第1章 愛の結晶、仲間の絆 【Ⅵ】
翌日、5人は目が覚めると、
メサイア・アーミーの回復室にいた。
六つの酸素カプセルに、一人ずつ入り横になっている。
「私達、帰ってきたのね」
「ああ、やっと終わった」
アリスに続けて、フランクが言う。
フランクの安堵は誰よりも深かった。
これまで、失った自分の仲間と多くの犠牲になった救世主の強敵を
ようやく仕留めたからだった。
アレックスがふと隣を見ると、カプセルの一つは空だった。
それを見た瞬間、アレックスに悲しみが込み上げた。
他の四人もクロエの死を悲しみ、アレックスに同情した。
「みんな、目が覚めたかい?お帰りなさい」
回復室の入り口で、聞き慣れた安心する声が聞こえてきた。
「グリフ博士!」
シックスは、一斉に声を上げた。
その顔はとても嬉しそうである。
「なんだ、皆、もう元気になったのか?」
グリフ博士は優しく微笑みながら言った。
そして、少し切ない顔をして、静かに切り出した。
クロエは遺体安置所に保存されていると話した。
「クロエは残念だった。でも君達は、
あそこまでボロボロになりながらも、
最後にはアレックスがギルモアを仕留めた。
君達のお蔭で英国は救われた。お見事だったぞ」
グリフ博士は笑顔で言った。
アレックスは、不思議に思っていた。
ギルモアを仕留めたとき、アレックスの体力は限界を越えていたのだ。
何故、最後にあんな力が出たのか。
アレックスに何らかの他の力が加わっていたようだった。
アレックスはこう結論付けた。
これまでギルモアの犠牲になってきた多くの救世主、
そしてクロエの魂が、アレックスに力を貸してくれたのだと。
五人は穏やかな笑顔になっていた。
任務が無事に終わり安心した。
二週間後、五人はすっかり元気を取り戻した。
フランクが願ったお蔭か、アリスの脚の回復も早く、
再び訓練に復帰することができた。
アリスが部屋にいると、フランクが訪れに来た。
二人は見つめ合い「ハーイ」と笑顔で挨拶を交わした。
アリスは『神の像』に願った事。
それは、フランクに「好き」と言わせることだった。
アリスは願いが本当に叶ったと思い驚いた。
しかし、フランクとアリスの恋は、もうとっくに始まっていたようだ。
フランクはアリスに甘い口づけをした。
ティナは、これまで通り、黙々と訓練をストイックにこなし実力を磨いた。
セスは、『神の像』効果なのか、
ルーシーとの交際をスタートさせた。
セスの部屋にやってきたルーシーは、
任務中の堅苦しさはなく、
弾けた装いでセスに色目を使ってきた。
セスの方も満更ではなく、
「待ってました」と言わんばかりに、
激しいキスと共にベッドへ直行した。
「え? じゃあ、俺に華を持たせるために、嘘ついていたのか?」
ベッドの中で、積極的なルーシーに圧倒されながら、
セスがあの任務の真相を知った。
ルーシーは、セスの上でドヤ顔の笑み。
セスは「ルーシー最高」と、彼女を引き寄せる。
正反対な二人の相性が良いのかはわからないが、とりあえず幸せそうだ。
アレックスは、時間が空く度にクロエの眠る安置室に行った。
安置室にはロッカーのように小分けの冷蔵庫が並び、
遺体が寝かされ収納されている。
アレックスは、クロエの冷蔵庫を出しては静かに眺めていた。
(第2章へ つづく)
次回から第2章がスタート!
次なる敵は、とある国のプリンセスを狙う謎のスナイパー。
しかし、調査をすると、その凄腕スナイパーはプリンセスに瓜二つだった!?
今回不在の国王による身勝手な過去が起こした悲しい事実が隠されていた……。