表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高草 総悟の怖いかもしれない話  作者: 相国 孝明
3/5

彼女の想い

「あなたのせいで私は死ぬ」


 振られた時に言う台詞で、一番質の悪いものだ。この言葉を言われるだけで、心配になって、振るのを考え直そうかなと悩む。そんな、人の優しさに付けこむ言葉だと、僕は考える。


 今回の話は、この台詞を言われたが、気にせずに別れた僕の友達の話である。


 ある日のこと、僕は友人からの電話を受けた。高校の時の同級生からだった。


「もしもし、(そう)ちゃんか? 俺だよ。俺」

「いやいや、誰だよ。僕はそんなオレオレ詐欺やろう知りません」


 ボケたつもりだった。そして、電話をかけて来た彼は、クラスでもムードメーカーだったので笑うと思っていたのだ。

どうも様子がおかしい。彼は高校の時のキャラと違い、大人しくなっていたのだ。


「ごめん。水岸だよ。水岸 智哉(みずぎしともや)だよ。久しぶりだな。総ちゃん」

「お、おう。どうしたんだよ水岸。元気無いなんて珍しいな」

「うん。最近、嫌なことが起きててな。それが原因なんだけど、それをお前に話したい」

「なんで僕に話すんだよ」

「……昔から、総ちゃんに悪いことを話すと救われた気がして、それにお前オカルト系の話好きだろ?」


 どうやら、オカルト系の話のようだ。しかし、いつ僕がオカルト好きになったのだろうか。好きで聞いているわけではない、聞かされているのだ。

 まぁしかし、知らない中ではないし、高校では仲良くしていたので、話を聞くことにした。


「分かったよ。話聞く、どうする電話でいいのか? それとも会うか?」

「電話で良い。すぐにでも話して許されたい」


 彼は何に対して許されたいのだろうか。そして、彼はポツリポツリと話し始めた。



_________________________________________________


 桜が舞う四月。智哉は大学に入学すると、彼女を作ってやると決意していた。

 クラスのムードメーカーと言われていた智哉だったが、そんな評価とは裏腹に彼女が出来たことが一度もない。大学に入ってからには、勉強よりも恋だ!青春だ!というような感じで、情熱を注いでいたのである。


 そんな智哉は、サークルに入ると一人の女に一目惚れをした。彼女の名前は、櫻井 美穂(さくらいみほ)。髪は肩ぐらいまで伸び、染めていない髪は純粋さが滲み出ているようで、何よりも可愛かったのが、彼女のはにかむ笑顔だった。


 しかし、現実はそんなに甘いものではない。「可愛い子には、彼の一人や二人はいるものである」と、どこかのお偉いさんが言っていたように、彼女にも彼氏がいた。

 

 叶いもしない恋に思いを馳せていると、美穂が彼氏と別れたという話を聞いた。そんな智哉は「今しかない」と思い、さりげなく美穂に元気づけようと、話しかけたり、遊びに誘ったり、彼女が喜びそうなことをたくさんしてみた。


 一方、美穂はというと、智哉の好意に気付いていたが、信用していた彼氏に振られたこともあり、また裏切られるのではないかと、怯えていた。


 智哉はそんな美穂の気持ちに気付かないまま、アプローチを続け、そして告白をした。


「俺は美穂の笑顔がいっぱい見たい。美穂が喜ぶところをもっと見たい。だから、俺と付き合ってください! 不幸にはしません」


 美穂は悩んだ。智哉が言っていることを信じていいのか。智哉は私を裏切らないのか。こんな私を愛してくれるのだろうかと。

 そして、美穂は思い出した。私が落ち込んでいる時に、隣で私を励まして、私の泣き顔を笑顔に変えてれたのは、智哉だったと。

 美穂は返事をする。


「私で良かったら、智哉君の彼女にしてください」


 こうして、智哉と美穂は付き合い始めた。


_____________________________________________________


「おい、もしかして僕は惚気を聞かされているのか?」

 

 どう考えても惚気にしか聞こえない。でもやっぱりおかしい。惚気話なら、なぜ彼は声のトーンがいつもより低いのだろうか。


「いや違うんだよ。最初は本当に幸せだったんだ。でも、ある時から彼女の様子がおかしくなったんだよ」

「おかしくなった? どんな風に?」

「……俺が他の女の子と話すと、チェックをするようになったんだ」



____________________________________________________


「智哉君。今日さ、美香子と話してたよね? 何を話していたの?」

「え。何話してたのって言われても。ただの世間話だよ……」

「智哉君、他の女を見るのね?」


 彼女の様子が可笑しい。いつもと何かが違う。束縛は今までもあったが、ここまで怒りの色を見せることは、今までなかったのだ。


「いや、そんなつもりはないよ。美穂が一番好きだよ」


 俺としては本心を伝えたつもりだった。


「本当に? 私を捨てて他の女のところに行くんじゃないの? あんたも前の彼氏のように私を裏切るの?」

「そんなわけないだろ!本当に美穂を愛してる」

「じゃあ、他の女と話さなくていいよね? 私を不安にさせないで。私、智哉君がいなくなったら生きていけない……」


 彼女の愛が重たく感じた瞬間だった。その後も彼女の想いは重くなっていく。


「今日は○○と話してでしょ」

「私を捨てるの?」

「あの子が話してくるのなら、私が話を付けてくるね」

「もう智哉君は家から出ないでいいよ、他の女の子を見たり話したりするなら、私とずっと家にいよ?」


 俺は限界だった。流石に異常としか言えない、愛情も薄れていく。そして俺は自室に呼び出し彼女に告げる。


「美穂。俺はもう限界だ。お前とは付き合えない別れてくれ」


 彼女の顔は、まるでロボットのように表情を失い固まっていた。


「何を言っているの? あはは~。智哉君。面白い冗談を言うのね」


 怖かった。彼女は表情を凍らせたまま淡々と口を動かしていたのだ。人間として見れなくなり、智哉は激しい動悸を覚える。


「……冗談じゃない。俺は美穂に縛られるのが苦痛に感じるんだ。お願いだ。別れてください」

「嘘つきっ!! あんたは裏切らないって言ったじゃない! なんでなんでなんでなんでなんでなんで…ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛っ!!」


 美穂は絶叫をすると、糸が切れた操り人形のようにパタリと倒れた。


「お、おい。大丈夫か?」

「グスッ……ごめんなさい。許して。許して。ごめんなさい。私を捨てないで。1人にしないで……」


 彼女はひたすらに謝罪をしていた。一目ぼれをした時のような笑顔はそこには存在しなく、泣き顔だけがあった。


(俺が美穂を泣かせてるのか)


 そう考えると、こちらまで泣きそうになる。でも、もう無理なのだ。好きな彼女から信用されないことは苦痛でしかなかった。離れるという思考だけが、頭の中を埋めていく。


「ごめん……」


 俺は一言だけ呟く。すると、彼女は泣き顔の表情から一変し、怒りの顔になる。


「あんたが私を捨てるなら、私は死ぬ! あんたが私を殺したのと一緒よ! 死んでやる! お前を恨みながら死んでやる! アハハハハハハハハ」


 彼女はおかしくなってしまった。俺がおかしくしてしまったのかもしれない。でも、死ぬなんてのは、引き留めたいための出任せだろうと智哉は考えていた。


 それが間違いだった。


 彼女は、立ち上がると俺の部屋から出ていった。家から出ていくのだろうかと思ったが、追いかける気力もない。

 しかし玄関のドアの開く音がしない。嫌な予感がする。

 そして足音が聞こえてくると、再び彼女が入ってきた。


 その手には包丁を持っていた。


「おい!あぶない」


 と俺が声をかけた瞬間だった。彼女が自分のお腹に包丁を突き刺した。グチュグチュと肉が避け潰れる音。深紅色の絨毯を部屋に敷いたかのように、血で染まっていく床。そして、彼女の発する言葉が俺を襲う。


「お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ」


 その言葉を繰り返しながら、彼女は何度も何度もお腹に包丁を突き刺す。刺しすぎで、腸みたいなものが引きづり出されている。

 俺は放心状態で、その行為を見ていた。恨めしそうに俺を睨む美穂の目を、唖然と見つめながら。



 気づいたら俺は警察に事情聴取をされていた。彼女は自殺と判定され、俺に罪が無いことが分かり、彼女の両親から複雑な表情を浮かべながらの謝罪を受けた。ただし、精神的に普通の生活を行えるよう状態ではなく、大学は休学にした。


 その後、俺は半年間心療内科に行き、精神的にも落ち着きを取り直して大学に復帰した。



__________________________________________________________________



「お前大変だったな。よく話してくれたと思うよ。そんなことがあったら罪悪感で潰れそうになるよな」

「おう……」


 彼は元気がなさそうに返事をしていた。こんだけのことがあったら大変だろう。目の前で、包丁をお腹に付き刺す。なんて光景を見たら、トラウマで眠れなくなるどころか、生きているのも辛く感じると思う。

 僕は、彼に良く生きて話をしてくれたと思った。

 ふと気づく。どこがオカルトなのだろうかと。彼女が何かに憑りつかれていたということなのだろうか。


「話してくれたところ悪いけど、オカルトってのはどの部分なの?」

「……まだ話してない」

「え?」

「実はな、大学復帰して、友達が心配してくれてたみたいで、何人か励ましてくれてたんだよ。その時に、俺は生きてて良かったって思ったんだ。でも、美穂がそれを許してくれなかった」


 許してくれない?美穂っていう子は、智哉の前では自殺したんじゃないのか?


「美穂って子は死んだんじゃ?」


「……生きてて良かったと思ったその日。その日の帰りに着信が来てたことに気付いたんだ。留守番電話もあった。誰だろうと思って再生してみたら、それは美穂の声でこう言ったんだ……」



「私は死んだから、いつでも智哉君のそばにいれるよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ