」


アレックスは、当然知りたかった。


そのために、

息を荒くして

グリフ博士のもとへやってきたのだ。


アレックスがクロエを

それ程までに強く想っていることは、

グルフ博士も十分承知していた。


グリフ博士はアレックスに真実を話した。


「彼女は特別だ」


「もちろんだ」


アレックスにとって、

クロエという存在はもちろん特別だ。


しかし、

グリフ博士は違う意味でこのセリフを言っていた。


「普通、人は死んでしまうと劣化するものだ。

 だが、クロエの肉体は特殊らしい」


アレックスは、

グリフ博士の話を聞いて、ふと気づいた。


「一体、なんの話をしている?」


「変だとは思わないか?

 彼女はいつまでも劣化しないんだ。

 変な話、彼女の肉体は……ずっと新鮮なままだ」


「何……新鮮?

 確かに彼女はずっと、

 ただ眠っているみたいに綺麗だったけど、

 てっきりそれは安置室に保存されているからだと――新鮮?」


「安置室は長期間保存がきく設計にはなってない。

 こんなの初めてだよ」


「つまり何が言いたい? まさか彼女は生きているの?」


「いや、クロエは死んでいる」


アレックスが一瞬抱いた希望は、

あっという間に打ち消された。


「だがな、またクロエと任務ができるかもしれん」


アレックスは困惑の表情。


グリフ博士が何を言いたいのか、

さっぱりわからなかった。


「クロエは一度嘘の死を遂げたことで、

 肉体に免疫ができたらしい。

 君ら救世主の身体は元々特殊だし、

 治癒能力も普通の人間より優れているから説明はつく」


アレックスは、

グリフ博士の話を理解しようと、必死に耳を傾けた。


「そのせいで、2度目の死を、

 彼女の肉体は死だと認識しなかったんだ。

 つまり、彼女の肉体はまだ生きているってことだよ」


信じられない話に、アレックスは耳を疑った。

そんな事がありえるのだろうか。


「メサイア・アーミーに新たな革命が起きるかもしれんぞ」


グリフ博士はそう言って、

アレックスをある場所に連れて行った。




グリフ博士はアレックスを連れ、

プロジェクト・ロードと呼ばれる廊下にやってきた。


ここは、あらゆるプロジェクトを

部屋ごとに研究・実行している場所。


この廊下の突き当りにある、

いかにも特別そうなプロジェクト・ルームに案内した。


そこでは、最小限の研究員が作業をしていた。


ガラス張りの壁で二部屋に仕切られ、

その向こう側に、台に寝かせられたクロエがいた。


こちら側に見えるクロエの腕は、

まるでロボットの腕のようになり、

機械がその腕を何やらいじっている。


「彼女の右腕は、残念ながら毒の影響で駄目になっていた。

 今はロボットみたいな腕がむき出しになっているが、

 後で外見は普通に見える様になる予定だ」


アレックスは、

その光景に唖然とし、ショックを受けていた。


「簡単に言えば、リアルすぎる義手だ。

 心臓も特殊な人工心臓に替える」


グルフ博士の説明は、

アレックスの耳には右から左。

終始、放心状態だった。


それは、極秘に進められている

『クロエ蘇りプロジェクト』だった。


クロエのダメになってしまった右腕と心臓を、

メサイア・アーミーが独自に開発した

特殊な人工パーツに付け替えるというものだ。


「人造人間にするって事?」


「取り替えなきゃいけない部分が

 彼女の場合はあまりないんだ。

 だから、人造人間とまではいかない。

 ほぼ生きていた頃のクロエと同じだよ」


「本当に?」


アレックスは複雑な心境だった。


「ああ、まだ成功するかはわからないけどね。

 でも彼女には可能性があるんだ。

 まぁ、アレックスが嫌だと言うなら、

 ここでプロジェクトを止めてもいいんだぞ」


アレックスは、

ガラスの向こうに横たわるクロエを見つめ、

少し考える。


「……クロエと早く話したい」


アレックスに穏やかな笑顔が戻った。


アレックスの反応に、グリフ博士は安心した。


「これは極秘プロジェクトだ。

 皆にはしばらく内緒にしていてくれ」


アレックスは、成功する日が待ち遠しかった。




数週間後、

ついにアレックスが待ち望んだ瞬間がやってきた。


グリフ博士から、

アレックスに知らせが届いた。


クロエが目を覚ましたのだ。


そして、シックスのメンバーを

プロジェクト・ルームに連れて来るよう伝えた。


アレックスは、

フランク、ティナ、セス、アリスを連れて

プロジェクト・ルームへ向かった。


アレックス以外のメンバーは何も知らされていない。


部屋に着くと、

ガラス張りの向こうは個人用入院室のように様変わりしていて、

背の上がったベッドの周りをグリフ博士やプロジェクトに関わった研究員達が取り囲み、

笑顔で話していた。


すると、グリフ博士がアレックス達に気付いた。


研究員達が振り向くと、

その奥で、目を覚ましたクロエの姿が見えた。


シックスのメンバーは驚いた。


「クロエ……生きてるの?」


アリスが言った。


シックスのメンバーは驚いた。

アレックスの目には涙がにじんでいた。


アレックス達五人は、

唖然としながらクロエの側に近寄り、感動していた。


クロエは、意識はあるものの、

混乱しているせいか、

まだ理解力が低い様子だった。


まだ一言も話しておらず、

生まれたばかりの赤ん坊のように、

目をパチクリさせている。


「クロエ、僕がわかるかい?」


アレックスがクロエを見つめた。


クロエは見つめ返し、軽く微笑んだ。


どうやら、メンバーの認識はできているようだ。


「今は彼女も混乱している。

理解力は低いが、すぐに元通りになるはずだよ」


グリフ博士が言った。


数日後、クロエは順調に回復した。


体力面はリハビリ中で、

もうしばらく車椅子が必要だが、

また以前のように話せるようになっていた。


いよいよ、

この大プロジェクトの成功を

巨大ホールで大々的にお披露目する。


ステージの中央に

フランク、ティナ、アリス、セスが立っている。


観客はステージに立つシックスの四人を見て、

ただ事ではない何かが始まるらしいと楽しみにしていた。


グリフ博士が登場しマイクを握る。

この様子は施設中で中継された。


「我々が極秘に進めていた

 特別プロジェクトをここで発表する」


グリフ博士の司会進行で、施設中の注目を集める。


グリフ博士がステージ袖へ手招きの仕草をすると、

クロエがアレックスの引く車椅子で現れた。


観客は騒然とした。


生きているクロエの姿に度肝を抜かれていた。


クロエは不安だった。


観客の驚いた表情の奥にどんな感情があるのか。


信じられない出来事にただ純粋に驚く一方で、

クロエが蘇った事を喜んでほしい。


だが、一部が機械化したクロエを

気持ち悪がるのではないか。


クロエの笑顔は引きつっていた。


グリフ博士がクロエを紹介する。


「アンドロイド01(ゼロワン)の誕生だ。

 彼女は我々に革命を起こさせてくれた」


クロエは側に寄ってきたグリフ博士を見上げる。


グリフ博士がマイクを差し出し、

クロエが作り笑いで受け取る。


そして、恐る恐る喋り始めた。


「お久しぶりです。生き返りました(笑)」


会場は静寂に包まれていた。


「その……また皆さんと、

 以前のように生活します。よろしく……」


クロエは、そう言ってグリフ博士にマイクを返す。


グリフ博士が、

このプロジェクトの全貌を一通り説明した。


観客は理解したのか否か、

イベントが終わると、

またいつもの様子で会場を後にした。


観客席が空になり、

グリフ博士とシックスの六人はホッとして、

その余韻に浸った。


「そうだ! 近いうちパーティーしないか?

 クロエとシックス復活パーティー」


セスの提案に、満場一致で賛成した。


「それはいい考えだ。

 早速、施設中にパーティーの宣伝をしよう」


グリフ博士もやる気満々でノリノリだった。


クロエの復帰も名前通り

六人揃ったシックスの復活も嬉しかったのだ。


それからというもの、

アレックスは常にクロエに付き添った。


パーティーに備え、

いち早く歩けるようになるため、

クロエのリハビリにも力が入る。



数日後、

パーティー会場となった広場は、

施設中の救世主たちが集まり、

ざわざわとにぎわっていた。


天井には

『クロエ&メサイア・シックス復活パーティー』

という言葉と一緒に

『おかえり クロエ!』

という文字が書かれた垂れ幕がかかっていた。


思いのほか大勢参加し、

和やかな雰囲気でクロエの登場を今か今か待っていた。


シックスが会場に姿を現す。


クロエはアレックスに肩を支えられながら歩いてきた。


参加者は笑顔でクロエの登場を喜んだ。


不安気なクロエにも笑顔が見られた。


一時間程が経ち、シックスを含め、

参加者は思い思いに盛り上がっていた。


そんな中、クロエは独り、会場を離れて行った。



クロエは、

地球で見る架空の景色が臨める

デッキへ場所に行った。


巨大窓からあたかも地球にいるかのような

リアルな景色を一望できる。


窓の前に設置された長椅子にポツンと座り景色を眺める。


青空の下、遠目に佇む一件の赤い屋根の家。


青々とした草原はそよ風に揺らぎ、

牛や羊などの家畜が野生の鳥と共にのんびりと暮らす。


田舎の落ち着く風景だ。


その景色を眺めるクロエの表情は寂し気だった。



 《つづく》

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