はじめての反抗期
弟ほしいおぉぉぉぉぉ
大樹から今朝言われたことを気にして、その日の授業は上の空で早く終わった気がした。授業で当てられたか覚えていない。
──姉離れ
この言葉が頭から離れない、姉ちゃんを嫌いになったわけじゃないけど姉ちゃんと結婚できない現実を改めて突き付けられた僕の思考は完全に機能を停止していた。
帰ろうとしても、こんなに早く家に帰っては家に誰もいないし、暇だから本屋に向かう。
道中ずっと昔のことを僕は思い出していた。小学生のころは姉ちゃんにべったりで、姉ちゃんが仕事から帰るとき僕を迎えに来てくれた。学校でドッジボールをしたとか、かくれ鬼をしたとか、テストで100点をとったとかその日に学校であったことを話しながら手を繋いで家に帰る。何より姉ちゃんが楽しそうだったのが嬉しかった。姉ちゃんは勉強は出来たけれど、高校を出てすぐ働き始めた。何でも共働きの両親を助けるため、そして僕が進路で不自由な思いをしないように、だから年頃の姉ちゃんは大学に行って友達とワイワイはしゃぐこともなく就職した。それを知ったとき、僕は嬉しかったけど姉ちゃんには幸せになってほしいっという複雑な気持ちがあった。その姉ちゃんの優しさが僕の「恋愛感情」を募らせていったんだと思う。そんなことを考えながら、僕は本屋を後にして帰路についた。
姉ちゃんは帰ってるかな。そう考えていた。そういえば、5歳くらいのことだった。寂しそうに夕日が揺れていた。家の近所の公園で僕がいじけていたそうだ。帰りが遅いから高校生だった姉ちゃんが探し回っていたそうだ。「やっと見つけた。帰ろ、涼太」そうやって僕をおぶってくれた。
「なんでいじけてたのさ」
「とうさんと、かあさん、おそい。」
「二人とも忙しいからねぇ。姉ちゃんじゃいや?」と聞いてきた。僕は首を横に振る。
「よかった、じゃあ姉ちゃんがね。かあさんしちゃうぞぉ」と言って肩車をしてくれた。寂しそうな夕日が温かく感じた。
本屋からの帰り道も懐かしい思い出に浸りながら
──帰宅
姉ちゃんに思いの丈を伝えようという決意を胸にドアノブに手をかけた。玄関のドアを開けると、すでに姉ちゃんは帰っていた。父さんも母さんも。それと見慣れない靴があった。お客さんかな、と思ってリビングを通り過ぎて、自室に行こうとしたとき見慣れない男の人が姉ちゃんと一緒にいた。悪い予感がした。「おかえり、涼太」と姉ちゃんが言った。
「ただいま」短く言った。
「この人ね、お姉ちゃんの彼氏なんですって」と母さんが僕の気持ちなんか考えずに、図々しく、聞いてもいないことに答える。
「ふ、ふーん。そうなんだ。ゆっくりしていってください。」と言って階段を一気に駆け上がって自分の部屋に入った。ゆっくりしていってくださいなんて思ってもいないことを口にした。動揺を隠しきれなかったからあの場所から逃げたかった。何より姉ちゃんに彼氏、しかも家に連れてくるなんて、両親に会わせるなんて、まさか…。
朝、大樹から言われたことを思い出した。「まだ、姉ちゃんと結婚できると思ってんの?」その言葉が無限ループして頭に響く。その時、部屋のドアが開いた。
「涼太、入るよ」姉ちゃんの声だ。
「涼太、あのね。さっきの人───」と姉ちゃんが言い切る前に
「入ってくんなよ!でてけーー!!!!!!!」と怒鳴った。
14年間、反抗しなかった姉に、一番大好きな人に、ずっと一緒にいたいと思っていた最愛の人に向かって精一杯怒鳴りつけた。
読んでくださってありがとうございます。
この小説、本当にノリで書いてるんです。自分では面白いと思ってるんですけど、どうでしょうか。感想寄せてもらえると嬉しいです。
お姉ちゃん欲しい。