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第1章 愛の結晶、仲間の絆 【Ⅱ】

翌日、朝食を終え、早速、講習が始まる。


フランクとティナが、4人を迎えに行き、

皆揃って教室ロビーに向かった。


「まずは体力測定よ。みんな自分のクラスはわかるわね?」


ティナが確認し、それぞれの教室へ入っていった。


アレックス、クロエ、アリス、セスは、体力測定が終わり、

講師の指示に従って、自分の部屋に戻る。




すると、各デスクの上に、

『救世主』と書かれた本が置かれていた。


席に座ると、目の前の液晶画面が点き

、講師と思われる人物が映し出された。


「これから3ヶ月間に亘り、ここで救世主のノウハウを学び、

訓練教室では、簡単な実技訓練を受けてもらう。

定期的に抜き打ちテストも行うので、気を抜かないように」


4人はそれぞれの部屋で、真剣に講師の話を聞いた。


セスは、テストという言葉に、敏感に反応し、

面倒くさそうにため息をつく。


「セス・アンダーソン君、

 気を抜くなと言ったばかりだぞ。いいな?」


セスは肩をびくっとさせ、慌てて姿勢を整えた。

どうやら、モニターに映る講師からも

生徒の様子が、見えているようだ。


アレックスやクロエ、アリスも、

講師に注意されたセスの反応を想像し、

自分の部屋で、思わず、クスリと笑っていた。


4人は、真面目に、そして着実に知識を深め、

元々高い運動能力により、実技訓練の初心者コースも、

勇気さえ出せば、こなせるようになっていった。


フランクとティナは、

そんな4人の成長を見守りながら、

自分たちはプロコースでひたすら特訓していた。


アレックスとクロエは、

講義や訓練の時間以外を、

ずっと一緒に過ごしていた。


2人は、

授業後の誰もいない静かな教室で

幸せいっぱいの甘いキスを交わす。


「アレックス、私たちがここの人間だったこと、どう思ってる?」


「地球では、いつか、君と別れてしまうことがあるかもしれない。

でも、ここなら、君とずっと一緒にいられる。そうだろ?」


クロエは、ニコっと笑った。


「私のこと、愛してる?」


「もちろんさ。愛してなかったら、

ずっと一緒にいられるなんて言わないよ。

なんで、そんなこと聞くんだ?

 君は、僕のこと嫌いかい?」


「ううん、愛してるわ。アレックス」


「よかった……僕もだよ、クロエ。愛してる」


2人は生活の変化に戸惑いながらも、

恋愛で絆を深め、乗り越えていた。


能天気なセスは、若い救世主の女の子に、

手あたり次第に声をかけ、

とことん振られながらも、

それなりにこの風変りな新生活を楽しんでいた。


アリスは地球での家族がなかなか忘れられず、

部屋でいつもウジウジしていた。


すると決まって、

絶妙なタイミングでフランクが訪ねてきて慰めていた。


ティナは、

ストイックに訓練を続け、他の救世主たちが、

そのパフォーマンスに見とれてしまうほど、

みるみる実力を上げていった。




半年後、4人の新人講習を修了し、

歴代トップの速さで、プロ試験に合格した。


そして、

フランクやティナと一緒に、

六人揃っての訓練が始まった。


まず、

ティナが難易度MAXのプロコースで4人に見本をみせる。

その場にいた他の救世主たちも

目を見張るほどの滑らかな動きは圧巻であった。


「私、あんなの出来るかな? ケガしそうで怖いわ」


「大丈夫だよ。僕らは救世主だ。勇気さえ出せば、クリアできるって」


怖気づくクロエの肩を、アレックスが優しく抱いて励ます。


「クラスが違ければ、競争なんて関係ない。俺達には敵なしだよ」


セスが、そう言い残し、迷路のように散りばめられた、

複雑な障害物の中に飛び込んでいった。


その障害物は、下にマットが敷いてあるものの、

そのマットはとても小さく見える。


ビルの20階にあたる高さはあるだろう。


その高く足場の悪い場所で、崖を飛び越え、

鉄の棒を組み合わせてつくった

複雑なジャングルジムのようなところをすり抜け、

普通の人間には不可能なほど高い跳び箱も

飛ばなければならないのだ。


セスは、早々に足が絡み、

数十メートル下のマットに落下した。


アレックスは、障害物を前に、

反射的に勝手に身体が動くのか、

すいすいと障害物をよけ、

あっという間に初級コースをクリアしてしまった。


自分の能力にとても驚いていた。


ゴールで待つアレックスを見て、クロエも後に続く。

彼女も難なくクリアした。


「2人とも、初めてであんなに早くクリアするなんてすごいわ」


「愛の力かもな」


ティナとフランクは、驚く半面、

自分たちも成しえなかった

優秀すぎる結果に苦笑いしていた。


「俺だって。さっきはトップバッターだったから、

集中力が足りなかった」


セスが言い、再びコースに飛び込んだ。


しかし、3つ目の障害物で足をすべらせ、

下のマットに勢い良く落ちてしまった。


それを見ていた者は皆、目を隠し、呆れていた。


「隣のコースからはマットなんてないんだぞ。

気を抜かないことだ」


フランクがセスにアドバイスをし、

次はアリスの番だと誘った。


アリスはゆっくり目を閉じ、神経を集中させる。

ぱっと目を開け、コースに飛び込んだ。


アリスはクロエたちのようには早くはなかったものの、

ミスは一つも出さずにクリアした。


セスは、幾度となく失敗を繰り返しながらも、

なんとかコツをつかめたようで、

皆のでベルに追いついた。




その後も、セスは腕をどんどん上げ、

クラス成績も上がってきた。


六人全員、

クラス別の成績トップは夢じゃなくなってきていた。




  (つづく)

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