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高草 総悟の怖いかもしれない話  作者: 相国 孝明
4/5

悪夢

 夢って不思議ですよね。正夢なんて言葉もありますけど。あなたが見た夢はなんていう夢なんでしょうね。

「いやだ。嫌だ嫌だ‼ 来るなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼ ……ハァハァ。夢か。良かった」


 怖い夢を見て、目を覚ますと朝だった。朝日の光がカーテンの隙間から差し込んでいる。

 最近、同じ夢を見る。鎌を片手に追ってくる、黒い服を着た、髪の長い女性。「ヒヒヒ」と涎を垂らしながら迫り寄ってくる光景は思い出しただけでも、お腹の奥底を掴まれるような感覚に陥り、冷汗が止まらなくなる。


「なんで最近、この夢ばかり見るんだ」


 なんの覚えもない。あの女の顔を見た記憶がまったくないのだ。いつまでこの夢を見るのだろうか、もしかしたら病院に行った方がいいのかもしれない。とまで考えた。

 しかし、なんと相談したらいいものか。


「怖い夢を見るんです」


 なんか、違う気がする。仮にも今年で20歳になる僕だ。恥ずかしくて、こんな相談なんぞ出来たもんじゃない。


「なるようになるか。夢だし」


 と思うことにして、僕は大学に行く準備を始めた。


_______________________________________________


  大学に登校し、講義室に入ると奴がいた。そう、オカルト話大好き野郎こと重沼 真(しげぬままこと)である。


「おっはよー!総悟!今日もいい感じの天気だな!」

「うっせーよ。無駄にテンション高すぎだからな、お前」

「こりゃ、手厳しい」


 こいつはいつもこうだ。とにかく、うるさい。話し始めると止まらないし声がデカいし、ちなみに身長も高く、横もでかい。存在そのものがうるさい感じの男だ。

 ただ、強いて良いところを言うのなら真は聞き上手だということだ。悩み事があれば必ず黙って聞いてくれる。

 

「真。お前に相談がある」

「うん ?どうした? 聞くぞ?」


 馬鹿にされるかもしれないと、思ったが気にせず夢の話をしてみる。最初は真剣な表情をした彼だったが、話をするたびに徐々に顔が青ざめていった。


「どうしたんだよ、顔色悪いぞ。なんかあんのか?」

「……いや、なんというか」


 歯切れが悪い。こんな感じになった時の彼は何を考えているのか僕には分かる。彼は今「この話をこの人に伝えていいのだろうか」と葛藤しているのだ。

 彼は人が気分を害するようなことを、嬉々として話すことは無い。気分を害するかもしれない時は、必ず歯切れが悪くなるのだ。


「真、大丈夫だから。何か話したいことがあるなら話してほしい」


 そう伝えると、彼は決心したような顔をして言葉を僕に告げる。


「実はその夢の内容なんだけど。俺も経験したことがあるんだ。あれは小学生の時だった」


____________________________________

 

 小学校6年生の時の話だ。俺はその時から身長はクラスで一番だった、そして痩せていた。まぁ、そんなことはいいか。簡単に言うと、今以上に普通に運動をしてたんだ。友達と走り回ったり、野球をしたり、サッカーをしたりな。

 普通な小学校生活を送っていた。でも、そんなある時に、俺は同じ夢を見るようになったんだ。

 光景は今でも鮮明に覚えている。小学校の校庭で、授業参観なのか車がたくさん止まっていた。俺はその校庭掃除の担当で掃除用具を手に持っているんだ。でも、不思議なことに俺以外の掃除メンバーがいない。そんな光景を毎日夢で見た。

 最初は「偶然だろうな」的な感覚でしか見てなかったんだ。でも、4回目の夢で異変に気付いたんだよ。校庭のフェンスの向こうから女の人が近づいてくるんだ。少しずづ少しずつ、夢を見るたびに近づいてきた。

 俺はそれに気付いた時から、夢を見るのが怖くなって、寝たくない、眠りたくないって何回も思った。でも、所詮は小学生だから眠気に勝てるわけもなく毎日その夢を見るって流れだった。


 同じ夢を見るようになって一週間経ったかな。近づいてくる女の人が何か持っていることに気付いた。

 彼女が手にしているのは鉈だったんだよ。赤茶色に錆びた鉈を手に持って、俺を目指して歩いてくるんだ。

 それに気づいたときには遅かった。俺が鉈に気付いたことを引き金に、女は俺に向かって走り出してきた。

 そして、俺は逃げた。校庭に止まってる車をうまく使って逃げたんだ。ジグザグに、車の陰に隠れるように逃げた。でも、聞こえてくるんだよ「ヒヒヒ」って笑いながら追いかけてくる女の足音が。

 俺は必死に逃げた。車を盾にして隠れて動くのを止めた。そうしたら足音が聞こえなくなったんだ。


「良かった。助かった……」


 安堵の声を出した瞬間だった。……足を誰かに掴まれたんだ。

 見てみると、車の下の隙間から白い手が伸びて、俺の足を掴んでいたんだ。


「ヒヒヒ……あなたの足綺麗ね」


 そう声が聞こえるとともに、赤茶色に錆びた鉈が俺の左足に食い込む。

 そして、切れる瞬間に夢から覚めた。流石に泣いたね。怖くて怖くて。冷汗も酷くて、朝だったから両親も起きてて泣きついたのを覚えてるよ。

 でも、その日以来その夢は見なくなったんだ。


__________________________________________



「似たような話だなぁ。……でもなんで、それが言いにくそうな感じになるんだ? 追いつかれちゃえば夢から覚めるんだろ?」

「話はこれで終わりじゃないんだ」

「え?」

「総悟。俺の話聞いて気付いた点は無かったか?」

「え?…あっ」


 そして、気付いた。実はこの話をしてくれた真は、左足が不自由とまでは言わないが、足が悪く、引きずるように歩いているのだ。


「俺が、この足になったのは、病気でも何でもない。病院でも原因不明って言われて、この病気と似ているって、その病名を付けられたけど。俺はその夢のせいだと思ってる。総悟はシジキ様に右目を取られただろ? 俺はその女に左足を持っていかれたんだよ。だから、お前が見ている夢が危ないって思って……。でも、そんなことが分かりながら夢を見るのは、苦痛だろうと思って言い出せなかった」


 どうやら僕は、何かわからないものに目を付けられたようだ。この悪夢から抜け出せる方法を僕も真も知らない。


 この話の続きは書くつもりはありません。一話完結は貫きます。時系列もバラバラに書いているので問題ないでしょう。


 ちなみに、プラシーボ効果というものがあります。思い込みは怖いものです。とだけ言っておきましょう。

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