弟の片思い
最近、こっちしか書いてないんですがいいですよね。これが終わったらまじめにやりますが、こっちはまだ続きます。
読んでくださるとうれしいです。
怒鳴ってしまった。姉ちゃんが傷つくようなことを。絶対に傷つけたくないと思っていた人に向かって怒声を浴びせてしまった。生まれて初めて。自分が興奮しているのがわかる。心臓がはちきれんばかりに音を立てていて苦しい。
姉ちゃんはと言うと、唖然としている。それもそのはず滅多にというか姉ちゃんの前で怒鳴ったことも感情を乱したことなんて一度もないのだから何が起こったか理解出来ていないような顔をしている。そしてやっと僕の言った言葉の意味を理解したのか、涙が頬をつたっていた。「ごめんね。」と言って、僕の部屋を出ていった。
姉ちゃんが部屋を出てすぐ僕はそのままベッドに伏した。そして──
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
──以下心の声
知らない知らない知らないあんなやつ知らない!なんだよ彼氏って高校の時だって一度もそんな雰囲気なかったじゃないか!いきなり僕たちの中に入ってくるな!邪魔だ邪魔だ邪魔だ!姉ちゃんが取られちゃう。嫌だ。姉ちゃんが遠くに行っちゃう。僕の知らない姉ちゃんが…あんなやつに!僕よりも一緒に居た時間が短いあいつなんかに姉ちゃんの何がわかる!
時計を見たら22時を過ぎていた。叫び疲れてあのまま寝てしまったんだ。おかげで冷静さを取り戻したけれど、下に降りるのも気まずい。あの男は帰っただろうか。帰ったよな。ご飯は食べなくても平気でも、シャワーは浴びないと気が済まなかった。浴室に行く前にリビングを通ってキッチンに行ってみた。良かった、誰もいない。両親は朝が早いので基本的に寝る時間は早い。テーブルにお皿によそってあるお寿司がラップをかけて置いてあった。──食べてね。母より。
たまに母の帰りが早いとテイクアウトで何か買ってくることがある。
「シャワー浴びたら食べよ」
書置きを見て浴室に向かった。ドアを開けるとキャッと短い悲鳴が聞こえた。姉ちゃんが純白のバスタオルを巻いて鏡の前に立っていた。状況を理解してすぐに閉めた。髪は濡れていて、肌はお風呂から上がったばかりでしっとりとしていて色っぽい。小学4年くらいまで一緒にお風呂に入っていたけれど、それ以来女の人の肌を見たこともなければ、姉ちゃんと浴室でこんな形で鉢合わせることもなかった。心臓がバクバクしていた。本日二回目。なんだよ、姉弟じゃないか。なんでこんなにドキドキしてるんだ。
ドアが開いた。いいよ。と姉ちゃんが言って出てきた。顔も見ずに「ありがと」ありがとう?何にだ。自分にツッコミを入れ、脱衣所の中に入ろうとしたら腕を掴まれた。何?と振り向く。
「話があるんだけど」来たよ。来た来た。逃げられないやつ。嫌でも現実からやってくるやつ。正直聞きたくなかった。だって絶対夕方の彼氏がらみのことだから。
「明日じゃだめ?」どうしても逃げたかった。さっさとシャワー浴びて寝たかった、フタをしたかった現実に、パタンッ
「今、ここじゃなきゃダメ。大事な話。」少し片言っぽく聞こえた。でも目が本気だった。これは敵わない。向き合うしかない。
「あのね、さっき家に来てた男の人。私の彼氏。」
はい、聞いた聞いた。聞いてもいないことを教えてくれた。姉ちゃんからじゃなく母さんから。
「うん、知ってる。」心の声を声に出したのではなく、さっぱりと答えた。
「それでね。誠也さんとね。結婚を考えてるの。だから、今日連れてきた。」
ブラック・アウト
最悪だ。想像していた通り、一番聞きたくない言葉だった。
最後まで読んでくれて嬉しいです。
次に投稿するのは、姉ちゃんの憂鬱です。近いうちに投稿しますね。