プロローグ
長編小説の第1章です。全4章を予定しています。
高校の廊下に並ぶロッカー。
クロエがロッカーにもたれ、
アレックスがクロエの顔の側に手をつく。
「クロエ、君と僕は幼なじみで、
ずっと一緒に成長してきたよね?」
アレックスはクロエを見つめ、
恥ずかしそうに言った。
「ええ、そうね」
クロエは、彼の次のセリフを予想し、
ワクワクしながら答えた。
「クロエ、僕は君と……ずっと一緒にいたい」
アレックスはソワソワしていた。
クロエは、彼の口から
ようやく聞けるその言葉を待った。
「クロエ、君の事が好きだ。
これから出会う人に、君を親友でなく、
恋人って紹介したい」
「うん」
クロエの簡単な返答に、少し戸惑った。
念を押し、言葉を加えるアレックス。
「君も今日でやっと十七だ。
僕達付き合おう……
あ、それと誕生日おめでとう」
クロエは、アレックスに微笑み、
彼の胸倉を掴んで、ゆっくり引き寄せる。
彼女は、ハニかんで、アレックスを見つめた。
「ありがとう。嬉しいわ、アレックス」
アレックスは安堵の様子で顔の筋肉が緩む。
もし、この告白でクロエに断られたら、
親友どころか、
友達としても付き合いづらくなる。
これまでの二人の仲が
一瞬にして崩れ去るかも
しれなかったからだ。
クロエがアレックスに口づけする。
アレックスとクロエは美男美女で、
学校でも人気があった。
毎年開催されるプロムでも、
キングとクイーンは当たり前だ。
それなのに、
交際していなかったのが
不思議なぐらいえある。
それは生徒のみならず、
教師も含め、学校中が思っていた。
この二人の交際は、
すぐに学校中でもすぐに知れ渡った。
皆に言いふらしたのは、
アレックスの親友で
お調子者のセスだった。
「やっと2人くっついたかぁ。
世の中、不公平だよなぁ。
十七でようやく彼女を作ったっていう
お前の相手が、こんな可愛い子なんてさ」
セスの皮肉には、
大抵自慢が乗っかっている。
彼曰く、自分は
女の子が途切れた事がない程モテるらしい。
それが嘘か真かは、定かではない。
そんな自分がこうして褒めるのだから
「クロエのレベルは相当高いぞ」
とまで不思議と聞こえてくる気がする。
だが、今のアレックスとクロエには、
そんな皮肉交じりの自慢は気にならなかった。
その日の授業がすべて終わり、
幸せそうなアレックスとクロエ、セスに加え、
クロエの親友・アリスの四人は、一緒に下校する。
やはり、この日の話題は
アレックスとクロエの事。
パーティーでも開いて、
大勢で盛り上がろうかという話も出ていた。
すると、そのとき、
アリスが空を見上げ、何かに気付いた。
「ねぇ、なんか雲行き怪しくない?」
数分前までは、
気持ちがいい程の青空が広がっていた。
だが、突然辺りは薄暗くなり、
灰色の雲が太陽を隠し始めたのだ。
アレックスが、
空の向こうから落ちてくる
得体の知れない何かに気付いた。
「なぁ、何か落ちてくるぞ。
こっちに向かってきてるみたいだ」
四人は慌てて逆方面に走り出す。
空はどんどん曇っていき、雷も鳴り始めた。
そして、大きな雷が落ちるとき、
同時にその物体が地面に落ちた。
すると、その直後、
天気は一変し、一気に晴れ始めた。
「今の一体、何だったんだ?」
四人とも放心状態の中、アレックスが言う。
「何が落ちてきたの?」
クロエが言い、
セスが恐る恐る物体に近づいてみる。
「腕時計みたいだけど、時計じゃないみたいだ」
「どういう事? 時計じゃないの?」
アリスが、セスに近づいて言う。
腕時計らしき物体には、画面がついているが、
何も表示されておらず、真っ暗だった。
四人が画面をのぞき込む。
すると、いきなり何かが画面に映りだした。
よく見ると、一人の男性が映っている。
白い白衣を着た、髭面の中年男である。
「君たちがこれを拾ったのは偶然ではない。
君たちは神に選ばれた救世主だ。
私は君たちのことを何でも知っている。
私は君たちを迎えに来た」
画面の男の意味不明な言葉は、
四人には当然理解できなかった。
「こいつ、ヤクやってるね、絶対」
セスが言うと、
男はセスの言葉が
聞こえていたかのように、
再び喋り始めた。
「君たちには、
まだ理解しがたいだろうが、
そのうちどういう事かわかる」
男の反応に四人は驚愕した。
そして、アレックスは勘づく。
「誰かのイタズラじゃないのか?」
学校一注目のアレックスとクロエが、
ようやく付き合い始めたことに対する、
誰かのドッキリ企画だと考えたのだ。
その仮説に他の三人も納得していた。
「ちゃんと聞こえているぞ。
これは冗談なんかじゃない。
聞いてくれ。信じられないかもしれんが、
君たち四人は、わかりやすく言えば
地球の人間じゃない」
男はまじめな顔で言った。
「じゃ、俺たち宇宙人?
そうか、確かに俺、
自分が火星人かもって感じた事あるよ〜」
セスがバカにした様子で、冗談をかます。
「まあ、とにかく、
今からこっちに来てもらう。
そうすれば、私の話を
信じないわけには行かなんだろう」
男の言葉に謎が残ったまま、
画面が切れた。
空が再び薄暗くなった。
「また何か起きそうだぞ?」
アレックスが冷静に言う。
クロエは怯えた様子で、
アレックスの腕を掴む。
それを見ていたセスは、
アリスの肩に腕を回す。
アリスは、
セスの腕を嫌そうに払いのける。
辺りが静まり返ったと思うと、
四人に大きな落雷が起こった。
一瞬にして姿を消してしまう。
そこを偶然通りかかり、
彼らの消える瞬間を目撃した老人は、
その直後、完全に彼らの存在を忘れ、
何事もなかったかのように、
再び歩き始めた。
(つづく)
本作は、著者が中学時代に書き下ろした処女作に当たる作品です。作家になろうと思ったきっかけの作品でもあります。
また、この投稿が本格的な作家デビューの第1歩(出版)に繋がる事を期待し、今後も様々な作品を投稿していきたいと考えています。
処女作ともあり、まだまだ未熟な作品ですが、中身を純粋に楽しんでいただけたら幸いです。