はじめてのデート
姉ちゃん回です。もし私に弟がいたら言われたい言葉がありますので、どうぞよしなに
朝、涼太に言わなきゃいけないことがあったのをすっかり忘れてしまった。それが気がかりだったけれど、きっと理解してくれると思っていたから、なんとも思わなかった。まさかあんなに怒るなんて思いもしなかったし、それに動揺して私が泣いてしまうことも思ってもいなかった。隠していたわけじゃない。ただ今まで親代わりとして涼太を育ててきたから、涼太も少しは動揺すると考えていた。
私には彼氏がいる。結婚を考えた彼氏、誠也さん。彼は3歳年上で薬剤師をしている。仕事柄、私の働いている病院内でときどき見かけることがあって、患者さんの病室を聞かれたのが最初交わした言葉。物腰が静かで身長は175cmくらい、趣味は料理。私から惚れ込んだんじゃなく、彼からアプローチがあった。声は震えていたけれど食事に誘われた。「こ、今度僕と食事に行きまれんか!!」噛んでいた。「え、なんて?」
「僕と食事に行きませんか」二回目は落ち着いて言えたみたい。クスッとしてしまった。特に断る理由もなかったからオーケーと返事を出した。でも恋愛経験のない私はこれを口説きに来てるなんて思っていなかった。今考えれば見え見えなのに。
食事の約束をして、次の日曜日その日が来た。お昼。彼と駅前のショッピングモール内にある洋食屋さんで食事をした。ふわふわタマゴのオムライスにハンバーグステーキ、結構メニューはあるけれど「た、高い」「何が食べたい?」彼が聞いたので「じゃ、じゃあオムライスにしようかな」「じゃあ、僕もそれにしよう」と彼が店員さんを呼んで、ふわふわタマゴのオムライスを二つ注文した。でも、注文を済ませて何を話せばいいんだろう。と思っていたら、彼のほうから話題を振ってきた。
「亜弥子さんは、趣味とかあるの」趣味・・・そういえば趣味って何だろう。「趣味かぁ・・・私、高校の頃から親代わりで弟の面倒見てたから、友達と遊んだりしたことなくって、趣味って言われても何か特別ってものないんですよね」はじめから重い空気を臭わせた話をしてしまった。彼は困った顔を一切見せず「弟さんいるんだ。僕にも弟いるんだよね。血は繋がってないけど、お袋の連れ子なんだ。今中学二年生」それで話が合った。「わ、私の弟も中学二年生なんです。」そんなはじめてのデートには異彩の会話をしながら食事をした。弟自慢、どのスーパーが安いとか、得意料理はなんだとか。まるでママ友みたいな感覚だった。失礼かもしれないけど誠也さんに抱いた印象がこれだから仲良くなれたんだと思う。
食事を終えたあと、ショッピングモール内で服屋に寄ったり、本屋、CDショップに寄ったり、これってデートだったのかと深く考えずに普通に楽しんでいた。高校生のときにこんなことしてなかったから新鮮な気持ちで楽しんだ。彼もずっと笑っていたし、楽しんでいたみたい。外に出ると暗くなっていた。向かい合って彼にお礼を言う「今日は楽しかったです。ありがとう。」「こちらこそ、話せて楽しかったよ。それで・・・」しばらく彼が言葉に詰まっていた。口を開く前にいきなり両手を握られた。「あの、僕とまた会ってデートしてくれませんか。」「は、はい?」手を握られたこととデートという単語に困惑して頭の中が混線していた。情報量は一気にパンク寸前だった。「それじゃ」彼はそそくさと帰ってしまった。帰ったというより、逃げ出したのか。
しばらく私は、棒立ちしていた。トゥルルルルルル・・・慌てて電話に出る。「わあぁ!もしもしっもしもし」「ねえちゃんおそーい。おなかすいた」「今かえる!すぐ帰る!」やっと歩き出した私。そうか誠也さん、私のこと好きなんだ。そう考えながら歩いた。どうしよう。恋愛したことないのに、なんて言おうか考えていると「また会ってデートしてくれませんか」手を握られながら言われたことが頭をよぎってまたドキドキした。はじめてのデートはこんな感じで終わった。
読んでくださってありがとうございます。投稿ペース遅いですね。がんばって完結させられるようにしますね。